神紅堂書店の短編小説

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記事

短編小説「裏庭のホムンクルス」

<作品イントロダクション>

家族とも離散し一人きりで暮らす中年の理髪師が主人公は、ある日、奇妙なお客から一粒の球根をもらいます。
裏庭に打ち捨てた球根は、いつの間にか芽を出し、つぼみを膨らませました。
やがてそのつぼみがゆっくりと開くと、中から出てきたのは、かくも美しい女の小人・ホムンクルスだったのです.....

というお話です。
日常系ファンタジーにミステリーの要素を加えた短編小説。
最後の

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短編小説「魔王」

プロローグ

世界に死があふれていた。

ビルは無残にも崩れ落ちた。街並みは、どこからか放たれた業火で赤く染まった。

街道のそこかしこで、玉突きを起こした車が乗り捨てられていた。信号機に激突したワゴン車から黒煙が上がっている。ポールは二つに折れ、信号機は赤いライトを灯らせたまま、道路の中央に転がっていた。
眼前に広がるのは、もはや街ではなかった。廃墟と呼ぶのさえためらわれる。言うならば、それは『

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短編小説「追憶のマーメイド」



 鬱蒼とした森の中に、春の日差しが降り注いでいた。

 木漏れ日を全身に浴びながら林道を進む。足を踏み出す度に、土

の匂いがたちのぼる。空気にさえ、味があるのではないかと思うほど、

濃縮された自然の息吹に全身を包まれている感じがした。

 中之原町に引っ越しをしてから十日あまりが経った。かつて東京で

暮らしたこともあったが、やはり自分には「適度な田舎」が合っている

のだなと実感してい

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