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「採用基準」なんてアリンコ以下の幻想ですよ

こんにちは、リサリサです。都内で人事担当しています。現役人事の「裏」話をnoteに「遺言」としてまとめています。

今日は「採用基準」というお話しです。

この記事を読むと就活生の皆さんは「就活の面接ってなんでこんな感じなんだろう」という悩みが消えるかもしれません

そりゃ、面接じゃなくて「職務質問」だろ?

就活生の皆さんは違和感を感じませんでした? 「大学は?」「学部は?」「研究は?」「志望動機は?」 まるで職務質問のような面接。聞くだけ聞いてなにも教えてくれない面接官…
面接が職務質問に思える会社は「採用基準」に振り回されているからかもしれません。面接が職務質問の企業は明確な「採用基準」がありそれを確認しているんです。

もっというと「作業」に没頭していると思ってください。(かわいそう)

繰り広げられる「給料泥棒の日常」

人事を長くやっていると、会社の経営陣と雁首揃えて「わが社にとって必要な人材は?」とか「どういうやつが活躍しているんだ?」という議論が日本中、いや世界中で行われている。

「採用」とは、ビジネスの根幹。

ぶっちゃけた話し「採用」さえうまくいっていれば会社なんて経営者が多少無能でも問題ない。だからどこの企業も「優秀」な人材だけ採用できれば…という考えでいる。

しかし、実は「無駄」だというのが本日の結論です。説明します。

優秀な人材だけ欲しい経営者

有名な話しだが「パレートの法則」というのがある。

▶パレートの法則 例
・売上の8割は、全顧客の2割の客が買っている
・仕事の成果の8割は、実質費やした時間の2割

人事をやっている方ですと、特に営業メンバーは顕著では?

「会社の売り上げの8割は2割の優秀な社員が上げていて、残りを8割の社員がこなしている」ケースをよく見るでしょ?(ウチだけ?)

会社の経営陣はこれを「感覚」で知っているために、「2割の優秀な社員(のような)人だけ採用できないのか?」というのが人事のオーダーなのです。

そりゃそうだ…

働きアリの法則

日本の北海道大学の長谷川英祐さんは進化生物学の見地から詳しく研究している。

▶働きアリの法則 ※1
・働きアリのうち、よく働く2割のアリが8割の食料を集めてくる。
・働きアリのうち、本当に働いているのは全体の8割で、残りの2割のアリはサボっている。
・よく働いているアリと、普通に働いている(時々サボっている)アリと、ずっとサボっているアリの割合は、2:6:2になる。
・よく働いているアリ2割を間引くと、残りの8割の中の2割がよく働くアリになり、全体としてはまた2:6:2の分担になる。
・よく働いているアリだけを集めても、一部がサボりはじめ、やはり2:6:2に分かれる。
・サボっているアリだけを集めると、一部が働きだし、やはり2:6:2に分かれる。

人事を経験している人が「人事考課」をやると驚くほど、この働きアリの法則にあてはまると直感でわかるはず。

就活生でいえば学祭の準備やサークル活動を考えてもらうと熱心な人2割、普通の人6割、音信不通2割になっているはず。

私たちも、アリも人材の扱いにおいては「大差がない」と言えるだろう

※ちなみに「フリーライダー」(タダ乗り)という言葉があって給料泥棒はアリの世界にも存在するようです。

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どうすれば理想の組織に近づくのか【今のところ】

話しを戻すと、経営者のいう「優秀な人材」とはいったいどういうやつなのか?という議論ですが、たいていの場合これは「明確でない」ことが多い。もっというと、役員によって「優秀な社員」がちがうこともあってめちゃくちゃだ…

そこで決めたのが「ぜったい採用しない基準」

優秀な人は議論がわかれたのに、「ぜったい採用しない基準」はほぼ同じだった。アリでいうと働かない2割を採用しないという考え方。今後検討の余地はあるが、現時点での「最適解」だと思っている。

採用が変わる

「ぜったい採用しない基準」じつにシンプルで、面接官にも簡単に受け入れられた。

さらに大きな変化が起こった。面接のスタイルが変わったのだ。

面接を受けた人も、面接をやった人もなんとなく「職務質問」になりがちだと思いますが、「ぜったいに採用しない基準」を設けることで、決定的なダメでなければ、相手のいいところを探す面接に変わったのだ。

▶たとえば
1.この学生は元気がないけど、やっている勉強は〇〇部で通用する
2.この学生は全然勉強していないけど、元気はあるから〇〇部長ならば好きそうだな
3.元気ないし、学校の成績もパッとしないけど筆記試験の結果がいいな

といった具合。

結果として、学生からの評判も良くなり、会社も自部署にマッチした人材を採用できていることが結果として現れ始めた。

まとめ

・採用基準で「優秀な人」という定義は実はとっても難しい
・働きアリの法則は、驚くほど人間社会にも通じている
・採用する基準は明確でないので、「採用しない基準」を設けた
・採用しない基準以上の人には、マッチング機能が現れる
・フリーライダー対策含め今後も要検討

今日もどこかで「無駄な採用基準」設定が行われていることだろう。


※1:働きアリの法則

就職ネタです。採用担当者のリアルな視点を書き込みます。