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野良猫の話

週に何度か顔を合わせるのを繰り返していると、野良猫に対して情が移ってしまう。
子猫の時から知ってるやつだと尚更だ。
私は、同じ場所の系譜に対して、もう何度もそれを繰り返している。

今回の猫は、あそこの生態系における完成体の様な雰囲気すらある。
デカくて毛並みも良く、見るからに筋肉質だ。泰然自若な振る舞いをする猫で、人が近くにいる程度では逃げない。ウザそうにする程度だ。
もうすぐ2歳だと思うのだが、未だに成猫ではないというのはピンと来ない。あいつが去年の夏周りにあそこで形成していたのは、ライオンの群れのようなハーレムであり、そんなの1歳過ぎの猫がボスとして君臨するものなのかと驚かされた。猫の数は多い場所なんだけど、常駐している猫の中にあいつ以外でオスはいなかった。
思えば何世代か前から、あそこのコミュニティでは、オスのボス猫が子猫の面倒を見る様子が散見された。今のあいつもまさに、先代のボス猫に世話されていた。その頃は特徴的な模様以外に目立つところは無かったのだが、1歳を迎えた辺りで驚くほどデカくなった。
それが今や、ああいった形の集団として完成されたのかもしれない。今回の繁殖期で、メス猫を見かけなくなってしまったが。

再会は約1ヶ月ぶりだった。
心配していた理由は2つあって、1つは天候が酷かったこと。いくら台風や厳冬を越した猫とはいえ、短期間でのあの気温差は経験がないだろうから心配していた。
もう1つは、これは想像の域を出ないのだが、おそらくあの地域で、意識してかしないでか動物の駆除を試みた輩がいたこと。見かけなくなる直前のころ、そこらの道端に惣菜が捨てられていた。毎日のように。スーパーやコンビニで売られているようなのが、封だけ開けられ特に食いかけではない様子で放り投げられているのである。
あそこらの猫は賢いのか、食われた気配もまた感たことは無かったけれど、どうしたって土に染み込んだりするわけじゃないですか。だから、結構心配していた。人の家の敷地かとても微妙な所なので、何を出来るわけでもなかった。
しかし彼は、そんな心配を嘲笑うかのように、いなくなる前よりも健康に見える感じになって帰ってきた。

野良とは思えない不思議な白さ


再会できて本当によかった。
どうやら覚えてくれていたのか、それまでと何も変わらない反応をされた。
これからも、可能な限り元気で、あの傲岸不遜な振る舞いを見せて欲しいと思う。

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