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神紅堂書店
2016年1月9日 08:53
<作品イントロダクション>家族とも離散し一人きりで暮らす中年の理髪師が主人公は、ある日、奇妙なお客から一粒の球根をもらいます。裏庭に打ち捨てた球根は、いつの間にか芽を出し、つぼみを膨らませました。やがてそのつぼみがゆっくりと開くと、中から出てきたのは、かくも美しい女の小人・ホムンクルスだったのです.....というお話です。日常系ファンタジーにミステリーの要素を加えた短編小説。最後の
2016年1月7日 11:43
プロローグ世界に死があふれていた。ビルは無残にも崩れ落ちた。街並みは、どこからか放たれた業火で赤く染まった。街道のそこかしこで、玉突きを起こした車が乗り捨てられていた。信号機に激突したワゴン車から黒煙が上がっている。ポールは二つに折れ、信号機は赤いライトを灯らせたまま、道路の中央に転がっていた。眼前に広がるのは、もはや街ではなかった。廃墟と呼ぶのさえためらわれる。言うならば、それは『
2016年1月7日 17:57
1 鬱蒼とした森の中に、春の日差しが降り注いでいた。 木漏れ日を全身に浴びながら林道を進む。足を踏み出す度に、土の匂いがたちのぼる。空気にさえ、味があるのではないかと思うほど、濃縮された自然の息吹に全身を包まれている感じがした。 中之原町に引っ越しをしてから十日あまりが経った。かつて東京で暮らしたこともあったが、やはり自分には「適度な田舎」が合っているのだなと実感してい