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【ウクライナ侵攻に揺れる世界】ドイツ・左翼党議員 「ロシア制裁で経済破綻」と政府批判

9月12日 「People's World」 (1938年設立されたアメリカ左派の全国的日刊ニュース・ネットサイト)
翻訳:脇浜義明

 ドイツ「左翼党」の元副議長ザーラ・ヴァーゲンクネヒトは、「政府が米国のロシア制裁に乗ってドイツに社会的・経済的惨事をもたらした」、と非難した。彼女はドイツの日刊紙「ユンゲ・ヴェルト」に投稿、「このままだとドイツ企業の3分の1が経営危機に陥り、今冬は頻繁な停電が国民生活に支障ときたす」とも書いている。
 また、ロベルト・ハーベック経済相について「エネルギー会社の要請に応じて燃料費値上げを承認し、燃料産業と武器産業の利益を擁護し、国民にツケを支払わせている」と批判。彼女は9月8日の連邦議会で、エネルギー供給国と経済戦争を始めた政府を「愚かな政府」と非難している。
 ヴァーゲンクネヒトの批判は続く。「交通信号がわが国を経済的破滅に導いている」。この「交通信号」とは、連合政権の社会民主党(赤)、自由民主党(黄色)、緑の党(緑)を指す。「プーチンに罰を与えるために、ドイツ国民の数百万世帯を貧窮に陥れ、産業を破滅に追い込み、実際にはロシア天然ガス供給大手企業ガスプロムに大儲けさせている」として、ハーベック経済相の辞任を求めた。

ロシア制裁反対は、「極右と同じ」ではない

 何人かの左翼党同志は、「ロシア侵攻に対する制裁は適正な処置だ」として、ヴァーゲンクネヒトに反対した。しかし彼女は負けずに「ヨーロッパ、特にドイツはロシアとのポーカーゲームでは手持ちの札が悪すぎる」、「中国が動き出すのを待つべきで、それまで賭け金を競り合うのは狂気の沙汰だ」と主張。「制裁を止め、交渉による解決を呼びかけると、『ロシアのスパイだ!』とレッテル貼りされる風潮が存在する」と指摘した。
 彼女は、今の左派政権に対して疑問や批判をぶつけた。「『ロシアへの制裁を止めよ』と要求すると、『極右と同じだ』と非難される。ドイツ政治界が『和平を支持する右派と、戦争を支持する左派』という本末転倒を起こしている」と。さらに「緑の党」のアンナレーナ・ベアボック外務相と、「キリスト教民主同盟」のフリードリッヒ・メルツについて、「両者ともウクライナ戦争拡大の支持者である」と、批判した。
 また、ロシア擁護の極右党「ドイツのための選択肢」(AfD)に対しても、次のように批判した。「ベアボックやメルツの『アメリカ第一主義』支持は、ナチの『ドイツ唯一主義』を思い起こさせる。『ウクライナにファシストがいる』と指摘したからといってロシアの民族主義を支持することにはならない」のと同じである、と。AfDが彼女と同じようにロシア制裁に反対していることをとらえて、彼女を「極右支持者だ」と非難したことへの反論である。
 「極右が反政府デモを行っているときに、左翼も同じ内容の反政府デモを行うのはいかがなものか?」という議論に対しても、彼女は「そんなつまらない理由で正当な社会的抗議を行わないのは、敗北宣言をしているようなものだ」とキッパリ断言している。

写真:ドイツ「左翼党」のザーラ・ヴァーゲンクネヒト

(人民新聞11月5日号掲載)

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