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【傍聴報告】税金ムダ使いの都構想パンフレットを許すな! 松井一郎へ6,000万円の賠償を求める裁判

【控訴審 第2回期日】
2023年4月19日(水) 14:00
大阪高等裁判所 202号大法廷

編集部 朴偕泰

 大阪市を廃止して特別区を設置する統治機構改革構想、通称「大阪都構想」。実はこの2回目の住民投票で、悪質な世論誘導が行われていた。問題に上がっているのは、市内に全戸配布された住民説明用のパンフレットである。

問題となっているパンフレット

 このパンフレットは、「都構想」について住民の理解を促進し、投票の際の判断材料になるよう制作された。しかしそこには「成長する大阪」としてIRやリニア中央新幹線など、都構想とは無関係な内容が記載されていた。また「都構想」実行後の大阪の財政見通しでは、計算の基礎となる統計において、経済効果を過大にアピールするための恣意的な数字の選択が見られた。 このように、市が公金を投じて制作していながらも、明らかな「都構想賛成」への偏りがあったのだ。原告団の大阪市民は立ち上がり、松井一郎大阪市長と手向健二副首都推進局長(当時)に損害賠償請求を行う訴訟を始めた。原告はパンフレットの作成に使った公金、6千万円余を返金するよう求めている。

 そして2月3日(金)、大阪高等裁判所の202号大法廷にて、一回目の口頭弁論が行われた。裁判と報告集会の様子を詳報する。


スライドで住民自治を問う

 13:30には抽選券が配布されたが、無事全員が傍聴することができた。
最終的に67人の傍聴人が訪れた。
 裁判では原告団の山口弁護士が口頭弁論を行なった。プロジェクターを使い、スクリーンにスライドを映し出していた。法廷の照明は落とされ、傍聴人の全視線はスクリーンに注がれた。スライドでは訴訟の要旨と、原判決の誤りを説明していた。山口弁護士は病院を例えに出して、「治療の副作用やデメリットを知らなければ病人は適切な判断ができないので、医者には説明する義務がある。住民投票も同じで、市は住民に対して「都構想」のデメリットも説明する義務がある」と訴えた。被告の大阪市側は、原告の訴えを聞くこともせず、下を向いていた。


報告集会

 終了後、報告集会が裁判所横の弁護士会館にて行われた。傍聴人の多くが参加し、耳を傾けた。始めに、原告団の3人の弁護士がマイクを握り、裁判について振り返ったのち、参加者からの質疑応答が行われた。

質問に答える原告団の弁護士


 参加者から「【中立・公平】が書いてあるかないかではなく、書いていなくてもそれを念頭に置いた判決を出してほしい」

 これは裁判の重要な争点の一つだった。大都市法7条2項では、住民に対して〈分かりやすい説明〉をすることを行政側に求めている。一審判決では、〈分かりやすい説明〉に中立・公正という縛りはないとしたが、大都市法は法的拘束力のない住民投票条例とは異なる。同法は、住民投票の結果で賛成多数となれば特別区を設置しなければならない。つまり法的拘束力のある国民投票法と同じ仕組みであり、同様の解釈がされるべきなのだ。
 そして国民投票法では、『説明に関する記載等については客観的かつ中立的に行う』ことと決められている。よってパンフレットに偏った内容を掲載するのは違法となる。

 この質問に対して弁護士からは、「法律家にとって文言は大事だ。書いてあるか、書いていないか、その違いは何か。そうやって立法者の意志を解釈する。しかし本件では「住民自治」というルールは動かないのだから、基本理念に合うように(中立・客観的でないといけないと)解釈すべきだ。本件においては、文言の違いは大きな問題ではない」と回答があった。


 報告会の終盤では、裁判を傍聴した立憲民主党所属の山田けんた府議会議員からも挨拶があり、自党の国政での責任を鋭く指摘した。

山田けんた府議


山田「政治の責任も大きいと思います。そもそも(裁判の争点になっている)大都市法を成立させたのは、民主党政権でありました。誤解していただきたくないのは、大阪の地方議員はみんな反対していました。けれども国会で維新さんに忖度されたのか、あの案が通されて、国民投票法にはある「中立・客観的」というのがなくなっている。内部からも声をあげていきたい」

 維新の暴走政治を止められるか。市民目線の判決が期待される。


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