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断層

あなたがついた嘘は誰かを傷つけましたか。
あなたがついた嘘はあなた自身を傷つけましたか。

嘘の奥には本当の顔が眠っています。
あなたが嘘をつく理由はなんですか。
本当の姿を見られるのは怖いですか。

あなたが抱えている
哀しくてみっともなくて可笑しな嘘を
ひとつだけ教えてくれませんか。

影はどこから生まれるのだろう

年1回、秋に刊行される文芸誌、『USO(うそ)』。2023年11月15日、『USO』の第5号、「USO5」が発売になりました。自由港書店でも販売を開始しております。

「USO5」
発行所:株式会社rn press
仕様:文庫サイズ/356ページ
本体価格:1600円+税

邪悪な厚み

シリーズ史上最厚となった「USO5」には、なんと19名もの方の作品が収められています。『USO』シリーズは、小説やエッセイ、詩といった文章だけでなく、写真作品や漫画作品も収められているところが魅力です。いわば総合芸術。19名もの方が、それぞれに、それぞれの表現手法で、「嘘(USO)」を全力で表現されています。いろんなひとの「秘密」が詰まった宝箱を、そっと覗く(のぞく)ような楽しみがあります。

19の作品が、責任編集の野口理恵さんの手によって絶妙な順番に並べられ、流れが生み出されています。そこに、絶妙なタイミングで、「文豪」が書いた文章が2本差し込まれてあります。100年近い年月をまたがって同じテーマについて書かれた文章が並んでいるわけです。時空を超えた文芸誌、それが「USO」です。

交差する

「USO」シリーズの魅力はそれだけではありません。「USO」シリーズは、作品の作者と、編集者・野口理恵さん、それから読み手の皆さんとが、本の中でドラマチックに交わっていく状況を目撃することができるのも魅力なのです。野口理恵さんが、「USO」という本の中で、巧妙に、作品の作者や読み手の皆さんに言葉を投げかけていきます。抜き差しならないドラマが本の中で展開されていきます。何が起きるか分からない。こんなにハラハラドキドキする読書体験って、なかなかありません。

一年の締めくくりに。渾身の「USO」を楽しんでみませんか。

いろんなアングル

嘘をつくことは悪いことでしょうか。

誰かを傷つけることは悪いことでしょうか。
無理な挑戦をするのは悪いことでしょうか。
家でごろごろ寝ているのは悪いことでしょうか。
本を読まないのは悪いことでしょうか。

あなたは良い人ですか、悪い人ですか。
あなたは何を信じて生きていますか。
わたしに<あなた>のことを教えてくれませんか。

秘密のベール

「USO5」のテーマは<悪(AKU)>。

人間が「してはいけない」ことって、どんなことなんだろう。人間が人間であるために、人の道を踏み外さないために、「してはいけない」ことって、どんなことなんだろう。でも、「してはいけない」ことって、本当に、「してはいけない」のでしょうか。あなたは、「してはいけない」ことを、本当に、「してこなかった」ですか。「してはいけない」ことを、本当は「したい」のに、それどころか本当は「してしまった」のに、嘘をついて隠していたりはしませんか。

小説とエッセイの間にある断層

私(自由港書店・店主・旦悠輔)も、「USO5」に、一篇の短い小説を寄せました。タイトルは、「断層」です。人と人の間の「断層」について書きました。

ーーー「小説」という形式でなければ表現できないことがありました。昨年「USO4」に、「私と嘘」というタイトルの「エッセイ」を書かせていただきました。2018年に東京を離れてから、京都を経て神戸に辿り着き、そこから、須磨という土地に巡りあって書店を立ち上げるまでの「本当にあった出来事」を包み隠さず綴った文章でした。おかげさまで多くのかたにお読みいただき、たくさんの感想もいただくことができました。「USO4」という場をお借りして、「私と嘘」というエッセイを公開したことで、自身の中で、はじめて消化できたこともありました。

いっぽうで、同じ期間、自身の心の中で起きていたことについては、「エッセイ」という形式では表現が難しかったこともあって、ずっと胸のうちにとどめ続けてきました。今回、「小説」という形式にはじめて挑戦することで、自身が「本屋を開こう」と決意するに至った心の動きを、今一度、「別のアングルから」表現してみよう、と思い立ったのです。

断層

旦悠輔にとっての、そして自由港書店にとっての、「もうひとつのUSO(うそ)」です。繰り返しになりますが、今回私が書いた文章は「小説」です。「小説」であるからして、実際に起きた出来事(=事実)だけを文章にしたものではありません。「小説」というものは、ある意味で壮大な「嘘」であるわけですが、「嘘をつくことは悪いことでしょうか」。ーーー「嘘の奥には本当の顔が眠っています」。私も、そう思います。「小説」という形式でなければ表現できないことがありました。

闇と光

「USO5」。一年の締めくくりに。ぜひお読みになってみてください。自由港書店、店頭に「USO1」から「USO5」まで取り揃えております。各号に、「読者はがき」が付属しています。あなたも、あなたの中に眠っている「本当(ほんとう)」を、見つめてみませんか。

善と悪

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