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旅と自由

漫画家・イラストレーターであるカシワイさんが、2023年夏に小笠原諸島を旅したときに、目にしたもの、感じたことを、イラストレーションとことばでまとめた描き下ろし本『Trip To Ogasawara』(私家版)、なんと、自由港書店でも取り扱わせていただけることになりました!店頭で販売を開始しています!

当店店前・駅から海へ向かう青い道の途中で

まもなく2024年5月1日に自由港書店は3周年を迎えます。およそ3年前(2021年5月1日)の自由港書店オープン時から応援してくださっているかたがたはご存じの通り、自由港書店では、カシワイさんが絵を描かれた作品をずっと並べ続けてきました。(『ひとりの夜にあなたと話したい10のこと』(作 カシワイ 大和書房 2020)『ナニュークたちの星座』(文 雪舟えま 絵 カシワイ アリス館 2018)詩画集『いまきみがきみであることを』(詩 白井明大 画 カシワイ 書肆侃侃房 2020)ほか)

初夏のような日差し/自由港書店店前にて

やさしい線で、余白たっぷりに描かれる生きものや風景。カシワイさんの絵とことばとともに、小笠原諸島を旅してみませんか。船。海と空。島の夜と星。熱帯の森。強烈な日差し、木漏れ日。鳥や木の実。サメ、ミナミバンドウイルカ、マッコウクジラ、そして、色とりどりの熱帯魚たち。静かに眠るサンゴや貝殻の化石。遥か過去から受け継がれてきた神事。生きものが生きものを食べる、ということ。遠い記憶。『Trip To Ogasawara』、心に深い余韻を残す、まるで深海のような一冊です。

そしてなんと!そんなカシワイさんのイラスト4種がレトロ印刷(リソグラフ)で印刷された可愛い可愛いメモパッドも取り扱わせていただけることになりました!海を感じる可愛いメモパッド。須磨海浜公園散歩の思い出に、ぜひぜひお買い求めください!

海で集めた思い出の記録に

慌ただしい日々。高速で過ぎ去っていく時間の流れを、いったん止めて。大阪を拠点に活躍されているフォトグラファー・島田勇子さんが、仕事を休んでポートランド(アメリカ・オレゴン州)で過ごした3ヶ月(2023年2月~5月)を言葉と写真で記録したリトルプレス『how much you have / how much you want』(私家版)。自由港書店に入荷しています。

夕暮れが近づいてきて、青くなってきた空に星がひとつ出ていました―――

島田勇子
how much you have / how much you want
2023年5月12日金曜日の日記より

手のうえに乗る真っ白なほん

表題となっている「how much you have / how much you want」は、島田勇子さんがポートランドで出会った言葉。あれもほしい、これもほしい。手に入れたいものはたくさんある。でも、あれも手に入れてない。これも手に入れられてない。心にあるのは欠落感、欠乏感ばかり。だけれど。ほんとうにほしいもの、ほんとうに必要なものって、なんだっけ? 心の分母をギリギリまでピュアに磨いてみれば、ひょっとしたら、すでにいま手にしているものだけで、じゅうぶんに心は満たされているのかもしれない。

”こんなに自由に生きていいんだ。ここにいたら人と比べたり焦ったりしなくてよくなりそう。もしこの場所で、旅ではなく暮らしをしたら何を感じてどんな写真を撮るだろう。”

”私が出会ったポートランダー達はいつも自分で決めていました。決断の行く末の全てを一手に引き受けていました。自分のことなんだから当たり前です。大きなことや、(一見)小さなこと、いろんな決断を他人に委ねてしまうのはとても怖いことです。彼らはいつも自由でした。”

島田勇子
how much you have / how much you want
より引用:

これは、自由を願うすべてのひとたちのための本。

大阪 その光と影

大阪
岸政彦
柴崎友香
河出文庫
2024年4月文庫化
自由港書店に停泊しています。

「港へたどり着いた人たちの街で」(柴崎友香)「淀川の自由」(岸政彦)ほか、大阪をめぐる文章が収められています。名著、待望の文庫化です。

自由/港(『大阪』河出文庫:目次の一部)

本書は、大阪にやってきて大阪を愛してしまって大阪に暮らし続けている岸政彦さんと、大阪に生まれ育ち大阪を離れてからも大阪を思い続けている柴崎友香さんの共著エッセイ。

現在、京都大学大学院文学研究科教授をされている岸政彦さんは、『大阪の生活史』『沖縄の生活史』『東京の生活史』などの編著書でも知られる社会学者のかたです。柴崎友香さんは、2014年に小説『春の庭』で第151回芥川賞を受賞された小説家のかたです。おふたりとも、人間の生活の中に漂う微細な哀感を見事に掬い取った文章で知られます。

私(自由港書店店主)は、以前『USO4』(rn press)にもエッセイを書かせていただきましたが、2018年夏に東京を離れ京都で半年を過ごし、2019年に神戸に辿り着いて現在に至るわけですが、この間、常に、大阪は、ただ大阪として、途方もない広がりをもって、存在してくれていました。2018年夏の、なにわ淀川花火大会のことは忘れません。大阪。なんて魅惑的で、悲しい色したまちなんでしょう。

人は、旅をして、人と出会い、人以外の生きものたちとも出会い、どうしょうもないことを考えたり、どうしょうもないことをしてしまったりしながら、生きているあいだ、なんとかして、生きていきます。けもののように、ころがっていきます。そのさまは、なんともかわいらしいものなのでした。

(今回の文章は、この曲を聴きながら執筆しました。けもののなまえ feat. HANA|ROTH BART BARON。すばらしい曲です。)

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