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トランスのこと

この記事を見て、もしかしたら重要なことが知られていないのでは?と思ったので書くことにしました。

最近、ネットでトランスジェンダーをめぐる言説が入り乱れていて、性別違和を持つ身としてはちょっとしんどいことが多くなってきた。わかられてないことが多すぎると感じる。

トランスジェンダーの移行過程というか、性別変更の段階・順番としてこうなる(だいたい)(人によって前後する)
・生物的性に違和感を感じる人生を生きてきた
・性同一性障害の診断がつく(要:長期のカウンセリング)
・ホルモン治療を始める(声や体型が少しずつ変わる)
・外見を変える手術をする(トランス男性なら乳房切除、トランス女性なら豊胸・整形など)
・内性器を摘出する(精巣/卵巣・子宮)
・外性器を整形する(造膣/造陰茎)
下3つがSRS手術(性別適合手術)といいます。
今のところ日本では、内性器を摘出して、生殖機能がなくなれば今のところ戸籍の性別を変えられます。

女として見られたいトランス女性が、陰茎を何故残しているかというと、造膣するときに、体に穴を作って、そこに陰茎の皮をひっくり返していれるからです。穴って傷なので、治ろうとするので、それを防ぐために棒をつっこむ。そして擬膣を形成する。そのために陰茎が必要なのです。
トランス男性の場合は腕や足の皮膚を引っぺがして筒を造り、陰茎っぽいものを作ります。
そこまでしても膣や陰茎を作っても、きちんと排泄・性交に機能するわけじゃなく、要するに偽物です。
正直見た目も違和感のないものになることは少ない。何度も何度も整形してやっと、というレベルらしい。作ったはいいけどとても見ていられない状態の酷いものもある(写真見たことある)。
今のところ、日本の法では内性器を摘出した時点で戸籍変更は可能なので、膣なし陰茎ありのトランス女性/膣あり(閉じてる人もいるけど)陰茎なしのトランス男性がいるわけです(トランス男性だと、YouTuberとか見ててもそこらへんまでの手術が標準のようです)。
で、陰茎を残しているトランス女性というのは、その苛烈な造膣手術まで視野に入れているガチの人であることがほとんどだと思います。少なくとも女性ホルモン治療してる時点でほぼ立たなくなってると思うし、正常な男女としての生殖機能はホルモン治療を長期している時点でほぼないわけです。
異性の風呂に入れてひゃっはーなんて気分の人はほぼ居ません。バレたらどうしようと怯えてはいても。
そのまえに、まともなトランスやそれに移行中の人なら、できるだけ多目的トイレや個室風呂を使うと思います。
でも、移行中の人でも、ホルモン治療しているだけの人でも顔つき・からだつきが変わってくるので、生物学的性のトイレには入ろうとしたら、ぎょっとされる。
でもどうしてもトイレが二種類しかない場合、移行後のトイレに入るしかない。移行前のトイレに入ろうとしたらみんな絶対ぎょっとするから。当人は何度もされてるからわかる。行くしかない。
本当にぎょっとされる。
性転換手術(あえてこう書きます)を、整形や豊胸といった外見のメンテナンスだけで、ちゃっちゃとやれば終わると思っている人が多すぎる。内性器・外性器の手術の方が大変だし苛酷なんです。
で、それは一回で終わるものじゃないので、移行期間の人というのが結構いる。完パスできる(完全に異性の人に見える)レベルの人でも、内性器の手術をまだしていないので、名前や戸籍が変わってなかったり。

不幸にも亡くなられた方とトランス問題は別のことだというのは重々承知しております。
話題になっていたのはキャラや言動についてのことが多く、「トランスだったことはさておき」と言っている人が多かったと記憶しております。ですが、本人の絶望がホルモン治療の影響や、どうしても女性としては見てもらえない哀しみから来るものであった可能性はあります。
上の記事に関連して名前の出てくる人もいますが、著名人が名を知られてから移行すると、いくら完パスできている(完全に異性として見られるようになる)人であっても、有名であればあるほど、「元男/女の○○さん」というところから逃げられないからでしょう。
でも、意識しないと気づかないかもしれないですが、世の中には思ったより埋没しているトランスジェンダーの人たちがいます。そういう人は埋没して異性の生活を普通に送っている。それぞれ、自分のパスの度合いに応じて、言動を決め(一人称や態度など)、日常生活を送っている。
何の治療もしていないのに、異性のトイレや風呂に入りたいという人がいたらそれはただの変態だし、それを止めることはトランスジェンダー差別でも何でもないと思います。

個人的にトランスについての問題では、
・スポーツにおけるトランスはトランスカテゴリを作るべき(筋力・体力は生物学的性の影響が強すぎるため)
・トランスおよび移行中の人はできるだけ多目的トイレを使うべき
だと思っています。
でも、自分たちの苦しみについて詳細がわかられてないからってそれを声高に叫ぶ、差別だと認定して反発するのは、対外的にはマイナスだよなって思います。
たとえば、自分にはガン闘病中だったり、障害者だったり、子どもを育てている人の苦悩なんかはわからないし、それを「言ってもいないのに」理解しろってのは傲慢だと思う。
なので声高にはいいません。
ただ、自分のまわりにもそういう人もいるかもしれないよってことをぼんやりとだけでも知っていてくれたら、と思います。
トランス有名人を見て「ああ、こういうの気持ち悪いね」と呟いたあなたの言葉に、秘かに傷ついているあなたの家族や友達や知り合いがいるかもしれない可能性はないわけではないんだと。

あと今回この記事に関連して、MtFとFtMのしんどさの違いという話がぽろぽろ流れてきましたが、偏見や差別がMtFの方がきついというのは少しあるかと。
若年期から治療して性的特徴を得る前に手術してる人の方が完パスできるようになることが多いのですが、手術や治療にはお金がかかるし、大人になってからの移行では完全に異性に見てもらえることがMtFの方が少ない。
FtMはもともと顔立ちが整って背の高い人は(やや中性的かもしれないが)カッコいい美形になれるし、自分のようにぶっさいくな人間はおばさんかおっさんかわからんけど胸がないからチビデブおっさんかなと思われる程度。オヤジ狩りにあったら怖いけど、酷い目にあう可能性はそれほど高くない。
でもMtFはもっと厳しいルッキズムに曝される。多くの女性がそうであるように。
でもまだジェンダーやセクシュアリティが確定していない、若い年代の人が即治療や手術を始めることはよいとは思わないし、手術したからといって、理想の外見の異性になれるわけじゃない。トランス男性はハゲたり太ったりする。トランス女性になってもただのオカマと思われるだけかもしれない。自分は自分でしかない。
ただの異性装願望や、自分の性への嫌悪からくる変身願望ではないかと疑う期間がある程度必要だと思います。

話があっちこっち行きましたが、読んでくださってありがとうございました。
トイレ問題にからんで、世の中の「ちんこのある状態の女性」に対する解像度が低すぎる、と思ったので。
理由があるんよ。

(自分は一応性別違和当事者です/自分の知識不足・認識不足からくる不勉強についてはコメントなどでご指摘いただければと思います/必要上差別的な言葉を含んでいますが、論旨のため使いました。不快になられた方いらしたらすみません)


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