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やばい~!迷った~!出られない~!助けて~!死ぬ~~!!

今朝部屋に飛び込んできたハチ君が困っていた。

カーテンのトラップにはまったのだ。

可哀想に。

ちょっと場所を移動すれば助かるのに。

それが分からないのだ。

周りが見えていないのだ。

助けようと手を伸ばせば慌ててあちこちの壁に体当たり。

きゃ~~!こ ろ さ れ る~~~!!

冷静に、冷静に、冷静に。

こういうことはハチ君に限らず誰にでもある。

ある日突然なんの前触れもなく僕達は小さなトラブルに見舞われる。

小さくても焦ると大きく見えるトラブル。

慌てれば慌てるほど、誤魔化せば誤魔化すほど事態が複雑になって行くトラブル。

あぁトラブル。

冷静に、冷静に、冷静に。

頭を切り替えて、考え方を変えれば助かるのに。

こんな事があった。

アートフェスティバルでカザフスタンという国に行った時の話。

会場でのステージの建て込みの作業中、光り絵を行う2m×5mのボードを覆う大きな暗幕を待っていた。

到着が遅いのでスタッフのMちゃんはヤキモキしている。

「おっそいな~。大丈夫かな~。ちゃんと完全遮幕用意できたかな~」

光り絵に使う特殊キャンバスはセッティング中に大量の光りを浴びているので全体が発光している。

その発光を落ち着かせるために全体を光りを絶対通さない暗幕が必要なのだ。

そして2時間程したころ、暗幕を持ってアートイベントを手伝っている若いアーティストのスタッフが現れた。

「きゃ~~!」

持ってきたのは乳白色のしかも半透明の薄い布だった。

これではダメだ。

「あれだけしつこく説明したのに~~!」

Mちゃんは憤慨してスタッフ達に説明している。

布を持ってきたスタッフ達はカモノハシの顔になってキョトンとしている。

事態のヤバさを理解していないのだ。

笑うしかない。

ライブ当日の事だから今から用意できるのだろうか。。

あちこち電話している様だったが結局無いらしい。

で、家庭用アルミホイルを大量に買ってきてセロテープでつなぎ合わせて2m×5mの暗幕の後ろに貼る事になった。

そしてみんなで長い時間をかけてアルミホイル暗幕を作った。

でもダメ。アルミホイルは少しだが光りを通すのだ。

2重にすれば大丈夫かもね。

そして2重にして試すと少しはマシになったがセロテープで張り合わせた部分が鉄格子の様に全体に浮かび上がっている。

冷静に、冷静に、冷静に。

スタッフ達は笑ってないスマイルバッチの様な顔でこっちを見ている。

「ダメ?」

ダメだが、ガムテープを全面に貼ろうと言い出していたので

「うん、これでいいんじゃない。頑張ったね~~。」と僕は極上の笑顔でねぎらった。

ガムテープなんてやり出したらシワクチャになったりアルミホイルが切れたりと新たな問題を引き起こすに決まっている。

舞台に立つ演者というものは常に完璧を目指す。

基本的に僕もそうだがここは日本ではない。

何度も何度も海外でこの手のトラブルは経験してきた。

だから知っている。

日本にいる様な感覚で完璧を目指すと軋轢が生じる。

スタッフや業者任せにしないで一緒に作業をするのだ。

そして何事にも寛容に問題を処理する。

寛容になってある程度の問題を無視するのは素晴らしい解決法なのだ。

頭を切り替えよう。

考えていた絵を変えればいい。

鉄格子画面が消えるまで文字かなんか書いてやり過ごそう。

カモノハシ君達は僕の笑顔ではホッとして幸せそうな顔をしていた。

そして彼らとはとても仲良くなった。

なぜならライブの終わった後、彼らが僕の所にやってきて楽しく飲んだから。

連帯感が生まれたのだ。

冷静に、冷静に、冷静に。

トラブルはチャンスの卵だ。蝶の前のサナギだ。

うまく乗り越えれば幸せをもたらす。

でもこっちに100%非があった場合はどうなの?

海外なら無視。基本無視。ちょっとだけ謝るけど基本無視。

外国ではトラブルはあって当たりませだから。

それに僕は外人だし。

日本では?

これはもうひたすら謝る。担当者の顔をお見るたび謝る。しつこい様に謝る。

他にある?

最後まで読んで頂きありがとうございました。



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