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「演劇集団キャラメルボックスを開けてみた」Part.4

城西国際大学メディア学部キャンパス誌「Update Vol.2(https://online.fliphtml5.com/kbtoy/ayak/#p=1)」で行ったインタビューの完全版。
これを読めば、あなたもキャラメルボックスのことをもっと知りたくなる!
7つに分けて掲載しております。こちらPart4です。是非ご覧ください!


Part4

——キャラメルボックスの作品の中で、思い入れのあるキャラクターはいますか?(演じていなくても可)

鍛治本:いっぱいあるのですが、パッと思い浮かぶのは『スケッチブック・ボイジャー』の“カケル”。中学の時にサッカー部だったこともあり、作品を観た時にすごく共感できました。キャラメルボックスの俳優教室時代に映像を見てすごく面白いなと思った作品でもあり、まだやってもいないのに印象深い役です。

成井:僕役者じゃないですからね。でも僕も役者を最初の2, 3年やっていたので、自分が演じた役で言うなら、『サンタクロースが歌ってくれた』の“監督”ですね。あれは楽しかったし、その後再演の度に「そうじゃないんだよ」って毎回思っている。でもさすがに筒井俊作の“監督”(※1)には敵わないなって、唯一筒井の監督だけは認めます。非常にお気に入りの役ですね。

鍛治本:僕は成井さんの『スケッチブック・ボイジャー』の“館長”も

成井:ああ!館長さん

鍛治本:僕は印象に残ってますね。

成井:僕も自分では相当気に入っていると思う。でも2代目“館長”の上川隆也(※2)の方が明らかに面白いんでね。ちょっと悔しいね。

鍛治本:僕は上川さんが完コピしたのではないかって見ているんですけど。

成井:ベースはかなり踏襲しているね。僕をベースしていたからずっとギャグが面白いんだよね。さすが上川。

  ——もう成井さんは舞台に出演されないのですか?

  成井:最近1回出ましたけどもうゴリゴリです。台詞が覚えられないので。

多田:2009年にやった『さよならノーチラス号』の“タケシ”。その時、劇団に入って初めて主演をいただいた役で楽しかった、面白かったというより、僕にとっては大きく挫折した役でした。

成井:ええ、そうだったの?

多田:そうなんです。

成井:特に怒ってないよね?

多田:いや、そんなことないです!覚えてないんですか!?
もちろんダメ出しを激しくしていただき、自分の中でもそれまで結構のらりくらりやってきちゃったなって感じがあって、初めて真ん中でセリフがたくさんある役をいただいて、やってみたら全然できなくて。稽古中も公演終わった後もできなかったなって思った公演でしたね。そこでやっぱり自分で大きく挫折感を味わった公演としてあれは忘れられないし、いつかリベンジしたいなとは思いつつも、もう年齢も年齢なのであれなのですが、自分の中で残っている役ですね。

鍛治本:僕の方が怒られましたね。

多田:いや、お互いね(笑)。

——キャラメルボックスのダンスシーン、こだわりはありますか?

多田:そもそもなんでキャラメルはダンスをやるのかって思っている方も多いのではないですかね。


成井:そうですね。ストリートプレイなのに、しかもなぜか1回しか踊らないしね。変ですよね。
でも、私が芝居を始めた80年代小劇場の芝居を見に行くと大抵踊るんですよ。どこの劇団に行っても踊る。それが割と当たり前で、もともとは多分つかこうへい事務所という劇団の劇中にダンスシーンがあったことから流行りだしたんじゃないかと思います。同年代の劇団はみんなどこも踊っていたのですけど、だんだんと年取るごとにみんな踊らなくなっていって。だけど私たちは世代交錯があって若い人がどんどん入ってくるから続いているのもあると思います。
それから私が好きなのですよね。舞台役者っていうのは、やっぱり身体表現こそが1番大事だと思うので、普通に喋っているときも動いてほしいですし、ダンスっていうのはまさに身体表現を見せるものですから。ダンスシーンがないお芝居もたまにあるのですけど、なるべくダンスシーンを1回は入れたいなと思っています。
あとは、私のお芝居はストレートプレイであるよりもさらに会話劇といいますか、セリフの数が多くて、しかも早口なのですよね。しばしば耳が疲れるとか言われるので、ダンスシーンで休めるじゃないですか。ダンスとかパフォーマンスのシーンを入れてお客さんを休ませてほしいって以前はよく言われましたね。

——印象に残っているキャラメルボックスのダンスシーンはありますか?

