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マナーに訴えるのはかえって逆効果

多摩川河川敷などでバーベキュー客がごみを放置してボランティアが困っているそうです。

公園を管理する青梅市や河川敷を管理する国土交通省はごみを捨てず、持ち帰るよう呼びかける看板を設置しているが、効果はない。柴田さんも「拾った先から、ごみが捨てられる状況。看板を設置し、マナーを訴えても改善しない根深い問題」と頭を抱える。

これ、社会心理学の観点から言うと、このような訴え方はかえって逆効果になるようです。人間は社会性動物で、マジョリティ(多数派)がしている行動と同じ行動をしたいという潜在的欲求を持っているため、この場合、看板のメッセージや現場のごみだらけの状況によって「多くの人がごみを放置していく」という情報を見聞きすればするほど、人の心には「ごみを放置するのがマジョリティ」と錯覚した刷り込みが発生し、それと同じ行動を取りたいという潜在的欲求が生まれやすくなる。この欲求に抗えるのは一定以上の知性を持っている人に限られます。つまり必ずしも人間性やマナーだけの問題ではないんですよね。

直感的に「そんなはずないだろ」と思うかもしれませんが、これは社会心理学では定説で、大手企業は実際にこの心理を巧みに利用しています。例えば大手コンビニのトイレには「いつもきれいに使っていただいてありがとうございます」というメッセージが貼ってあります。これは「トイレを綺麗に使うのがマジョリティ」と利用者に刷り込む事が目的です。これによって実際にトイレを綺麗に使う人が増えます。

化粧品の宣伝などで「○%の人が高評価」というようなメッセージを見たこともあると思います。あれも同じ効果を狙ったものですね。このようなメッセージに影響されることはない、と多くの人は直感的には思うかもしれませんが、そういう人も潜在意識の領域ではしっかり影響されていて、売り上げに違いがあるというデータがあります。

ではこの多摩川の事例の場合、どのような看板を掲げればごみを放置する人が減るのか?

それは○○%の人がごみを持ち帰っていますと書く事です。

この○○に入る数値は、最初はとにかく多数派であることを示すためにハッタリでも「90%」などと書いておくと効果的でしょうね。そうすると「ごみを持ち帰る人の方がマジョリティ」というメッセージが利用客の潜在意識に刷り込まれます。
その横に、綺麗なバーベキュー場の写真やごみを持ち帰る人の写真を貼っておくとさらに効果が増すことが期待できます。そして「持ち帰らない人」の存在に直接的に言及する事は避けた方がいいです。

こうすることで実際にごみを持ち帰る人の方がマジョリティという事実が生まれ、その事実がさらに持ち帰る人を増やすと言う好循環に転換できるはずです。

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