【ラグビーワールドカップ】準決勝・王者を完膚なきまでに叩きのめしたイングランド

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イングランドの強さがただ際立ったラグビーワールドカップの準決勝、イングランドvsニュージーランド(以下、NZ)戦。
スタジアムから新横浜駅までの道のり。
Swing Lowsを歌い、美酒に酔いしれるイングランドサポーターを目にして興奮冷めやらぬ中、頭の中で試合を反芻していました。

まず目についたのはイングランドの自信を持って戦略を遂行する姿勢。プレーに迷いがなく、ただそこには周到な工夫と準備が施されていました。

いつもなら密集サイドをイングランドが誇るFW8人の重戦車を縦に縦に突っ込ませてじりじりと前進していきます。ただ、この日は縦へ行くと見せかけて細かく横にパスを出してズラして突っ込ませる、後ろのバックスに預けて一気に外へ展開するなど縦だけでなく横への揺さぶりが見られました。
またセットピースのラインアウトは相手トライに繋がったミス以外はほぼ満点の出来。フェイクの動きが多彩。観戦していても誰に合わせるのか、全く分からず面白かった。スティールを狙うNZのジャンパーはほとんど無力化していました。
このほぼすべてのプレーにおいて完成度が高くミスが出ない。NZからすれば相手のプレーを止めることで精一杯。的を絞れず混乱に陥っていたことでしょう。

またディフェンス面においてもNZのお株を奪うターンオーバーの数を記録(結果的にターンオーバー数はNZ4に対して、イングランド15)。
また接点では激しくぶつかりボールに絡むことでNZお家芸のテンポの速い展開で一気の大外勝負をさせなかった。仮に大外へ展開できても湧き出るようなイングランドのディフェンスは最後は必ず数的優位を作ってラインの外へ追い出す、ターンオーバーする場面が見られました。後半におけるNZのグッドヒューやブリッジを2人3人がかりでライン外へ引っ張り出したシーンは印象的。そして極めつけはNZが誇る世界一走れるHOデーンコールズがライン際を疾走するシーン。イングランドの選手が食らいつき最後はジャッカルでペナルティを獲得。この時点でイングランド勝利を確信させるに十分なプレーでした。

なぜここまで歴然とした力の差があらわれたのか。

NZを神聖視することなく敬いこそすれ勝負になる相手として対等に見ていたイングランドの精神状態は充実。むしろ平常心を奪われたのはNZだったように思います。

試合前恒例のハカ。この日のイングランドはV字の隊形を取りハカを囲むような状態となり、スタジアムもざわつきました。ただ、これはパフォーマンスを含めての対応。
実は試合前の練習から心理状態が表れていたように思います。
試合前の練習時、NZはいつも以上に自主練習に時間を割いて全体練習はほとんどありませんでした(10分未満。いつもなら20分程度?)自主練習に任せたのは今日も普段と変わりなく、というメッセージにも受け取れました(逆説的にいつもと違う状態を生んだようにも思えますが)またいつもならギリギリまで練習に時間を割いているにもかかわらず今日は5分ほど早めに練習を切り上げ、日本代表と同様に整列した陣形で練習を後にしました。いつもなら個人個人思いのまま練習を引き上げているにもかかわらず。
いつもと違う雰囲気を醸し出していたNZに対してイングランドは黙々といつもの練習タスクをこなしてギリギリまで練習に時間を充てていました。対戦相手がどこでも最後に引き上げるのはイングランドにとってはいつものこと。

通常なら挑戦者が格上相手に気を衒った戦い方や心理戦を仕掛けるもの。この日は逆に挑戦者のイングランドが普段通り、王者のNZがいつもと異なる空気を作り出そうとしていました。
イングランドの普段と変わらないルーティンを見て、これまでやってきたことに対する自信を感じ取れました。既にこの時点でNZを特別視することなく、戦う土俵に対等に立っていたことになります。
もしかしたら、この時点で実は王者はイングランドで挑戦者がNZの立場になっていたのではないかとさえ今となっては思います。

これまでやってきた練習の量と質。
それは相当にハードなものだったと思います。その先に得られる揺るぎない自信。そして試合に挑むにあたり、熱することもなく冷めることもなく適度な精神状態で挑むこと。
エディジョーンズはそれらを用意周到に2年半取り組んでこの日を迎えたことと思います。

イングランド、本当に天晴れでした。
おめでとうございます!決勝戦での活躍も期待しています!

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