見出し画像

真の探求者はプロではなくアマチュアに属する

芸能山城組というパフォーマンス集団をご存知でしょうか。その名前は知らなくても、世界的に有名なアニメ映画「AKIRA」の音楽を担当したと言えばピンと来る人もいるかもしれませんね。

私はこの芸能山城組が昔から大好きで、東京で行われたライブにも行った事があります。単にその音楽やパフォーマンスが好きというだけでなく、組頭の大橋力氏の思想に強く共感しているからでもあります。

芸能山城組はあえてプロではなくアマチュアとして活動する道を選んでいます。プロになると色々なしがらみに縛られて、本当にやりたい事や表現したい事ができなくなるため、組の結成以来、徹底してアマチュアリズムにこだわっているそうです。

芸能山城組は、芸能集団である以前に、遺伝子DNAに約束された人類本来のライフスタイルを模索し検証しようとする実験集団であり、“行動する文明批判”の一拠点です。

芸能山城組の文明批判の大きな特徴は、その対象とする西欧文明の最大の武器である科学技術を貪欲に摂取し、自家薬籠中のものとして、西欧近現代それ自体の攻略に活用するところにあります。教育者、ジャーナリスト、エンジニアそして学生と多彩なメンバーの中で、生命科学、脳科学、数理科学、心理学、情報工学などの諸分野で博士号をもつものが10名をこえます。これらの強力な文明科学研究を率いているのも、組頭・山城祥二こと科学者・大橋 力です。

プロになると色々なしがらみに縛られる

芸能活動だけでなく、人類のほぼ全ての分野に「プロのしがらみ問題」は当てはまります。例えば医療業界。世界にも類を見ないほど患者を薬漬けにする日本の医療の異常さにはプロの医師や研究者の一部は気がついているはずですが、医学会と製薬業界という大きなしがらみの構造の中に縛られている以上はその流れに飲まれてしまい、外部から何十年も問題が指摘されているのに改善される気配さえありません。

これは医師や政治家たちが悪意を持っているのではなく、問題の本質は「プロである」という構造そのものにあります。末端の医師たちはプロだから失職を恐れてこの構造に刃向かえず、また構造の上層部にいる者たちもこの構造の存在を前提として職業が成立しているために、自らこの構造を壊そうというところまでは行かないのでしょう。しかも子供時代から徹底して出る杭は打つ戦後教育に洗脳されているから余計に。

この構造を破壊してくれる救世主を待っていても永久に現れません。結局、患者側の一人一人が真の知恵を身につけて賢くなるしかないんですよね。権威者の話を鵜呑みにするのではなく、もちろん陰謀論に傾倒するでもなく、正確な情報を他の誰でもない自分自身の頭と手を使って調べる事に尽きます。

ヒュパティアの悲劇

人類最古の女性科学者とも称される古代エジプトのヒュパティアは、アレクサンドリア図書館に所蔵されていた人類の叡智をキリスト教の迫害から最後まで守ろうとしたために魔女として拉致され、惨殺されました。ヒュパティアを切り刻んだキリスト教徒はなぜそんな残酷な事ができたか。彼らは「魔女は見せしめのためにあえて惨殺しなければいけない」と妄信していたのだと思います。それを正義だと思い込んでいた。

これはそうするように仕向けた特定の悪意ある人間がいたのではなく、当時のキリスト教という「構造」がこの悲劇を生んだと言えます。キリスト教の上層部もまた、その構造を失うと権威と生活基盤も同時に失うために、歪んだキリスト教の構造を維持し続ける事にこだわり続けたのです。

つまりヒュパティアは、本質的には現代と変わらない「プロのしがらみ」の犠牲になったのだと言えます。人間社会のあらゆる争いや問題は、個々人の精神や気質ではなく「構造」に起因すると看破したのが、前回紹介した構造主義思想です。

アマチュア(amateur)という言葉の本来の意味は「愛好家」。言い換えれば「楽しむ人」です。プロのしがらみに縛られて楽しく無い人生を生きるより、仕事は素朴な畑仕事でもしながらアマチュアとして芸能山城組のように学問なり芸術なりに勤しむのが人類の理想型ではないかと私は思っています。


この記事が参加している募集

学問への愛を語ろう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?