こんなヒトに出会えたらいいなあと願いしばらくするとこつぜんとあらわれるふしぎ
はじめに
これはよくあることだろうか。それとも行動の特性と数学の確率などで説明のつくごくあたりまえにすぎないことなのか。
noteのどこかでちがうかたちでふれたかもしれないが、ここですこし記しておきたい。何度かみずからの身で経験してさすがに「これは運命だろうか」と科学者のわたしがつかうといぶかしがられることばがうかんで、その場でおどろき、のちに思いかえしてもふしぎさにふたたびためいきをつく。
きょうはそんな話。
こだわりから
農業を兼業でしばらくつづけていて売りさきさえあればきっと希望する方に向けて売れるはずと売り場さがしをはじめた。というのも理由があった。
一般の販売所では薬をつかわずやさいをつくろうが(もちろん法律にのっとり)、有機肥料をつかおうが、てしごとですべて種まきから収穫までこなしてつくろうが、十把ひとからげ。慣行栽培とあつかいはおなじ。この店ではなにもちがいなど見ためではかわらないので、うんちくはあまり関係なさそう。けっきょくおなじ値段でふつうは見ためのきれいなものから売れる。
せっかくならばあるこだわりをもち、やさいを納得できる方法でつくりつづけた。それはまったく機械をはたけのなかにいれないこと。
はたけのまわりをとおりすぎるヒトビトからは「いまどきなにやってるの?」とふしぎがられた。「そんなことするもんじゃない。」と叱責に近い言葉をかけられたことすらある。そのたびに「体力づくりをかねてますから」とか言い訳をとり繕ってきた。
ヒトがやらない方法
せっかく差別化するならばほかのヒトがまずやらない方法でやろうとのこころみ。手押しの一輪車とくわ1本でたがやし、冬はスコップで天地がえし。手でやさいについた虫をとる。となりの大きな機械をあやつる方の方法はわたしはしっくりこない。
無謀とはおもったがわずか40m✕30m前後でたったの4枚。せまい面積のかぎられたはたけでの収穫物。どうせやるならほかとちがうものを提供したい。取引していた販売所にはなしてみたがまったくらちがあかない。ピンとこないふうだった。機械でつくろうがヒトの手でつくろうが変わらないだろうと言いたげ。
さがしてみた
それはほぼ飛び込みだった。なんとふだんやさいをならべている販売所からさほどはなれていない場所で、個人で野菜や書籍をあつかう店の存在をネットで知る。まさかこんな近くに…。いつも通う病院のワンブロック先だった。一度も通り抜けたことがないところにその店はあった。
事前に電話で連絡し「まずは会ってほしい。」とてもちの収穫したてのやさいをくるまに積んで出向いた。もちろんじぶんのやさいをおいてもらい売っていただけないかとあつかましくもちかけた。はじめてお会いする方にもかかわらずなんとも失礼なおねがい。
すでにそうした生産者を扱っているとのお返事。ああ、遠回しながらことわりの意味かな、これは無理かなと思った。話を聞いてもらえただけでもよしとしないと。
それがわたしの表情に出てしまったのかもしれない。お察しになったのか、「じゃあせっかくもってこられたので。」とおっしゃる。「しばらくこの1画に何箱分か置いてみてください。」とこころよく言ってくださった。
やさいをならべて、なんどもおじぎしつつその日は帰宅した。
やさいが売れた
それから日を置かずに朗報が舞いこむ。このお店に置いていただける分のやさいはどれもくすりを使わないうえにまったく機械をつかわない。上のじぶんの家の山でひろいあつめた雑木の下のうすい腐葉土を手押しの一輪車でうんうんいいながらはこび、1年ねかせてはたけにうないこむ。
べつにそんな農法は聞いたことがないし、わたしのこだわりでもない。鎌倉時代ですら牛馬をつかいたがやす時代だった。わたしのじいさんすらそうで、父は耕運機をつかうごくふつう農業。
たまたま肥料を買うより身近な場所で手にはいるならとズボラな性格がそうさせただけ。しいていえば、いざ食料がこのクニにはいらないとなったとき自分たち家族を守るにはまずは口にいれるもの。はたして燃料にたよらずやさいをつくれるものなのかだけは4代目としてはたしかめてみたかったのはたしか。
それをこのお店のかたがあるお客さまに話されたら、好印象をいただけたらしくけっこうたくさん買っていかれ、毎週来るからねと約束されたとのこと。遠方のため宅配でこの店から送るべつのお客さまは、とくにやさいにはこだわりをおもちの方らしく、わたしの虫のあなや見てくれのいまいちのやさいたちはよろこばれた。
あまくない在来のとうもろこしをこれをめあてにわざわざ足をはこばれ、買いに来られる方もいらした。
それ以来
昨今の状況がきっかけで農業をやめるまでのあいだ、そのお店と取引があった。このかたはご家族の介護のためにしごとをやめられひっこされた。交流はつづいてそのご夫婦が運営するNPOの活動に協力。
わたしは周囲からそのNPOをサポートしはじめて、関係者の方々へつくるやさいやくだものを提供。いっきに交流の輪がひろがった。やがてそこからわたしが兼業している学習サポートへ、病をかかえて学習がおぼつかない生徒の紹介があり…。たいへんおせわになって現在にいたっている。
いらしたらいいなあというヒトがわりと身近なところにいた一例。出会いがこのあともここからまだまだつづいていく。きりがないのできょうはこのへんで。
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