事実と感情を分けること

カウンセリングでお悩みを聴く場合、「事実と感情を分ける」という作業がとても大事です。

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悩みや苦しいことにはたいてい感情が原因となっていて、また逆に問題の本当の原因にアクセスする扉にもなっているからです。経営者のコンサルティングをする場合にもこの作業がとても有効な場合が多いです。詳しく見てみましょう。

■ 感情は解決に向けた思考を邪魔する

経営者の方のお悩みでかなり多いのが、「部下が思ったように動いてくれない」というものです。部下が動いていない原因は色々ありますが、毎月毎月給料を払って、教育にも時間をかけて、部下が動いてくれないとなると腹が立たない経営者の方が珍しいと思います。腹が立ったりしないという方でも、自分の指導力や会社の魅力に自信を持てなくなっていたり、部下が辞めてしまうかもしれないと怖がるということは一般的です。

問題を解決するにはどうしても部下に一歩踏み込んで、相手の状況や気持ちを聞く必要があるのですが、怒りや怖れは部下とのコミュニケーションを邪魔してしまいます。これは相手が部下以外の、例えば取引先でも同じですし、クライアントや元請け企業などにも同様です。家族との接し方、子育てなども同じかも知れませんね。

■ 感情がどのように判断を邪魔するか

危機に直面した時に人間の反射的な反応として「4F」というものがあります。「4F」とは、

①凍結(Freezeフリーズ)

②逃走(Flightフライト)

③闘争(Fightファイト)

④放棄(Forfeitフォーフィット)

の4つです。

特に②と③が代表的で「闘争―逃走 反応」と言ったりもしますが、何か困る事が起こるような時に人はこういう反射的な反応を取ることが多いです。悩み事には恐怖だったり怒りだったりという感情が一緒に表れて起こっていることが多いのです。

これらの反応は「生命を守る」という目的には合っているかも知れませんが、問題解決したり物事を前に進めるのにはマイナスになることが多いです。感情的な反応は自分を守ってくれるという意味では有効だけど、必ずしも自分を幸せにしてくれるとは限らないのです。

■ 感情と偏見

他の人の言動に感情が動く時、その人の言動に対して人は何らかの価値判断をしています。言いかえればジャッジしていている。つまり、正しいと間違いとに分けているのです。他の人は自分とは違うと分かっていても、ついつい、社員であれば仕事するのは当たり前、上司は部下の面倒を見るのが当たり前、子どもが学校に行くのは当たり前、旦那が働いて奥さんが家事をするのが当たり前、そういう「当たり前」は普段意識しないもので、それが裏切られるような行動をされると反射的に感情が反応してしまいます。自分の見方や無意識の価値観と相容れないからです。

経営者や管理職になると、部下を動かす必要があります。人は本当に不思議なくらい気持ちが納得していないと動いてくれません。部下の立場の人はそれでいいかも知れませんが、経営者や管理職はそこを超えないといけない、つまり自分の感情や価値観に向き合わねばならなくなる機会が増えてきます。

■ 感情を分離する

通常コンサルティングをする時には、困った事態のグチのようなものから聞き始めることが多いです。グチになっている時点で感情がかなり入っている訳ですけれど、まずは状況を聞いていきます。誰かが何かをして、または何かをしなくて、それに何と言って、あり得ないことにこうなった、みたいな感じですね。この時に順序だてて出来事とセリフを聞いていきます。そうすると、「え?どうしてそう言ったんですか?」「そう思っていることは、いつ伝えたんですか?」というように、展開に辻褄が合わない(本人には自然なのだが、外から聞いているとよく分からない)箇所が出てきます。そこが糸口になっていきます。

大切なのは、その時の感情はその人が大事にしている価値観とつながっていることが多いということです。客観的には分からないなと思ったとしても、そのような理不尽こそ人間。人間らしさに出会えたことを嬉しいと思いたいものです。思っていることが為されない、伝わらない時にどのように感じるのかを丁寧に聴いてあげましょう。価値観とつながる行動パターンは、繰り返すものです。大抵もっと以前から同じような気持ちをその経営者は味わってきたはず。あなたはそれを大事に思って生きてきたのですね、と受け取ってあげることが新しいステップを始めることを後押ししてくれます。その状態になって初めて、コンサルタントの述べる客観的な意見が相手に受け入れられる素地ができるのです。

■ まとめ

今回は、「事象と感情」についてお伝えしました。特に、どうしても自分と関連することには感情が動くもので、そうなると客観的に考えているつもりでも事象の【捉え方】自体が歪んでしまいます。間違えたくないのは、決してそれが悪い訳ではないということ。全く歪んでいない【捉え方】などありません。ただ、他の人、部下、チームの考えをもっと知って同じ方向を見たいという相談者の思いに添って全力を尽くすというだけのことなのです。

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