M-1グランプリへの道〜きれそうな私の8ヶ月〜
「M-1グランプリ、出てみません?」
この一言がきっかけで思わぬ体験をすることになった。
事の発端は、私がTwitterでM-1グランプリの感想を呟いていたこと。
これを見た会社の同僚Dさん(男性)が私にその賞レースに出てみないかと、声をかけてきたのだ。
正直、最初は戸惑いもあったし、まず頭の中にYesと回答する発想が全くなかった。
でもよくよく考えれば在宅環境で時間を持て余してるし、人生でこんなチャンス二度とないだろうと思い、その誘いに乗ってみることにした、
ことが運の尽きだった。
最初に声をかけてもらった1月初旬から一次予選を受けた8月末までの8ヶ月間、結果的に得るものはすごく大きかったし、芸人さんへのリスペクト度がただただ増したことは間違いない。
しかし、芸人を目指すわけではない自分にとって、好奇心で乗っかったM-1への道は相当厳しいものだった。
まず、「会社の同僚」から「漫才の相方」に関係性が発展したDさん、彼と方向性の違いが目立った。
バンドやお笑いコンビが解散する理由としてよく聞く「方向性の違い」。これはあながち建前ではないことが自分の中で立証された。(夫婦の離婚もほぼこれが原因ではないかと思う。)
お笑いでいう「方向性」は、(個人的な見解として)要素分解すると「笑いのツボ」「目指すべきお笑いの種類」「相方を尊敬できるかどうか」の3つに分かれると思っているが、Dさんとは何1つこれが合わなかった。
というか、ぶっけちゃけていうとDさんのことを面白いと思ったことが1ミクロもなかった。ミリじゃないよ、ミクロの世界だよ。
よいしょ。(自分のことを棚に上げてる音です)
もう二度とお笑いをやることはないのだろうけど、もし今後何かの間違いでやることがあれば、その時は自分とツボがあって、互いのことを心底面白いと思い合える人と組もうと誓った。(Dさんごめんなさい、、でも誘ってくれたことは本当に感謝してます)
次に、0からネタを創出することが、ありえないくらい難しかった。
しかも初心者あるあるの「元々存在している型をなぞりながら、オリジナリティあるお笑いやるっしょ!温故知新〜!」と何故かレベルの高いことを考えてしまい、その考えが余計自分を苦しめることになった。
ピカソはデッサン力があったから抽象画に振り切れた。デッサン力のないピカソの抽象画は誰の心にも響かない。
改めて基礎力の大事さを学んだと同時に、芸人さんが芸歴10年目でも「若手」と言われる理由が理解できた。基礎の知識、構成力、脚本力、技術力を習得することは、数ヶ月でどうにかなる話ではない。
とまあ、こんな厳しい壁に何度もぶつかりながらも、冒頭申した「得ることが大きい」側面があったのも確かだ。
私たちは素人であることの負い目を感じて、自分たちなりにできる精一杯の努力はやろうとした。
素人に一番欠けているもの、それは「舞台に立つ経験」じゃないか?
その仮説のもと、素人でも出れる小さな大会に2回ほど応募し、実際に人前で漫才をやってみた。(大きい規模だと300人キャパの会場で、同時にYoutubeの生配信もあった。)
結果、ダダずべりで笑いが起きることはなかったが、そこで人前に立って表現するという貴重な経験をしたことで、以前よりも人と話す時に自信がついた気がする。
この経験のおかげでM-1本番でも終始噛まずに最後までネタをやり切ることができた。しかも、M-1の一次予選に来る客は真の笑い好きであり、笑いに来る気満々なので、何をやってもゲラゲラと笑ってくれる。
一次予選は通過しなかったものの、最後の最後で舞台に立って人を笑わすことができた時、笑いの本質を思い出した。
「目の前の人をとにかく笑わす。」これが笑いの本質だ。
ん?IQ3かな?
と思ったそこのあなた、もうちょっと説明聞いてくださいな。
私たちは賞レースに気を取られすぎて、完全に本質を見失っていたのだ。
大事なことはとにかくどんな方法であれ、目の前の人を笑わして喜ばせたり、幸せな気分にさせること。これが本来のお笑いの目的なのだ。
何故自分が幼少期からお笑いが好きだったのか、落ち込んだ時にお笑いを見ていたのか。
そして何故今回のM-1の誘いに乗っかろうと思ったのか。
シンプルに幸せになりたいし、幸せにしたかったのだ。
テレビに出ている人気の芸人さんは、飛び抜けてセンスがあるのかもしれない、頭が良いのかもしれない、運が良いのかもしれない、キャラが濃いのかもしれない。
でも何よりも笑いを通じて目の前の人を幸せな気持ちにさせることができるからこそ多くの人に求められ、結果としてテレビに出演できているのだと思う。
偉そうなことを言っておりますけども、苦しみながらも、そんな大事なことを学んだM-1グランプリだった。
歯切れの悪いオチやけども、この辺でやめさせてもらいます。
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