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1年限定店舗『くとうてん』を終了しました。始まり〜終わりまでの出来事〈後編〉

この話は、ちょうど1年前から始めた店舗の『はじまり』から『終わり』までの生きた証である。時系列に起きた出来事をまとめた、言わばダイジェスト版の記録。地方の約63000人の人口の町(青森県で4番目に大きな町)で、ちょっと変わった店をやるとどうなるのか。の後編である。

前編は↓

ここから〈後編〉です。
* * *

逆に誘われて外部のイベントに参加

お店が認知され始めると、『くとうてん』=民藝という認識が広がってくるようだ。とあるイベントに参加を誘われた。青森県内の逸品を集めたクラフトイベント。
『わたしのイッピン展』である。

一般的にクラフトイベントでは、皆さんが買いやすい値段設定にして、売れやすい物を並べる。このイベントでは、その逆を行くのである。作家自身が箪笥にしまっている極上の逸品や、宝物のようなあまり表に出さない目玉作品を出してしまうコンセプトである。

出品者としても参加したのだが、本業デザインの方でも担当することになりました。嬉しい波及である。

それがこのキービジュアルとイベントのネーミング

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私の一品とか1品(逸品)展とよむ


出品したものがこちら

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上: スケボーの廃材で作った大型の新作。(小判のところは鏡にしてステンドグラス作家に依頼)招き猫『NEGO ONE』を見つめるスケーター
中: 制作風景。今回もぼく(Design担当)とysk(Maker)の共作。過去最大の新作で挑んだ。(ysk_quality氏の工房ステルスランプにて)
下: これまでの商品(右からアイスクリームコーン、鏡もち、ひな人形、コースター)

主催者以外の参加者は全く知らない人ばかりだったので、またまた出会いの広がるご縁の場になった。

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どれも大作ばかりである。絵柄も刺繍も染め、陶芸、木工、漆、どれも自らやってしまう作家ばかり。世界でブームになっているBOROまである。東北人の野良着の集積でできている。いろんな価値が垣間見れる展示だった。
〈参加者のクレジット〉※リンクはHPまたはSNS
一、大湯建太郎  木工
一、小松阿維  
一、COOKIES  こけし
一、くとうてん/ 字と図ysk_quality  スケボー細工
一、crazy textiles/ 内藤早苗 **注染〈神奈川〉
一、
Snow hand made/ 佐々木亮輔+葛西由貴  染織
一、
たにさわあい  かばん
一、
のん窯  陶器
一、
ひのまる雑品店  雑貨
一、
山田のや**  陶器〈愛知〉


市内でも新たなギャラリーが誕生。

なんと、冒頭で空家探しを一緒にしていた建築家の渡部夫妻が、市内の空家に新事務所とギャラリーを併設するという。
(十和田にニューウェーブが来てる)不思議なものです。プレイヤーを探していた我々が、自らプレイヤーになってしまうという。笑

新ギャラリーロゴとサインを担当
嬉しい事に、その店舗ロゴとサインをご依頼されました。

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ギャラリーWAA(わ)と名付けれれたその場と、弊店舗くとうてんをつなぐスタンプラリーも計画しました。

WAA: **わー **には青森の方言で『自分』という意味もある

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その名も『おメガネすたんぷラリー』
それぞれの店舗でスタンプももらうと、字と図 作のポストカードが貰えちゃいます。(カードの絵柄は青森の国宝『合掌土偶』

そして、次なるは...

変化球 『ボリビア展』

お友達がこういうのあるよ〜と持ってきたのがボリビア雑貨。
前編〉で菱刺し展を企ててくれた山田友子さんが、本業以外で企画してくれた。そういういつもとは違う変化球が見れるのも、このくとうてんの本領とも言えるのではないか。
みんなのちょっとした実験の場でありたいと思った。

ほぼ日本の裏側にある南米ボリビア。作者もまさかこんな遠くの日本の端で展示されているとは思わないだろう。動物の刺繍が可愛い。世界広しとはいえ、刺繍はどこか共通点がある。

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新境地の企画展『ハエたたき展』

こちらの展示もまた、予想外のものでした。デザインの仕事をしていると、カメラマン(フォトグラファー)と知り合うことが多くなる。(職業柄、一緒に仕事をすることが頻繁になるんですね)
市内で、同年代ということもあって、仲良くしていたカメラマンの小山田くんが遊びにきた時に、『何か一緒に展示企画したいよね』と話していたんです。
それで、出てきたネタが『ハエたたき』だったのです。
これが、字と図のキュレーション第一弾と言えるかもしれない。

新聞各社も面白がってくれた

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カメラマンの小山田くんは、過去に豪華客船の専属カメラマンだった。世界を周遊する際、諸外国で集めたのがハエたたきだったのである。

本人曰く『スーツケースに入れても、かさばらないし、軽いし、安い』

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非常に『お国柄』が出やすいのがハエたたきの特徴でもある。
ハエとの距離感がデザインを通して分かる。
払うのか、潰すのか、潰したあとどうするのか。意匠と機能が、この1本に集約されている。

↑私が展示に合わせて運よく見つけ(ヤフオクで)競り落とした1本。
ラベルは右から読む。戦前の日本製だ。
一本の竹でできているこの美しさ。わびさび。
コレクター小山田くんさえも見たことのない逸品だった。当然、彼のコレクションになった。笑

↑こちらは、なんと、展示期間中に、知人のギャラリストが駆けつけ、プレゼントしてくれた1本。ハエたたきが、ハエたたきを呼ぶ。
なんと素敵な珍事!

