見出し画像

【現地報告】迫るG7広島サミット 目的は米NATO軍事同盟強化と対中包囲網形成

G7広島サミットを問う市民のつどい実行委員会 久野 成章

ウクライナ戦争の激化とサミットの危ない関係

 5月19~20日にG7サミットの首脳会合が広島で開催される。私たちは現地で反対運動を行っている。首脳会合で主題となる、激化するウクライナとロシアの戦争は、3つの戦争の絡み合いだ。
 それは、①ロシア帝国主義の大ロシア主義に基づく、ウクライナ侵略戦争。②ウクライナ民衆の反侵略・民族独立・祖国防衛の戦争。③G7帝国主義・NATO軍事同盟による、ロシア弱体化戦争、である。
 広島サミットでは、このウクライナ支援を錦の御旗にして、NATOが軍事的にテコ入れする。原爆使用攻撃国の米国大統領と被爆国の日本国首相が、「ロシアに核使用をさせない」と、広島を最大限政治利用する。そしてG7の核武装(核抑止+拡大抑止〔核の槍〕)を正当化し、アジア・太平洋へのNATOの拡大・強化を正当化するものである。すなわち広島サミットは、軍事同盟強化のために、岸田大軍拡正当化のために、対中包囲網形成のためにあると言える。
 そこで私たちは、対抗スローガンを以下のように設定した。
●戦争も核兵器も原発も気候危機も性差別も解決できないG7を広島で終わらせよう!
●岸田首相は軍拡のために被爆地ヒロシマを政治利用するな!
●バイデン大統領は原爆無差別大量虐殺を謝罪せよ!
●岸田首相はアジア侵略・植民地支配を謝罪せよ!
●核武装国(米英仏印)首脳は広島に来るな!
●G7・NATO軍事同盟は核による脅し(=平和に対する罪)をやめよ!
●暴力に抵抗しているウクライナとロシアの市民に連帯し、ロシア軍撤退による即時停戦を!
●すべての戦時および日常の性暴力と性搾取を根絶しよう!

米・中対立の激化

 侵略戦争を繰り返してきた没落する帝国=米国は、中国が2049年(建国100周年)までに米国と並ぶ軍事大国になることを何としても阻止しよう、と躍起になっている。米国防総省のスタッフの一部には、早ければ2025年までに米中戦争が勃発することを予測するものがいる。
 この米国の危機感に忖度して生まれたのが、「台湾有事=日本有事」という故・安倍元首相の主張だ。日本の集団的自衛権発動で、米国の戦争に加担しようというのだ。しかし、「一つの中国」という米国や日本の建前からすれば、台湾問題は中国の内政問題であり、日米が介入してはいけない台湾の市民の選択の問題だ。何としても、東アジアの市民社会の連帯で米・中戦争を阻止しよう。

サミット本番の厳戒態勢とデモ規制の実態

 地元「中国新聞」に「ひろしまサミットまで何日」とのコラム欄がある。本稿を書いている今日4月26日は「あと24日」だそうだ。一昨日からは平和公園周辺にフェンス設置工事が始まった。マツダは昨年12月に、サミット開催時の前後一日を含む5連休を発表した。関連企業、流通も完全に止まり、その影響は全く異業種の分野まで波及した。
 私立の学校はもとより、公立の小中高校の休校も決まった。建前は各校長の判断ということだが、中心部以外の学校も給食が止まるということで、横並びに休校。東広島の広島大学等も対面授業を事実上停止し、オンライン授業を強制した。
 3月下旬には、広島市内外のいたるところに警視庁の車両を中心としたカマボコ車が配置されていた。広島駅新幹線口には、練馬や品川ナンバーの警察車両が張り付いていた。まさにサミット翼賛体制が完成しつつある。
 交通規制の実施期間は、5月18日から22日までの5日間。「交通量そのものを半減する」との方針だ。平和記念公園(原爆ドームを含む)へ立入制限し、園内の施設を5月18日正午から21日まで休館する。
 首脳とパートナーを別々の日程で観光させる、廿日市市の世界文化遺産・宮島では、島への入島制限を5月18日正午から20日14時まで設定する。「住民用識別証」を国から発行された市民以外は、入島できない。この期間の予約者はキャンセルを強制され、休業したホテルなどには休業補償すらなく、地元では不満が渦巻いている。
 さらに会場の広島プリンスホテル周辺も、通行許可証を持った住民以外は立ち入りできない。
 そもそも会場となるプリンスホテルの建っている場所、宇品港とは、軍都・広島の出撃基地であったところだ。日清戦争以来、朝鮮半島・中国大陸侵略の出撃拠点であったことを忘れてはならない。
 G7首脳たちは、このプリンスホテルから広島高速3号線で吉島に入り、そこから吉島通りを使って真っすぐ平和公園に入る。ところが、その吉島通りの南で、なんと中央分離帯が撤去されてしまったのだ。交通安全のためにあるはずの中央分離帯を破壊したのだ。車列を道路の真ん中に走らせて平和公園に乗り込もうというのだ。

G7首脳が乗り込む平和公園への吉島通りの中央分離帯を破壊した

 デモの規制については、広島中央署はデモ申請者に個別に対応して、その都度、次のように説明している。
 通常の中央署、広島県警の対応ではなく、警視庁から来ている役人の指示である。地元警察には、未だに首脳たちのコース・時間帯を知らされていない。それによると、5月18日正午から21日まで、東西南北周辺のデモを許可しない方針。北は城南通りから、南は国道2号線まで。東は、鯉城通りから、西は、舟入通りまで、というものだ。
 以上の警備当局の「お願い」に対して、各派の対応は規制線ギリギリのコースを申請させられたりしている。会場の広島プリンスホテルにできる限り近づくことを目的にしている団体も、かなり手前で止められている(宇品4丁目まで)。

1950年8月6日広島以来の弾圧体制

 GHQ占領下で起きた朝鮮戦争のさなかの1950年8月6日。原爆投下のちょうど5年後でもあったその日の広島では、いっさいの集会とデモが禁止された。
 日本共産党が所感派と国際派に大分裂している混乱の中で、日本人と朝鮮人の共産主義者、部落解放運動活動家らが広島駅前と福屋デパート前で瞬間的な非合法集会を決行したのである。その時以来の監視・弾圧体制が、サミット開催で敷かれている。

「G7広島サミットを問う市民のつどい」に結集しよう

 私たち「G7広島サミットを問う市民のつどい実行委員会」は、サミット一週間前の5月13日に屋内集会(500人規模)、5月14日に屋外集会とデモ(1000人規模)を設定している。ぜひ多くの参加をお願いしたい。詳細は画像チラシと、ブログ「G7サミットを問う市民のつどい」をご覧下さい。

(人民新聞 2023年5月5日号掲載)

【お願い】人民新聞は広告に頼らず新聞を運営しています。ですから、みなさまからのサポートが欠かせません。よりよい紙面づくりのために、100円からご協力お願いします。