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イメージの月

朝ドラ『カモカモ毎日がエブリデイ』、間違えました、『カムカムエブリバディ』から目が離せない。

先週~今週は激動だった。いろいろ揺さぶられた。NHKプラスでもう一度おさらいしている。

三世代にわたってヒロインが変わる、いまはその二世代目「るい編」である。重要なシーンで月が登場する。「ひなたの道を歩こう」がヒロインの共通したセリフとなっているところから、今はまだひなたに至る夜明け前であることの象徴なんだな、などと想像している。

ヒロイン「るい」の伴侶は「ジョー(錠一郎)」という。名字の「大月」は、戦争孤児であったジョーが保護者の定一(世良公則)につけてもらったものである。ジョーが定一と心を通わせたときに見た満月が、その由来だ。今週、一度破綻したヒロインとジョーの関係が修復に向うシーンでは、ラジオから「あの日ローマで眺めた月が、今日は都の空照らす」。結婚後に始めた商売、回転焼きは見た目が「お月さんみたい」(ジョー)。そして「大月」の焼き印。

劇中の架空映画の台詞「暗闇でしか見えぬものがある、暗闇でしか聞こえぬ歌がある」は、月夜のイメージと重なる。ジョーの悲痛な叫び「暗闇しかない」は、月の出ていない夜。ヒロインが月ということだろうか。

とにかく月のモチーフが満載なのである。


そして、月のイメージが出てくるたびに、背筋がザワっとしている。昨年暮れに小田雅久仁著『残月記』を読んだ残像が、強烈に残っているのだ。

挿絵のない本なので、文字から描いたイメージにしか過ぎないのだが、ドラマで大写しになった満月がそのイメージと重なって、ヒヤッとした。

『残月記』は、月をモチーフにした、幻想的な小説集(全三編)である。ミステリー要素もあるが、話がどこに展開していくか全くわからない緊張感がある。そして3つの短~中編とも、月の存在が強烈なのだ。書評では表題作の評価が高いようだが、わたしの印象に強く残っているは一話目の「そして月がふりかえる」である。ネタバレになってしまうので詳しい内容は伏せるが、奇妙でぶっ飛んだ展開、強烈な月のイメージが焼き付いている。

よりによって、この主人公の名字が「おおつき(大槻)」で、幼少時から月の「視線」を感じて育ったのだ。もう、朝ドラの作者もこれを読んでいるのではないかと、いろいろ妄想してしまう。


月は夜。やさしい光と闇。不穏さ。『残月記』のおかげで月をより一層怪しいものに感じてしまうわたしは、そのフィルターでしかドラマを見ている。これはこれで、悪くない。

怖いもの見たさという言葉がある。ドラマの中での月から、目が離せない。


それにしても、俳優さんの演技、演出、ストーリー、どれも素晴らしいわあ。

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