成井:まず今回の『クローズ・ユア・アイズ(2023年)』のダンスシーンは非常に気に入っていますね。それから『さよならノーチラス号』のダンスシーンも初演も再演も大好きです。
どちらの公演もボリュームがあって2分以上。だいたいは毎回1分半くらいあるでしょ。でも今上げた2つの作品は2分以上踊っていて、役者にはかなり負担になっちゃっていると思うのですが、見応えがあってダンスシーンがまたひとつ、何か物語を表現しているようなそういう強さというか、深さがあって、私は好きです。

多田 僕がパッと思いつくのは、『嵐になるまで待って』『鍵泥棒のメソッド』ですね。
『嵐になるまで待って』は手話が本編に出てくるのですけど、その手話を取り入れたダンスシーンが印象深くて。音楽とも相まって、これから起こるお芝居の物語をすごく予感させるような。ワクワクするし、かつ美しいし、印象的で、それはいろいろ初演、再演とかで振りも変わっていっているのですが、どれもやっぱり手話を取り入れたダンスで素晴らしいなと思っています。

NAPPOS PRODUCE
『嵐になるまで待って』(2023) ダンスシーン 
(c) 引地信彦
劇団の代表作をプロデュース公演にて上演
同じく手話を取り入れたダンスシーン

『鍵泥棒のメソッド』は石田ショーキチさんの音楽で結構ロックがかかって、それに合わせて踊るのですが、なんかね、かっこよかったんですよ(笑)。ダンスシーンの中でダメ俳優の主役・桜井という男が銭湯姿の裸からスーツとかに着替えて、これから違う人生を歩んでいくみたいな感じになっていくのですけど、ダンスの中でもお芝居の物語みたいなのがあって、ダンスのためだけの衣装や白黒のロングコートみたいなのを着たりとかして。そういった統一感みたいなのがキャラメルではなかったので珍しくて、かっこよかったので、印象に残っていますね。

鍛治本:2つあって『ヒトミ』の再再演(2014年)のダンス。体が動かなくなった主人公・ひとみが手術をして動かせるようになるというのを、みんなでダンス中に主役の実川貴美子さん(※3)を歩かせるっていうイメージをやっていて、それがすごくお芝居の世界を表現していて、曲も相まってすごく好きでした。同じ理由というか、今回の『クローズ・ユア・アイズ(2023年)』のダンスが自分で踊っていてもすごく好きです。すごく世界観が表現されているし、本当にあのダンスシーンだけでもぜひ見てほしいなって思える。照明も綺麗だし、オープニングの美しさをすごく感じて、ストーリー性があって、とてもお気に入りのダンスになりました。

キャラメルボックス
『クローズ・ユア・アイズ』(2023) ダンスシーン 
(c) 引地信彦


——”再演”の面白さはありますか?

成井:まず前提として全部新作なんて不可能ですよね。それは全く不可能。キャラメルボックスを85年に作って、89年, 90年, 91年のあたりにプロデューサーから「劇団が上り調子なのだから再演はしない。全部新作書いてください」って言われて、1年で4, 5本書かされたことがあって。その頃、僕は28, 9歳だったからできたのだと思います。今同じことをやるのは、脚本が専業ではなく、演出もしているから物理的に不可能だと思いますね。
あと、再演っていうものがすごく大切なんですよ。それは、お気に入りの本はずっと本棚に置いておいて、古本屋に売らないのと同じで、キャラメルボックスにとって過去38年間やってきたお芝居って、みんな財産で大切なもので、特に大切なお気に入りの物は取り出してまた読みたいし、お客さんにも見せたいんです。「僕たちこんな素敵な物語を生み出した劇団だし、今の僕たちならこんな風にお見せすることができますよ」と。すごく大切な財産ですね。
それと新しい可能性を追求する、生み出すってことで新作をやるってことが私はどちらも大事なことで。世代交錯でどんどん新しい人が入ってくるから、『クローズ・ユア・アイズ』も出演者のうち初演に出ているのは1人しかいない。カーテンコールで言ってくれているように劇団員にとっては新作なんです。岡田さつき(※4)以外の人間にとっては新作なので、新作にも再演にも意義があるけど、再演も新作的に捉えることができる

