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浅生鴨さんの著作は素晴らしいということを言いたい

三省堂書店札幌店で、浅生鴨さんの本が平積みされている。

スゴい。本気だ。道内で浅生鴨さんの平積みを見かけること自体少ない。

浅生鴨さんの作品、どれも素晴らしいんですよ。声を大にして言いたい、という気持ちだけはいつも心の中にある。

三省堂書店札幌店のフェアが嬉しくて、読んだ順に思い出してみた。

1.『伴走者』

私のファースト鴨。当初、よくできた「いい話」「感動物語」なんだろうな、くらいの思い込みでなかなか手が伸びなかった。読んでみてビックリした。全然違う、こんなの読んだことない。「伴走者」という存在、パラスポーツの実態、競技者の人間味、世界の見え方。ズバリ名作でしょう。

文庫化されており、こちらの解説は『熱源』で直木賞を受賞した川越宗一さんが書かれている。

川越さんも、解説の中で浅生鴨さんのファンを公言している。同業者から一目置かれる作家さん、音楽家ならミュージシャンズミュージシャンのような存在なのかもしれない。

そうだ、私の紹介よりこちらの記事を!



2.『雑文御免』

『ネコノス』初の書籍。文学フリマ用に印刷したものを、なぜか突然単独で稚内に売りに来た。そりゃ稚内で買ったさ。

エッセイや短文、掌編小説など、様々な媒体に書かれた文章を集めてまとめたもの。バカバカしい短文があれば、心に刺さる言葉、熱い気持ちを秘めたやさしい文章があり、通して読むと、次第に浅生鴨という人を詳しく知った気分になる。2冊目にこの本を読めたのは、良かったと思う。「創猫記」が楽しい。


3.『うっかり失敬』

『雑文御免』に納まり切らなかった文章を分冊としたもの。『伴走者』に関するエピソードや自問自答するようなエッセイ、その合間にくだらない迷言がちりばめられていて、ずっと読んでいられる。実験小説「ルイス・カナンの誤訳」で脳がマヒ。

私の紹介では心許ないので、ちゃんとした方の紹介もご覧ください。



4.『どこでもない場所』

最初に読むならどれがおすすめかと聞かれたら、『伴走者』とこちらで悩む。たぶん浅生鴨さんにしか書けない、珠玉のエッセイ。小説っぽいエッセイ。どうしてそんな珍しい経験ばかりなのか。普通のことのはずなのに、どうしてそんなに面白くなるのか。読み終えるのがもったいなく感じた。深く鴨沼にはまったことを自覚した1冊。

こちらも私の紹介だけではなく、ちゃんとした方の紹介をご覧ください。


5.『猫たちの色メガネ』

短編小説集。それぞれの短編のどこかに猫が出現する。明確な「オチ」がないことに少し戸惑うが、次第にそれが心地よくなっていく。日常にふと奇妙さが入り込み、わけのわからない世界へとハマっていく。この世界にハマることが出来たら、そこは沼であります。




6.『アグニオン』

本格長編SFであり、少年の成長物語。個人的に、SFには苦手意識があったのだが、この本は読めた。面白かったのだ。SF音痴の私が面白いと感じたのだから、間違いない。たぶん。




7.『二・二六 HUMAN LOST 人間失格』

二・二六事件をモチーフにした中編SF小説。なんらか別の作家さんとのコラボ的な企画だったと思うが、この本だけできちんと完結しているし、この本だけでしっかり面白い。おじさんたちがカッコいい。


8.『中のひとなどいない』

たぶん著者の最初の単行本。NHK_PR1号名義で出版され、後に浅生鴨名義で文庫化。絶版状態のためやむを得ず古書で入手したが、これが素晴らしいのよ。公式ツイッター担当時のエピソードを、エッセイと小説の中間のようなスタイルで、おもしろおかしく、切なく力強く語っている。復刊を切望する!



9.『だから僕は、ググらない。』

ビジネス書を出版すると聞いて驚いた。ビジネス書なのに、エッセイっぽくて、どことなく小説っぽい感じもして、読み心地がよい。子どものころってそういう発想していたよな、などと思い出しながら、なかなかそこまでぶっ飛べないよと唸らせられる。



10.『あざらしのひと』

たぶん、いちばん気軽に読める1冊。集中力がなかったり、心が落ち着かなかったりして、他の本が読めないようなときでもサラッといける、優しいおかゆのような本。おかゆって、元気なときでもおいしい、そういう本。



11.『ねこかもいぬかも』

あ、まだ読んでいなかった。うっかり、失敬!



12.『すべては一度きり』

最新の短編小説集。日常が奇妙にねじれていったり、ファンタジーやSF、少年もの、風刺、ちょっとゾクッとしたりしんみりしたり、そのバラエティーの幅広さに驚く。毎週2本の新作短編小説を計300本連載するという、恐ろしい企画から誕生した1冊目。頭の中に映像や音、においが広がるような表現が素敵で、「ラジオドラマに」という感想ツイートを複数見かけたが、それも納得である。良いよ、これ。


13.『ぼくらは嘘でつながっている。』

最新刊。嘘つきが嘘について語る体で書かれた本であり、冒頭から嘘だらけで煙に巻かれる。しかし、読み進めるほどに書き手の誠実さを感じ、優しさにあふれた気持ちになるのは何故なのか。明確な言葉は引用されていないが、哲学者の思想をしっかりと感じる。難しい哲学書を読むより、近代哲学の本質を感じられる。知らんけど。

そして、これは浅生鴨さんの文芸論でもある。あるのですよ。たぶん。
そこが私のコーフンポイント。


ああ、これ、自分の備忘録だな。

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