レンズなしのピンホールカメラ:あきばこでつくれて撮影できるふしぎなしくみ
はじめに
学生のころ、カメラに興味をしめしたわたしはあきばこでつくるピンホールカメラにはまった。目からウロコとはまさにこれ。シンプルでアナログ満載。しかもできあがる写真は独特なおもむきがある。
メカニカルで精巧なカメラ、そしてレンズにたよりがちなわたしのカメラ感と写真へのイメージはあっというまに瓦解。ひかりって... 不可思議。
学生の実習で
もとをただせば、それは大学の教職課程の実習で。半年間、自由にグループをつくり実験テーマをきめて得た結果をまとめて発表。審査員と評価はグループ外の学生全員が半分、指導教員が半分。理科の範囲でテーマをさがす。わたしはふたりでピンホールカメラを中心とした光学の実験をテーマにえらんだ。
そこでピンホールカメラにはまる。じつにかんたんなつくり。適当なサイズのあきばこのひとつの面に針先であけたちいさな穴(ピンホール)をつうじて外光をはこのなかにみちびく。ひかりはひろがりむかいの面にすえつけた印画紙上で像をつくる。
日ごろから仲のいい友人とふたり、侃々諤々の議論をしながらつくっては撮影、現像をくりかえし改良版を完成させた。
ピンホールカメラの材料など
このピンホールの穴のおおきさやかたちができあがる写真を左右する。というか要素はそんなにおおくない。このピンホールをなるべく真円するとよいとわかった。しかもあきばこの紙の面ではきれいに穴をつくれないので、面を大きめにくりぬいてそこへアルミホイルをあてがう。
なるべくうすいアルミがよいとわかったので、うすいアルミはくをさがした。さがせばいろいろあるもので、板ガムの包み紙の表面をおおうアルミはくがうすいとわかった。これを紙からはがしてきれいにたいらにしてつかう。
こんどは穴をあける針。もっていた縫い針であけていた。するときれいなこまかなあなはあかない。拡大してあなのようすを観察するとうちがわにバリがでてしまい毛羽立っている。これでは光がうまくすすまない。
そこで縫い針の先をやすりがけ。さきっちょをたいらにしてみた。捕鯨の銛の先がたいらなかすかな記憶をヒントにダメもとで。するとこのほうがアルミはくをきれいにくりぬけた。
その週の中間報告のレポートでそれに触れると、水中をまっすぐすすむという平田森三(寺田寅彦に師事)の平頭銛について担当教員が記してくれた。物理学専攻の教員なのでこのへんにくわしくとても興味深かった。当時夏目漱石の作品をつぎつぎに読んでいて、寺田寅彦がよくでてきたのでさらに興味のわく話だった。
ピンホールカメラの箱えらび
ピンホールカメラにつかうあきばこ。あなの大きさとあいまってはこの奥ゆきでさまざまちがう。これもおもしろい。一眼レフのカメラをつかい同時におなじ被写体を撮影すると、レンズの画角のちがいや周囲のあかるさ、形状のゆがみぐあいなどあきらかな違いが生じる。ピンホールカメラにも魚眼や広角、標準がありそうでおもしろい。
しかもどこにでもピントがほぼあっている。それでいてじつにソフトな感触。白黒なこともあいまってどこかノスタルジーを感じる画面。
ふれているときりがないほど。暗い場所での白黒印画紙の着脱から現像までそれなりにくふうがいる。現像できたプリント上の像はネガ像なので、密着法で露光してポジとするなど、くわしい友人が実演しておしえてくれた。教師の好意で現像室や試薬類を自由につかわせてもらえたのも大きかった。
おわりに
どこまでもアナログだが、いまでは印画紙がわりにデジタルカメラやスマホをうまくとりつけて撮影するとその場で映像を確認できそう。じっさいちょっとネットで検索するとずらりと出てくる。多くの方々がじっさいにやられているのでいちいちとりあげない。
当時撮影したものも家のどこかにあるはずだがなかなかみつからない。わすれたころにでてくるんだろう。きっと。
それにしてもふしぎだなあ。
タイトルの写真はピンホールカメラのものではないのであしからず。カメラはCanon EOS M10、レンズはEF-M15-45mm F3.5-6.3 IS STM、オート撮影。
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