多田:僕、個人的に演劇界で新作がもてはやされるのはどうなのかなと思っていて。面白い作品は別に「いつ、誰が、どこでやったって、何度でもやったっていいじゃないか」と思っています。キャラメルボックスもこんなに作品があって面白い作品がたくさんあるから、再演たくさんやってほしいなと思っています。でもそのキャスティングなり、いろいろな関係で断念したところもあります。
あとは、今回の『クローズ・ユア・アイズ』は23年ぶりの再演ですけど、初演を見ているっていうお客さんもやっぱりちらっといらっしゃって。そうやって、お客さんと思い出を共有できているってところがすごい強みだと思います。再演が今回(『クローズ・ユア・アイズ』)は23年ぶりとかなり空きましたけど、劇団だと、大体7年とか8年スパンで再演することが多かったりするので、7年前のあれも見ている14年前の初演も見ているとか、そうやってお客さんと一緒に思い出を共有していけるのが長く続けているこの劇団の強みだし、思い出補正という言葉がありますけど、僕は断然思い出補正かかってもいいなと思っていて。昔あんな面白かったから、今見てもやっぱり面白いとか、昔あの役者さんが素敵でそれを重ね合わせてちょっと見ちゃったよっていう感想も全然OKだと思っています。
成井さんもおっしゃっていたように、面白い作品は何度見ても面白いし、たまに見てもどんどん面白いと思いたいから、思い出補正をかけていく感じで、お客さんと一緒に歩めるところが、再演を繰り返すことの強み、良さだと思っています。

鍛治本:はい、僕再演大好き
演じる時もそうだし、お客さんとしても。歌舞伎とかお能とかも好きなので、いいものは何回見てもいいし、何回も決まっているとこで決まって、見え切ってくれたら本当に安心して楽しめるというか。あとは、往年のヒットソングを持っている歌手の方のディナーショー行ったら、新曲ばっかりだとちょっと残念というか、「いや、昔の曲歌ってくれよ」って僕は多分思うだろうなと思って。そういった意味でも好きだし。やっぱりレミゼ(レ・ミゼラブル)はいつ見てもいいだろうし。
繰り返しやることで、また新たな発見がやっている側にもあるし、見ている方も自分がいつ見るかによって感じ方は違うだろうし。キャラメルボックスは本当に再演できる貴重な財産がたくさんあると思っているので、再演どんどんやりたい。新作もまた新たな可能性という意味ではすごくやりがいがあるし、どっちも良さはあるなって思います。

※1『サンタクロースが歌ってくれた(2021年)』にて劇団員の筒井俊作さん(2002年入団)が”監督”を演じました。
※2 上川隆也さん 劇団に1989年から2009年まで所属。『スケッチブック・ボイジャー(1995年)』では“館長”を熱演。
※3 実川貴美子さん 劇団に2002年から2020年まで所属。『ヒトミ(2014年)』では主人公・ヒトミ役を演じました。
※4 岡田さつきさん 1991年に入団。唯一『クローズ・ユア・アイズ』の初演にも出演。初演では“長塚操”役、再演では“長塚米子・香取はつ”役を演じました。

キャラメルボックス
『サンタクロースが歌ってくれた』(2021) (c) 引地信彦

Part5へ!

成井さん  演出しているときに大切にしていること、キャスティング方法
https://note.com/jiu_uda_seminar/n/n9661e9720234


最新情報!(2024年3月時点) 詳細は各HPをチェックしてください!

<演劇集団キャラメルボックス 次回公演予定>
キャラメルボックス2024 クリスマスツアー
2024年12月 大阪・東京公演

<成井豊さん 最新作、鍛治本大樹さん 出演予定作品>
NAPPOS PRODUCE 『湯を沸かすほどの熱い愛』
【原作】中野量太 【脚本・演出】成井豊
2024/5/18(土)~5/26(日) @サンシャイン劇場
2024/6/1(土)~6/2(日) @サンケイホールブリーゼ

<成井豊さん 脚本・演出・作詞、多田直人さん 出演予定作品>
『無伴奏ソナタ-The Musical-』
【原案】 オースン・スコット・カード 【翻訳】 金子司
【脚本・演出・作詞】 成井豊 【音楽】 杉本雄治
2024/7/26(金)~8/4(日) @サンシャイン劇場 ※大阪公演あり
2024/8/10(土)~8/11(日) @森ノ宮ピロティホール

村上



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