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お正月の家族会議の続きを。家族信託の紹介も兼ねて。

1.はじめに(お正月の家族会議を終えると)

 正月やお盆などの大型連休が明けると、一般の方からの不動産の査定や売却の相談が増える傾向にあります。親族で集まる機会があるため、親の介護や自宅の扱いについて話し合う時間を設けることが多いのです。以下では、実家周辺の空き家の状況、親の意思能力の低下による対策の遅れ、そして家族信託に関する話をしたいと思います。


2.実家に帰るたびに目にする空き家と空き地の増加

 40年前の小学生時代の通学路や遊び場だった学区を歩くと、空き家のような雰囲気や手付かずの状態の家屋、売れ残っている空き地が目につきます。新しい住宅に建て替えられたところもあれば、昔の面影が点在する場所もあります。これらの古い住宅には、高齢になった私たちの親世代が老夫婦や単身で暮らしている場合が多いように感じます。 実家近くの商店街も活気がある方ですが、かつての賑わいは失われています。空き店舗や空き地が点在し、不動産市場の停滞を引き起こしています。 空き家問題への対策として、空き家バンクの活用やリノベーション支援策が強化されています。

 これらの取り組みにより、空き家をゲストハウス、カフェ、特産品店として活用し、新たな文化的魅力と地域経済の活性化が図られています。 しかしながら、これらのアイデアが「好立地」で実現できるとしても、売れない、貸せない状態の物件では、事実上手を付けられない状況になってしまいます。

3.意思能力と認知症について

 認知症患者の増加は、家族にとってはもちろん、不動産流通や商店街を含むコミュニティの維持にも影響を与えています。特に高齢となった不動産所有者の意思能力の不確かさが、所有不動産の適切な管理を困難にし、結果的に空き家問題の悪化を招いています。

 ニッセイ基礎研究所によると、認知症高齢者の推定は、2012年に462万人、2025年には675人~730万人、およそ5人に一人が認知症となることが、平成29年版高齢者白書や内閣府、厚生労働省等で公表されているとのことです。


 認知症は記憶、思考、判断力、言語能力の障害を伴う脳の疾患です。主にアルツハイマー病や脳血管障害が原因で、日常生活の自立が困難になります。

 「意思能力の不確かさが原因で」と述べましたが、これは民法や成年後見制度と関連しています。民法第3条の2では、意思能力がないと判断された場合、法律行為は無効とされます。また、成年後見制度では、意思能力が不十分な人に対して後見人が任命され、財産管理や日常生活のサポートを行います。しかし、後見人の選定には時間がかかることや、家族間の対立が課題となる場合もあります。

4.家族信託について

 2000年代後半から日本で注目されている家族信託は、高齢者が自己の財産を信頼できる家族、例えば子などに託し、その家族が財産を管理する信託の形態です。 家族信託の認知度は高まっていますが、法律用語が絡むと理解が難しくなることもあります。しかし、意思能力が不確かな高齢者が増える現代において、家族信託の重要性は高まっています。これは不動産の処理だけでなく、高齢者の生活安定や相続問題の簡素化に寄与します。例えば、意思能力を有するうちに親が信託契約を締結し、認知症を患う親が所有する不動産を子が管理することで、親の認知症が進行しても適切に不動産管理を行うことができます。
 
 信託契約は、委託者である親の意思能力を確認した上で締結され、司法書士の役割が重要です。また、契約前の家族間の話し合いはトラブルを防ぐためにも必要です。

5.最後に(家族会議をやりっぱなしにせずに)

 今日お伝えしたかったことは、年末年始に兄弟で親の不動産の扱いを話し合ったとしても、結論が得られなかった場合、親の意思能力があるうちは家族信託という選択肢も考えられるので、まずはその情報を知り、調べることで、話し合いの流れを続けることが重要だということでした。
 お正月早々から様々な出来事が起きています。日々を大切に過ごしたいと思いまして、書いてみました。


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