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人生を変えた1皿のカレー


特別なカレーとの出会い

メ―サロン

タイの山間の街、メ―サロン。ここは国共内戦で敗れた国民党軍の子孫が多く暮らす街だ。山を尾根伝いに切り開いたような街で、景色は街のどこでも素晴らしい。かつてはアヘンの栽培が盛んだったが現在では台湾の支援もあり茶の産地として有名になっている。

ここで私は特別なカレーに出会った。その日は町に1つしかないレンタルバイク屋さんで故障しかけのスクーターを借り、山手の方へと向かおうとしていた。山道に入ってしまえば飯屋もなさそうなので道中で飯屋を探していたら、ハラールマークの書いてある店を発見。仏教の国でイスラムのマークを見かけるなんて思いもよらず、気になってそこで昼食をとることにした。メニューを見ると「雲南カレー」の文字。
雲南カレー?聞いた事ないぞ… 雲南てどう考えても中国の雲南省だよな?
とりあえず頼んでみる。

雲南カレー

するとむちゃくちゃ美味そうな牛肉カレーが運ばれてきたではないか、!
でも同時に頭の中にハテナが3つほど浮かぶ。

雲南とカレー?
カレーなのに牛肉?
雲南にイスラム?


私は訳が分からなくなった。どう見てもタイカレーではない。中国にカレー文化があるなど聞いたことがないし、インドで牛肉のカレーが食えるわけがない。そもそも雲南にイスラム教徒がいること自体が初耳だ。
牛肉はとても柔らかく味は絶品だった。

人の移動が新たな文化を生む

気になって雲南カレーについて調べてみるとこれがとても興味深い。今の中国・雲南省辺りにいたイスラム教徒が中央政府の弾圧を受け南へ南へと避難しラオスやタイ北部、ミャンマー北部に定住する。そしてビルマ方面と中国方面を結ぶ交易路を通じてビルマや南インドのスパイスがその地域にも持ち込まれる。そうしてタイで中国とインドの文化が出会い「雲南カレー」といった融合料理が誕生したらしい。ヒンドゥーの文化圏ではないから牛肉も使われる。

カオソーイ

タイ北部の名物カオソーイも経緯はかなり似ていて、中国から持ち込まれた麺文化とインドのスパイスが出会った結果だ。(カオソーイはミャンマー発祥、ラオス経由でタイに伝わったとされそれらの地域にも同様の料理が存在している。)
(タイ北部、東北部の歴史の変遷は面白いのでいつか書きます。また、雲南系ムスリムについてはこちらの資料を見るのが大変わかりやすいと思います。)

旅の新たな深み

このカレーとの出会いは自分の旅に対する心持を大きく変える。
国単位や地方単位ではなく民族が国境を越え、新たな文化を生み出していったことに感動を覚えるとともにより一層興味が湧いてきた。出会った場所が山中の小さな街の静かな食堂だったことも理由の一つかもしれない。この旅序盤での経験から、よりローカルでインスタ映えしないような深い経験を求めるようになった。観光地は極めて商業的で快適な空間だ。どうしても金がローカルな文化を上回ってしまう。もっと深みに入っていくにはいくらお金があっても辿り着けない。ひたすら歩き、良く分からないものとの出会いを増やしていくしかない。
「自分で決めて、自分で歩く」
その重要さを強く感じた瞬間だった。

有象無象だと思っていたもの同士が知識によって結びついていくのは感動的で、次の学びへと向かう意欲を駆り立ててくれる。本を読むのはあまり好きではないが、ネットサーフィンをして雑学やブログを読み漁るのは毎日の日課だ。なにごともコツコツとやることが大事とは言うが、NOTEの更新はまばらになってしまっている。
まずはNOTEをこまめに更新することから始めよう…

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