【書と評】なぜ人と組織は変われないのか を読んで

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ロバート・キーガンのこの著と「なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか」とはとても啓発的でした。

■ たいてい人は答えを持っている

複雑なビジネス環境では行き詰った時に正しい行動は何か知るというのはなかなか難しいものです。しかし、今上手くいっていないことの理由や、そこをこうすればいいのに、というちょっとした改善案などは現場で持っているものです。

例えばある学校では教師が実際に教えている授業と教えるべきだと思っていることに関してギャップがありました。アンケートを取るとほとんどの教員は、「重要な情報と理論の説明」と「情報の効率的な伝達」を除くすべての教育上の目的に関して、講義以外の教育方法【グループディスカッション、個人研究、経験を通じた学習、個人指導】のほうが有効だと考えていました。とくに、「学生が事前に準備して臨む少人数制のディスカッション」の評価がきわめて高かった。ところが、実際にそれがカリキュラム全体に占める割合は、臨床実習前の段階と臨床実習の段階でそれぞれ12%と11%と低い数値です。一方、教室での講義の割合は、それぞれ65%と20%に達していたのです。

彼らはなぜそれを変えることができなかったのか、色々要因は考えられます。他の教師たちがどう思っているか分からなかった、自分から言い出すのが嫌だった、新しい方法を導入するのが手間だった、などなど。自分でやりたい、やった方が良いと考えていることに対してブレーキをかけてしまうことが確かにあって、そのブレーキを知ることで、分かっていることを実行する力が上がるはずです。何といっても改善のヒントは一番現場に落ちているのは確かではないでしょうか。

■ 免疫マップ

キーガンがここで推奨しているのは、「免疫マップ」を作成する方法です。それは4つの項目からなっています。①改善目標、②阻害行動、③裏の目標、④固定観念、の4つで、目標が上手く達成できないことをある意味利用して自分を知ることができるという面白いマップになっています。カウンセリングに使うこともできますし、チームで他のメンバーから意見をもらうとさらに客観的に自身を見ることができるでしょう。

僕はよく問題というのは2種類ある、と言います。「難しい問題」と「複雑な問題」です。キーガンはハイフェッツというリーダーシップ論の研究者の研究から「技術的な課題」と「適応を要する課題」という表現を使っていますが、論点は似ていて、前者は答えがあるけれど後者は答えがないのです。組織の中で起きる対人関係の様々な問題は、毎回同じ方法で解決するとは限らないので、「これが正しいと分からないまま行動しなければならない」という特徴を持っています。そのような行動を取るには勇気が必要ですし、ある問題に勇気を持てるかどうかは人の心理的特性が大きく関係してくるわけです。

■ 弱さを見せあえる

人は自分の何らかの価値観を守るために目標達成を阻害してしまうことが多々ありますが、とても面白いことに組織の中ではその弱さを「隠す」ことに大きな労力を使っているといいます。そのために、失敗する可能性があることを提案できなかったり、今の自分の殻を破って新しい方向を模索することをためらったり、他のメンバーに自分から見たアドバイスを言えなかったりするわけです。

これを乗り越えるために、普段からお互いの弱点を言ったり言われたりすることに慣れておくということはチーム内で余計な防御行動を減らすための助けになります。僕がやったのはお互いに相手の好ましいと思う(いいと思う、好きな)と、好ましくないと思っている(いやな、嫌いな)点をそれぞれ付箋に書いて提示するという方法です。そして、相手が挙げた好ましくないと思っている点の中から一番自分に刺さったものを選んで「私は○○によってチームに××を起こす人間です」と書いて貼っておく。これが何だかくすぐったいような、服を着ないで外にいるかのような落ち着かない感覚と、妙な解放感のようなものを感じるもので、面白いものです。

wavesという自己啓発のセミナープログラムで似たような体験をしたことがあります。ある一つのプログラムでは、何か表現をしながらチームのメンバーを動かさないといけない。そこでは今まで自分が積み上げてきた地位や経験ややり方は通じない。ほぼ初対面の人達ですから。そこでグループ全員を動かしたときに、そこを突破した時の僕の自己イメージは「俺はアホな男です」というものでした。つまり僕は普段はアホではいけないと思っていて、人に受け入れてもらえないと思っており、知識や論理で人を動かそうとしている(noteの文を見れば分かるでしょうw)。だけど、アホな所が本質的にはあって、そこがすごく強さや輝きを発揮してくれる力を持っているんですね。思い出してみれば小学生の時に富士山に林間学校に行った時も富士五湖の一つ(確か西湖だったかな?)に飛び込んで泳いでた記憶があって、そもそも持ち物の設定に水着が無いし、想定されていない。だけどまあ、暑い時期で気持ち良いと思ったのでしょうね。そういうことをする子供だったし、何人か一緒に泳いでくれる子たちもいました。それはあの頃は僕の中の衝動で、力を持っていたわけです。

今大切なのは、アホではダメだという裏返しに知識を伸ばしている自分を認知することです。特に抑圧しているアホさを使えるようにしておく、平気になるようにするのです。たいてい、少し一緒にいる期間が長ければ、隠している所なんて周りの人にはバレているものです。それをバレていないと思って隠そうとするから鼻について、面倒で、余計な気を遣わせるのですよね。それに、こちらが気にしているから気を遣わせるだけで、周りの人はそのことをあまり気にしていないものです。だって、アホな人いっぱいいるし、そこにいいこともたくさんあるじゃないですか。隠したいと思っているのは自分、なのです。

■ まとめ

会社やチームでこのような研修ややり取りができればベストですが、自分自身で知っておくだけでもとても周りとの関係が楽になります。親しい人に聞いてみるのも一つの方法かと思います。例えば、「私が周りの人にバレないようにしているイヤなところって何だと思う?」というような質問です。答えてもらって腑に落ちたなら、「そういう人のこと、どう思う?」とさらに聞いてみてもいいかも知れません。意外と人の弱点って可愛らしいものだって、分かるんじゃないかな。ぜひやってみて下さいね。

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