わが家の庭先の小さな空間で夜中にくりひろげられる生き物たちの攻防
はじめに
ことしも季節が2,3週間前倒しですすんでいるかのよう。動物たちの活動が例年になく活発なようだ。あきらかにここかしこを掘ったあと。
家のなかから庭できこえる物音、すがたをかろうじてみせる生きものたちのようす。
きょうはそんな話。
東の風とおしのよいところ
開口部を極力へらし断熱効果を高めたいまの家とはちがい、わが家はむかしからのつくりに近い。あえてそうした。徒然草の一節のように夏をむねとしたつくり。おもいっきり南をあけた位置に家をもってきた。これは功奏し冬には南の縁側のぬくもりが恋しくなる。休日にはアイロン台をもってきて昼ごはんを食べたり本を読んだりする。
くわえて夏の夜に涼しい風がはいるように出窓の下に格子をいれた風とおし窓を設けた。午前中は東がわの風とおし窓から海かぜがとおりぬけ、夕方には谷あいの小川をくだる山かぜがへやをとおりぬけていく。
いずれの窓からも外のようすを見わたしやすい。とくに夜間には庭をおとずれる動物たちの気配をかんじやすい。
夜の窓のそと
東かどの窓ぎわで夜にはラジオやPCをかたわらにおき過ごす。家事が終わるとほかの電灯を消すので、外からもどるとこの東かどの部屋だけポツンと灯が黄色くともる。
虫たちはこの明かりに誘われる。夏の窓の外はにぎやかだ。小さな蛾や甲虫があつまる。
毎晩のように現れるのがヤモリ。窓のすりガラスごしにぺたんときゅうばんの前足、後ろ足でガラス窓にはりついて腹をみせてじっとしている。
なかにはメスだろう。ガラスごしの明かりを通じてレントゲンのようにからだが透けて卵をもっているようすがみてとれる。おなかあたりがいびつに横に膨れている。
じっとガラスに貼りついて光に誘われて集まる虫たちをねらう。とくに獲物になりやすいのがマダラメイガのなかまやカゲロウ、カなどが多い。ここは毎晩あかるいのでヤモリには獲物を得やすく腹をみたせる。ほぼおなじころやってきて上の写真のようにぺたっとはりついたまま待ちの姿勢でいる。
獲物をとらえる瞬間はとてもすばやい。目にもとまらず飛びかかりパクリ。かなりの成功率。明るい窓際にいると効率よく夕飯にありつける。
たまに来る生き物
2年ほど前から新たな生き物がそこにくわわった。まだ撮影はできていないが昼間も見かける。それはどうやらイタチ。
スリムなからだに長いしっぽ。じつに細長い。昼間は玄関のひさしの裏に巣づくりしたツバメのひなをねらっているようだ。そして夜にはこの窓際に来るようになったらしい。「らしい」とつくのはまだ確証がないから。
しっぽはまさにこの動物と同様、そしてながほそい体。暗がりなので色あいなどがわかりにくいがよくみるアナグマとは異なり、おそらくイタチ。
イタチのねらいは
なぜイタチがくるようになったか合点がいった。イタチは雑食性。わが家の庭でもえさにありつけそう。
このあいだ庭で見かけたごく小さな野ネズミ。アオダイショウやシマヘビは年に数回ほどどこからともなく登場する。ほかにもバッタやコオロギ、キリギリス、そしてヤモリ。
窓に集まるヤモリはめだっていてイタチの獲物になりそう。昨夜は家のなかからこの窓のむこうでうろつくようすを家族が見つけた。これはまさに小さな食物連鎖の現場。
この窓の外のごくせまいエリアだけで、
マダラメイガなど ➡ ヤモリ ➡ イタチ
という食物連鎖がなりたちそう。昼間だったら
バッタ・ハエ ➡ カエル ➡ アオダイショウ
といったところ。1平方メートルに満たない空間での夜のできごと。ヒトしれずその攻防が日々おこる。
おわりに
テレビ番組で目にするアフリカのサバナやオーストラリアのグレートバリアリーフでない。派手さはまるでないが、身のまわりで生きものたちはここでも暮らす。
昨今の状況下に家にいる機会が多い。いままで長く暮らしていたはずなのに新たな気づきに事かかない。
ごく身近なところでこうした攻防が日常的にくりひろげられている。幾千年と陽がのぼりそしてしずむなかで、くりかえしおこなわれてきたできごとのひとつ。
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