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本当は怖くないフリーメイソン


友愛団体フリーメイソンリーが生まれた理由

中世ヨーロッパのキリスト教会は「キリスト教を信仰しない」というだけの理由で人を悪魔だと決めつけるような、狂気とも言える宗教となっていました。魔女狩りや地動説論者への迫害が横行したのもその頃です。
現代人から見れば完全な狂気ですが、キリスト教会の人々は心から正しい行いをしていると信じきっていました。これが宗教というものの恐ろしさですね。



その状況に嫌気がさし、もっと自由で平和的な信仰を望む人が水面下で増えていったのはごく自然なことです。

石工職人団体を起源とするフリーメイソンは、自由・平等・博愛を主んじていました。日本の神道とおなじく、特定の神を信仰するということもなく、あえて言うなら人の中にそれぞれある神、内在神信仰の団体です。
その抽象的な神のような存在のことを、フリーメイソンではSupreme Being=至高の存在と呼びます。

このフリーメイソンの自由と平等の考え方が、キリスト教にうんざりしていた人々の望みとがっちり噛み合い、瞬く間にフリーメイソンの賛同者は増えていきました。しかし表立って反キリスト教団体だとして活動すれば、当然のこと弾圧されます。目立たないようひっそりと拡大していきました。
「秘密結社」と言われる所以はここにあります。

やがて貴族たち上流階級層も取り込んで世界に台頭し、キリスト教をも恐れる必要がないほどの勢力となり、1717年、イギリスで正式に友愛団体フリーメイソンリーが結成されます。キリスト教側は当然面白くないので、フリーメイソンは悪魔崇拝の団体だという噂を流布します。これが「悪の秘密結社」と呼ばれるようになった経緯です。

当のフリーメイソン側は「それで?勝手に言ってれば?」といったところでしょうね。

事実上の反キリスト教団体であるため、フリーメイソンはユダヤ人の心も惹きつけました。ユダヤ人は1000年以上もの間、キリスト教徒から迫害されていたからです。

フリーメイソンと革命

1770年代後半、アメリカでは独立戦争が起きていました。イギリス(正式にはグレートブリテン王国)から渡ってきた植民地住民が、イギリスの支配と干渉を嫌い、自由を求めての革命でした。

革命が成功したのは、フリーメイソン会員の活躍が大きいです。
自由と平等の精神のもと、世界中に軍人、貴族、商人、政治家に多数の会員がおり、民衆の支持も厚かったフリーメイソンにとって、革命運動はそれほど難しいことではありません。

革命は成功して正式にアメリカ合衆国という国家を形作りました。アメリカ建国にフリーメイソンが大きく関わっているというのは別に陰謀でも都市伝説でもなんでもない、ただの歴史的事実です。
アメリカ建国の父ベンジャミン・フランクリン、初代大統領ジョージ・ワシントンももちろんフリーメイソン会員です。
ですから、アメリカの首都ワシントンを上から見るとフリーメイソンのシンボルマークになっているとか、ドル紙幣に"MASON"の文字が隠されていることなども、何も不思議なことではありません。

アメリカ独立戦争で軍事面で大きく貢献したのは、これもやはりフリーメイソン会員の軍人、ラファイエットです。ラファイエットは直後にフランスに渡り、フランス革命も成功させています。この双方の活躍によって、ラファイエットは「米仏の英雄」と呼ばれるようになりました。

フリーメイソンが悪の秘密結社だという古い情報を今だに信じ込んでいるのは日本人だけかもしれません。

現代日本のフリーメイソン

高須クリニックの高須院長は、2012年に自らフリーメイソン会員となり、いまは東京支部の幹部という位置にいるようです。入会した理由は「刺激を求めて」らしいです。これは本人自らがツイッターなどで度々発信していることです。

高須院長によれば、日本のフリーメイソン会員は約2000人。それもほとんどは在日米軍関係のアメリカ人であり、純日本人の会員は200人ほどだそうです。その高須院長などから伝わってくる話を聞く限りでは、どうも日本のフリーメイソンは仏教同様に形骸化しており、石工職人時代から伝わる儀式などを形式的に行うのみであり、活動らしい活動は特になにもしていないようです。高須院長は期待したような刺激がなくてがっかりしてたりしないんですかね。

なおネット上では鳩山由紀夫氏も会員だと言われていますが、高須院長によれば、彼は会員ではなく、フリーメイソンには常識人しか入れないので、もし鳩山氏が面接に来たら私が落とす、とのこと。

祖父である鳩山一郎氏が会員だった事から出てきた噂に過ぎないようです。フリーメイソン会員に世襲制はないみたいですね。なおフリーメイソンの思想を表す英語「Fraternity」を日本語で「友愛」と訳したのは鳩山一郎氏です。

イルミナティの実態は不明

日本のオカルト界隈では、フリーメイソンとともにイルミナティもよく取り上げられます。人間は人それぞれ考え方が違うので、フリーメイソン会員の中にも野心的なものがいてもおかしくはありません。

フリーメイソンの博愛精神をベースに政治的イデオロギーを持つ団体として1776年に設立されたイルミナティ。立案者は、ドイツ人のアダム・ヴァイスハウプトです。一介の大学教授にすぎなかったヴァイスハウプトは、お金も権力もなにもありませんでした。メンバーも、当初は自分がいた大学の学生のみ。政治結社と言うよりは小さなサークル活動のようなものです。

ヴァイスハウプトは英雄ラファイエットやフランクリンと接触し親交を深めていたと言われています。権力を得るための足がかりにしようとしたんでしょうか?

それなりに支持を集めることには成功し、詩人ゲーテも入会していました。しかし政治色を持っていたことに目をつけられ、1785年にバイエルン選帝侯によって解体を命じられます。実体組織としてのイルミナティはここで終わっています。

4年後のフランス革命の後、イエズス会の聖職者たちが「イルミナティとフリーメイソンが国家転覆を企てた悪の組織だ」と名指しで批判します。フリーメイソンは民衆から広く支持を集めていたのでイエズス会の批判もたいして広まることはありませんでした。

一方イルミナティの方は、それを知る人がごくわずかだったことと、実体がすでに存在しないがゆえに見事に都市伝説と化して、それが今に伝わっているようです。こういう経緯があるので、フリーメイソンとは違ってイルミナティは世界的にも「悪の秘密結社」のイメージが広く流布しており、「イルミナティ・カード」のようなゲームが作られたり、小説にも登場したりと大人気(?)です。

イルミナティが表向きに解体したように見せかけただけで、実はユダヤ資本などと繋がって支配者層に取り入っているのかどうか、そのあたりは不明です。

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