このギャラリストは只者ではない。どうか青森に来たらなら、ぜひ足を運ぶといい。私のオススメのスポットである。日本一と言っても過言ではない。私がお店をはじめた潜在的な動機の一つかも知れない。
ギャラリーたなか

新聞4社に取材され、ヤフトピにも掲載され、某TV番組の取材依頼も。
結果的にすごい反響になった。


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↑私のイチ押しがこれである。アラスカのハエたたき。きっとサーモンの尾ヒレをモチーフにした迷彩柄の先端。棒はスケール(木製)

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↑コチラは異彩を放つ1本。あのデザイナー、スタルク製。(浅草のうんちビルでお馴染み)三本足で自立する。たたきの部分には、自身の顔が網点で透ける。
歩いて1分の十和田市現代美術館では、同時期にAKI INOMATAさんによる 『Significant Otherness(シグニフィカント・アザネス)生きものと私が出会うとき』企画展が開催されていた。ご本人もふらりと来てくれた。生き物を扱った展示だったので、リンクすると面白いと密かに考えていた...誰か気がついてくれた人はいただろうか...

もう一つの柱...『時々郵便局』の声

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これだけたくさんのイベントがあると、すでによろず屋感がありますが、忘れちゃならないのが、冒頭に述べた『時々郵便局』である。

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我々、字と図Designのポストカードを選んで、大切な人や未来の自分に、お手紙を書く。
いつ届くか分からない郵便局。それが、時々郵便局である。

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このデジタルツールのはびこる時代だからこそなのか、手紙というアナログを思いのほか、楽しんでくれること人がたくさんいた。平成最後の日に書く人、2度目のラブレター、忘れてはいけないTODO。大切な人や自分に。用途は様々だった。

この時々郵便局のスピンオフがこれである↓

↑年の瀬のホテルのカウントダウン用イベントに考えた『手紙』を使ったイスタレーション。思い思いの1年を振り返って、反省や出来事、新年の誓いなどを書いて、展示する。


続く企画展...『でたらめ郷土玩具展』

続いては、これまでとは、また全く趣向の異なる展示となった。県内で異彩を放つイラストレーター豊川 茅(とよかわちえ)さんによる展示。

郷土玩具系インスパイア作品
自らの展示を彼女はこのように説明している。つまり、この企画展の趣旨は、彼女の制作物を披露する個展でありながら、『郷土玩具』をテーマにしている。日本の昔から脈々と続く、各地の郷土玩具に思いを馳せつつ、自らのアイデアで、あったらいいな〜郷土玩具を創造している。
もはやその境界線もあやふやになりつつ、見ているものは、いつしか彼女の世界にどっぷりとハマっていく。

毎日開催されたワークショップがまた面白い。

あらかじめ用意した様々なニュートラルな白い立体に、参加者が色つけしていく。

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↓まずは、先生の作品群から、

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キャッサバって。用足し?焼きイカ?ふくみ笑うの応酬である。

どうだろうか?このパンチ力とヌケ感。

↓続いて、お客さんの作品。

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人工物を作っている子どもがいた。この発想はなかった。しかも、線路は紙で作っているしまつ。子どもの発想は、本当に柔らかい。この後、彼は月を作り、夜に走る新幹線を完成させた。オトナたちは、いらない縛りを自ら作ってしまっているのかも知れない。

みんなの個性も半端でない。

県内の巨匠たちと目利きがこぞって集まる

この少しふざけた遊びのような展示(本人も私も至って真面目ではあるが)に巨匠と呼ばれる作家やデザイナーがこぞって、お戯れにくるのである。
彼らは言う『ファンなのよ。この突き抜けた感がたまらない』
また、こうも言う。『自分で作品を作ってると、どうしてもまとめようとして真面目になりがちなんだけども。彼女の作品は...』

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これが、豊川 茅の魅力なのかも知れない。

豊川 茅とよかわちえHPinstagram 彼女は、縄文研究家でもある。ブロガーでもある。とにかくブログが面白いので必読です。

企画展最後の日は、おきまりのダブル企画『まるいち』

同市内(十和田市)にある、手作りにこだわる日本一小さな化粧品メーカーゆきの木のいわきさんが、同じく同市内の作家たちと共に企画する『まるいち』を、くとうてんでも開催してくれました。

『冬のイベントがないんですよ』
これは雪国ならではのあるある問題かも知れないが、確かにないのである。
室内ならば、なんとかなる。この辺りにもヒントが隠れていそうである。

