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親父が末期癌になって

晴天の霹靂とはあんな事を言うのだろう。

『余命は半年から1年。1年は持たないでしょう。』


4月の下旬のこと。1ヶ月ぶりに日本に戻って親に帰国の報告をした。『おかえりなさい、明日パパの検査結果出るんだけど来れる?血便が出てたんだって』

血便と聞いた時に『癌』の文字が、大穴で『痔』が頭に浮かんだ。でも大の病院嫌いの親父が病院に行くなんて相当体調悪かったんだろうなとも思った。

その時は今のこの現状は全く想像も出来なかったし、知らないところで時代は進んでるから今時癌なんてすぐ治るもんだと思っていた。

既に血液検査とCTだかMRIと胃カメラも全ての検査は終わっていて、後は病理検査の結果待ちだった。

病理検査とは組織の一部を採取し検査をしてその細胞が何なのかを調べる、言わば最後の検査。この結果によってこれからの方針が決まる。ただその前から病院に付き添っていた母の話だと先生の言い方は100%癌みたいな形で話をしている様子だったらしい。

診察室に入るとやたらと声のデカい先生が『病理検査の結果、やはり癌ですね』と一言。もうそこから家族3人ともあまり記憶が無い。淡々と検査結果を伝えてくれたが話の殆どは頭に入ってなかった。とりあえず覚えてるのは胃がんとGIST、肝臓に転移有り。よってステージは最悪の4。早急に抗がん剤をやった方がいいので来週また来てくれ。と

一通り地獄の結果発表が終わり診察室を後にしたが母親だけ部屋から出てこない、心ここに在らず、魂が抜けたような顔の親父を連れて少し離れた待合室の椅子に腰掛けたがまだ母親は出てこないのでなぜか心配になり親父をおいて診察室に戻った。その時告げられたのが冒頭の一言。

知り合いにリンパ癌のステージ4から復活して今ではバリバリ仕事をして元気にTVに出演したりしてる人がいるので親父もなんとかなるのかと淡く期待をしていたがどうやら期待される治療方法は既に無く、残り短い人生を悔いなく生きる他ないらしい。

これからの親父の闘病生活をサポートし少しでも苦痛が無いよう、悔いが残らぬよう最期息を引き取るその時まで寄り添う事が僕の最初で最後の親孝行で、今この瞬間に親孝行タイムに突入したのである。


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