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超絶怒涛で規格外な物理本『時間は存在しない』が面白すぎたのでまとめていく【序編】

時間は存在しない。

スティーブン・ホーキングの再来と謳われる天才物理学者であり、時間の成立の根幹に関わる量子重力理論の研究者であるカルロ・ロヴェッリは、本書の序文でこう言い切る。

ふつうわたしたちは、時間は単純で基本的なものであり、ほかのあらゆることに無関係に過去から未来へと一様に流れ、置き時計や腕時計で計れると思っている。この宇宙の出来事は、時間の流れのなかで整然と起きる──過去の出来事、現在の出来事、未来の出来事。そして、過去は定まっていても、未来は定まっていない……。ところが、これらはすべて誤りであることがわかった。

本書は、ほとんどすべての読者にとって縁遠いばかりか、しばしば敬遠されてすらいる物理学の最新の知見を紐解きながら、世界の最大の謎である「時間」の正体に迫る。専門的知識を持たない読者を想定したポピュラーサイエンス本として、世界的ベストセラーとなった前著『すごい物理学講義』で発揮された手腕は、今作でも健在である。

しかし、本書の凄まじさはそれに留まらない。

著者のロヴェッリは物理学の専門家でありながら、過去の哲学者たちの時間にまつわる思考に精通しており、それらを科学における時間の解剖の歴史と巧みに接続していく。また同時に、古今東西の歴史や文化を見渡しながら、人々がその生活史において時間という対象とどう向き合って暮らしていたかも、その議論に包み込む。そうして、我々にとっての時間という、今や不気味な概念についての思索と経験の道ゆきの全体を、歩一歩と浮かび上がらせていく。

この本は、時間を巡る最前線の思惟というだけでなく、時間の科学史であり、哲学史であって、そして文化史でもあるのだ。

早くも自分的書籍ランキング2020のTOP3確定の超スゴ本だが、1記事ではとうてい汲みつくせないほど遠大な内容だったので、本書の3部構成そのままに、前中後編としてその大まかな論旨を3記事にまとめていきたい。本記事は、以降連なる3記事の序文にあたり、今後時間が許すかぎり書き進めていきたいが、2日に1記事ぐらいになるかもしれない。

ちなみに、本書自体は非専門家向けであるのだけど、一部の章は専門的な知識がないと読解がやや難儀だ。著者もそれを認めており、「この章はムズいから深く知りたい人以外は飛ばしてくれたまえ」と書いてある。以降の記事で自分がそれらを含めてうまく書き下せているか自信はないけれど、それでも頑張って紹介してみる。

いくぞー!

※概説記事は書くけれど、本書内の図表とかがすごく分かりやすいし、なにより圧倒的スゴ本なので、自分の記事よりも即ポチがオススメ!

前篇-1

前篇-2

中編

後編


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