『SかMか』それが問題だ。
「○○ちゃんてさ、ドSだよね」。
なぁんてやりとり、もはや女性も日常の会話で行なっている時代。
いまでこそ「S」とか「M」とかといったワードは
人口に膾炙しておりますが、
鬼六の青年期(昭和20年代)は
そういった性癖を大っぴらに話すことは
まだまだ憚られた時期だったそうであります。
実際鬼六は当時おのれの中にくすぶっていた嗜好を
開示する場所を見出せず、そのはけ口として自ら猥文を書き始めた。
書きつつもそんな文章を友人や知人によもや見つかってしまわないかと
内心戦々恐々としていたそうです。
そしてようやく見い出したあるSM専門誌。
そこで初めて同じ嗜好の人間が自分以外にも存在するのだということを知り
安堵したそうです。
これが、のちに8年にもわたっての『花と蛇』長期連載を行なった
雑誌『奇譚クラブ』との出逢いだったということ。
鬼六の著書『SかMか』はそんな自分のSM文筆活動発生の系譜を含め、
軽―い筆致でS論、M論を書き下ろした珍しいうんちく本(?)です。
この本の中で鬼六は自分を60%がS。40%がMである、
と分析しています。
その60%のS性で小説中の男の加虐性を描写し、
40%のMで女性の被虐官能を描くとのこと。
この両者があるから文筆が成立するのだというのです。
ちなみに『悪徳の栄え』などマルキ・ド・サドの作品は
ドS過ぎて(S性80%以上)、個人的には読むのに疲れた。。。
などと述べたりしています。
そうかSやMにもグラデーションがあるわけだなあ、
と変に納得してしまったり。。
まあSMの「実用書」とは言えないかもしれませんが、
彼女や、奥さんや、愛人と交わすスキンシップの前戯会話ネタとして
お使いくださればと思います。
ところで、こんなサイトがあるのかと、
人から教わって私自身驚愕し、自分の不勉強を猛省したのですが、
「SMペディア」というSM関連総合サイトがあるのですね。
いやこれ、どなたが監修されているのだろう。
すごいです。
冒頭の紹介文に、
「SMペディアは、戦後日本のSM文化の誕生と展開の過程を歴史として正確に後世へと伝え、同時にこれからのSM文化のさらなる発展の一助となるために2009年11月3日に設立された、非営利のデータベースです。SM文化に直接関わる人物・事項のみならず、間接的にも影響を与えたエロ文化を広く取り扱っております。」
と格調高く定義していますが、その言葉にいつわりなく、
SMに関するあらゆる情報
(カテゴリーを羅列するだけでもSM文化から歴史、文筆家、絵師、雑誌、出版社、編集者、映画、映画監督、SM聖地、緊縛師、緊縛テクニック・教材、緊縛教室情報、世界のSM、etc)
が網羅されています。
光栄なことに父の関連情報にもかなりの文字数を割いていただいていて、
出生から活動、死に至るまでのその詳細な経緯
(いったいどうやって調べ上げたのかって不思議に思うくらい)、
が記されています。私の名前まで出ています・笑。
SMペディアに限らず、今やネット上には様々なSM嗜好サイトが存在し、
関連本もあまた。
このnoteでもやり取りさせていただいたその分野のプロフェッショナルな
方々もいらっしゃいます。
蛇の道は蛇って言いますが、ここまでくるともう、
かつて獣道だったSM道はきれいに舗装されて
みんなが行きかう幹線道路になったような気がします。
令和のSM事情を見て、草葉の陰から父は何を思っているでしょうか。
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