主催者のいわきさん以外は、やっぱり知らない人。ありがたいことにまたまたご縁が増えました。

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↑この犬ちゃんも...実は同日開催のワークショップで制作したもの。(上記参照)

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紳士が淹れてくれる美味しいコーヒー、陶芸作品、やさしい石けん、雑貨、古道具...1Fがマーケットになったイベントでした。

ゆきの木〈HP〉←ゆきの泡せっけんもコチラから購入可能


これにて終了へのカウントダウン

予定していたイベントは無事3月1日で終了。
コロナの影響がちらほらと世間を賑わせ、次第に大きなものになってきたのである。
外を歩く観光客の数も激減。流石に現美に向かう姿も少ない。
それに合わせるように、くとうてんも、大人しく自粛することにした。
借りているのは3月までだったので、来たいというお客さまだけの対応だけにして、後は大家さんに引き渡す準備のお掃除タイムとなった。

一年は、早い。

僕らにとっては新しい挑戦だったため、この一年はそれなりの時間の重みとして感じた。
けども、周囲からは、早いねーと言われた。
そうかもしれない。
もう一年やりませんか?
大家さんも、一緒に楽しんでくれている様子で、ありがたい声をかけてくれた。

でもね、この一年できっかり終えたいなと思った。
誰かが言った。
期限が決まってるのは、すごくイイ。

そもそも、大家さんから『1年だけ』と言われて、決めていた事だったと思うけども、決めていたから、色々な事ができたんだと思う。
こんなに詰め込み気味に、次々にできたのは、ゴールが決まってたから。

相方は、見えていたのかもしれないと思うと、すごい。

そして、次にやりたい事も見えてくる。
まだ言わないけどね。

おさらいとして、お店をやった事で見えてきたことを、お伝えしたいと思う。
ぜひ、共有していただけると、何らかのヒントになるかも知れない。

* * *

見えてきたことのまとめ


■ その1 なぜ日曜日にお店をやらないのか
シャッター商店街がある十和田で、お店をやる前は、なんで日曜日にお店を開けないのだろうか?と思っていた。目玉である十和田現代美術館は営業しているのに。個人商店のほとんどが、お休みなのである。

あー、もったいない。と正直、思っていた。
逆に皆んなが休む分、やるだけで意味が出てくる。
だけども、実際にお店をやってみることで、それが分かった。
日曜は人間として、休みたいのである。
そりゃ、儲かるかも知れない。が、お金の事だけで生きてるわけじゃないのだ。(根本的な事を忘れかけていた)
大人が強引に土日祝日に働いてしまうと、子供たちがどこにも行けなくなってしまうのである。子どもや仲間と遊びたいのである。

■ その2 毎日お店を開けることのツラさ
これも、似たような事だけど...お客さんの目線でいると陥りやすい、営業時間のことである。『もうちょい早くから開けてくれたらイイのにな』と思うこと多くないですか?
でもね、これが、ある程度慣れてくると『時間むだすぎるぞー』と、なるのである。
いつくるか分からない人を、ずっと待てないのである。かくいう私たちも、ひと月くらいしたら、午前中から開けるのをやめた。

■ その3 先にスケジュールを出して欲しい問題
これも結構お客さんに言われた。が、無理なのである。本業の片手間にやっている店のため...もあるが、その日にならないと分からないのである。私たちは、せいぜい2日前が限界だった。

■ その4 連絡先はメールアドレスで十分
光栄なことに、1年の間に10回未満の新聞記事に掲載していただいた。載ったのはよかったけども、連絡先にケータイ情報を開示してはいけない。
地方紙だし、掲載されるのは1日だしね...と軽〜く考えていたのだけども、昨今はサイトにアーカイブされ電子版になる。残るんですね。検索されちゃうんですね。失敗でした。

企画展以外で、もっと面白くなりそうなアイデア

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▼『出前』サービス 
新参者として新しいお店を作った時、出来るだけしたくないのが『競合』だった。
例えばコーヒー
周りにコーヒーを出す店があるのに、僕らがやってしまっては、以前からあるお店の機会損失になってしまう。これは本末転倒...かなと。
お互いに餅は餅屋でありたい。共存である。
そこで近隣のカフェに出前メニューを作ってもらったのだ。
くとうてんのテーブルから電話で『出前』を依頼した。

結局のところ、1店舗としか連携ができなかったが、ほかのケーキ屋さん、和菓子屋さんなどなどとやってみたかった。

出前サービスを連携してくれたお店は、今弘前で新たなチャレンジをしています→ Ripen

まだまだコラボレーションしたかった人がたくさんいた。

やってみると、次から次に、次の問題が出てくる。
その問題を柔軟に楽しめるなら、お店は実験場になると思う。

一年間、くとうてんをありがとうございました。

くとうてんは、僕らの一年間と言う作品でした。
次なる字と図の一歩にぜひ、ご期待ください。

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うちの猫のオヤツが豪華になります