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【昭和パンパン物語】男を尻目に上野を束ねた女ボス「ノガミのお房」◎#02

戦後、台湾から引き上げてきた戦争未亡人の山野房子。行く宛もなく、彷徨い歩いて最後に行き着いた上野で貧しさのあまりGI相手にカラダを売っていた女は、その美貌と知性でノシ上がり、いつしか“ノガミのお房”と呼ばれるようになった
(#01の続き)

カラダを売って上野の女親分に成り上がった!


上野の女ボス誕生

 敗戦直後の上野駅周辺には浮浪児がたむろし、この子供らを集めたボスが「スリ学校」なるものをつくって窃盗集団を仕切る、暴力集団血桜団に対抗し、通称ターバンの絹江のもとに集まった通称馬場のよっちゃん、みよ坊ら不良少女グループが抗争を繰り返す。あるいは客の奪い合いをめぐるパンパン同士の縄張り争いなど有象無象の人間がうごめき、まさに暴力、犯罪、売春がはびこる悪魔の巣窟だった。
 このような無法地帯に身を置くからにはハンパな覚悟では生きていけない。お房はパンパンの組織化と縄張り形成をはかった。さいわい同じ未亡人が仲間に加わった。売春で蓄えたカネでお房は浅草に安アパートを借りた。このとき隣室に子持ちの未亡人がいた。聞けば彼女も夫が中国で戦死したという。今は幼子を抱え食堂の洗い場で働いているが子どもの薬代も事欠くとの彼女のなげきも聞くようになった。そこでお房は思い切って持ち掛けた。生きていくには見栄だの外聞だのかまってはいられない。
「なら、稼がせてやるからついてきな」
 彼女はお房のパンパン仲間第1号になった。
(#03に続く)

取材・文/岡村青
イラスト/星恵美子