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火をわけあう

8月25日日曜日。
詩人の池田彩乃さんの「ただいま関西ツアー」最終日・ツアーファイナル神戸編を、自由港書店で開催させていただきました。

長く関西で活動してこられた詩人の池田彩乃さんは、青森での暮らしを始められました。そんな池田彩乃さんが、夏の終わりに、帰省も兼ね、関西に帰ってきてくださったのです。その日は日曜日、自由港書店は定休日ですが、特別に店を開きました。

奈良・大阪・神戸 3DAYS

もともとは夜の部だけの想定だったのですが、夜の部はあっという間に定員いっぱいになってしまい、昼の部も行うことに。

昼の部(13:00-15:00)は自由参加。どなたでも、ご参加いただけるかたちとしました。13時のオープン早々、池田彩乃さんに会いたい、というかたが続々とお店にいらしてくださいました。「おかえり!」「ただいま!」と言葉が飛び交う店内は、まるで公園、そして「おうち」のようでした。

夏休みシーズン最後の日曜日でした

みなさまそれぞれ、それぞれに、池田彩乃さんと語り合っておられました。池田彩乃さんの(定番)「詩集」は、『舟』以来、刊行がありません(期間限定、ないし、特定の書店さん限定で刊行された詩集はありますが)。みなさま、既刊の『舟』『発光』『一杯の水を注ぐ手紙』、それから『観光記』を、熱心に何度も何度も繰り返し読んでいただいているようでした。そして、みなさま、新刊をとてもとても楽しみにしておられるようでした。

本屋をやっているといつも思うことでもありますが、一冊の本がもつ力というのはこんなにも大きいのだな、ということを、改めて感じることができた一日でありました。

あっという間に「昼の部」はおしまい。自由港書店から歩いて5分ほど、ちょうど、神戸須磨シーワールドの目の前、「2号線」と呼ばれる大きな道路沿いにあるカフェ「ANOTHER CUP」さんに移動して、ちょっと休憩。「ANOTHER CUP」さんでは、ダンディで寡黙なマスターが、サイフォンでおいしい珈琲をいれてくださるのです。静かできれいな店内。読書にも最適です。わたしもファンですが、自由港書店のお客様にもファンのかたがたくさんいらっしゃいます。「ANOTHER CUP」って名前もすてきですよね。「ANOTHER CUP」。おかわり。人生におかわりを。人生に、満ちていくゆとりを。元気が満たされたら、店を出て、いつもとはちょっと違う道へと歩きだしてみたくなる。素敵なお店です。「あんみつのアイスクリームあんこのせ」というスペシャルなメニューをいただきました!軽やかで華やかな季節限定珈琲「夏ブレンド」とともに!

ANOTHER CUPさんにて

池田彩乃さんは、昨年2023年7月17日の海の日に、自由港書店としてははじめての展示「青を祝する」を開催してくださいました。そして、自由港書店のために、あたらしい詩集『青を撫ぜる』を作ってくださったのです。それから1年。池田彩乃さんは生活の拠点を青森に移され、自由港書店は3周年を迎え4年目に入りました。それぞれの1年について、振り返りあう、豊かな時間でした。私の変化は、といえば。「生活の拠点を、神戸の中心・三宮から、店のある須磨に移したこと」。それくらいでしょうか!

17時。夜の部です。みなさま時間通り自由港書店にお集まりくださり。池田彩乃さんによる朗読会のスタートです。まずは、店内で、『百年の散歩』から、旅立ちにまつわる詩を朗読していただきました。それから。みんなで、須磨海浜公園に向かって、お散歩スタートです。

6月1日にリニューアルオープンした須磨海浜公園。お散歩には最適なのでした。

https://kobesuma-seaside-park.jp/

須磨シーワールドホテルをぐるりとまわって、須磨ヨットハーバーへ。そこで海をみながら詩の朗読をしていただきました。須磨ヨットハーバーの先には、小さく可憐な白灯台が立っているんです。みんなで白灯台を眺めました。

松並木の下を歩きながら、須磨海浜公園内の「海のひろば」へ。やわらかい風が吹いてきました。風を感じながら、ベンチに座って、池田彩乃さんによる詩の朗読に耳を澄まします。

神戸須磨シーワールド(水族館)は有料チケット事前予約制なのですが、一カ所、「SUMA COLLECTION」と呼ばれる、一般に無料開放されているエリアがあります。みんなで「SUMA COLLECTION」を楽しみました。

そして。「すまっこひろば」と呼ばれる、広々とした緑の芝生ゾーンへ移動して。地面のあたたかさを体で感じながら、池田彩乃さんによる詩の朗読を聞きます。途中、参加者のみなさんにも、即興で、詩のことばを紡いでいただきました。その時。遠くで雷が光りました。風も出てきました。

あっという間に日が暮れ始めてきました。立秋過ぎて、もう、7時前には日が暮れてくるのですよね。須磨の場合、山の向こうに日が落ちるので、太陽が山の向こうに落ちるのが、日没の時間よりも、さらに早いのです。

赤灯台へ向かいます。須磨海浜公園の西端には、赤灯台と呼ばれている、「旧和田岬灯台」が置かれています。兵庫(神戸)開港に備えて作られた灯台です。初点灯は明治5年。現存する鉄製の灯台としては日本最古のものなのだそうです。もともとは、兵庫の港・和田岬の先端にあったものですが、戦後昭和38年に廃灯となり、須磨海浜公園に移設されたのだそうです。現在は、もう、役目を終えて、光が灯らなくなった赤灯台。それでも優しく、私たちを見守ってくれています。そんな赤灯台の下で、池田彩乃さんに詩の朗読をしていただきました。あの、『舟』に収められている、「灯台」の詩も。

夜の部も、あっという間でありました。夏の終わりの花火のような、一瞬の出来事でした。短かったですが、そのきらめきはとても強く、ずっと、思い出として残りそうです。参加者のみなさまにも、そのように感じて頂けたなら、とても嬉しく思います。

ふたたび、来た道を戻ります。須磨海岸は、夜でも、遊歩道沿いに明かりが灯っていて、安心して歩くことができるのです。白灯台も、青信号を、チカ・チカ・チカ、と、点滅させています。青信号。夏の間、須磨シーワールドでは「ドルフィンナイトパフォーマンス」が夜20時から行われていて、ちょうど、帰り道、そのショーの明かりと、音楽が、流れていました。須磨シーワールドのテーマソング、miletさんの「Bluer」です。TVCMでも使われていましたね(このTVCMには、自由港書店がある店前の青い道も登場するんですよ)!

自由港書店に帰ってきました。おかえりなさい!ただいま! ふたたび声が聞かれます。自由港書店は、これからも、作家さんにとって、そしてお客様にとって、安心して帰ってくることのできる「港」であれたらと思います。

そして、池田彩乃さん、輝く時間をありがとうございました!池田彩乃さんの詩世界そのもののような時間でした。安心。公園。家。待ち合わせ。散歩。観光。ただいま。おかえり。灯台。発光。おめでとう。

みなで、手に持った火をわけあうような時間でした。

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