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高橋浩一。AV監督と舞台俳優の狭間で創る世界。(1)

ひょんないきさつから、敬愛する人妻系AV監督・高橋浩一さんの取材をさせていただく機会を得ました。高橋監督はその昔、映画化された父の作品にも男優としてご出演いただいいたこともありまして、うれしいやら懐かしいやら、不思議なご縁を感じつつお話を伺いました。私のnoteにて記事を掲載させていただくことをご了承いただきましたので、以下3回シリーズとして掲載をさせていただきます。
※本記事は、宣伝会議 第43期 編集・ライター養成講座の卒業制作として作成しています。【優秀賞獲得作品】


「今、学校で高校生にシェークスピア劇を演じてみせる活動をしています」

都内某日、AVメーカー「株式会社ゴーゴーズ」のスタジオで人気シリーズ『人妻不倫旅行』次回作の編集を終えた男は、そう語り始めた。

高橋浩一。62歳。世に知られた肩書はAV監督である。

物腰の柔らかなしゃべり方と穏やかな風貌は一見、学者を思わせる。学校教育の一環としてシェークスピア演劇を取り上げていたとしても、確かに何の違和感も覚えない。
「年に10回くらい公演があって日本中の学校へ出向きます。劇で役を演じきった後、高校生たちの純粋な反応が見られるのが、実に楽しいですね」
と語る高橋はいっぽう、年に4,50回ほどは人妻を温泉に連れ出し、カメラを片手に行為をしながら撮影をするいわゆる「ハメ撮り」を敢行して、その模様をAV作品をとして上梓し続けている。彼女たちの「反応」を見るのも実に楽しいとほくそ笑む。

約17年にわたり彼が手掛けたこの『人妻不倫旅行シリーズ』はスピンオフ版を除くオリジナル版だけでも実に195作が世に送り出され(2021年12月時点)、今や(株)ゴーゴーズの経営を支える看板作品となっている。

AV監督をしながら舞台俳優をこなす。二つの役割を行き来しながら、還暦を超えてなお「精力的」に活動する高橋浩一の視界にはいったい何が見えているのだろうか。

スタジ オ に こ も り 、 『 人妻 不倫旅行シリー ズ 』 の 編集 に 余念 が ない 高橋 浩一

AVと舞台の2拠点生活

1959年4月21日、高橋は京都で生まれた。父親は地方の警備会社に勤めるごく普通の会社員だったという。高校時代に演劇部に入りそのころから芝居に深く興味を抱くようになり、卒業して上京。演劇の専門学校に入学し本格的に芝居を学び始めた。役者としてだけでなく、大道具としての技能も習得。この若き日の学びが高橋のその後の人生の原点となる。

「最初は大道具のアルバイトをしている時、仲間から紹介されたんです」
AV制作に初めて携わったのは高橋が25歳のころだった。面白い仕事があると言われて向かったその先でいきなりシナリオを渡され、男優として「カラみ」もやるように指示された。そのころはまだ現在のような「本番」はなく、前貼りを使った疑似だったがさすがに最初は緊張したと笑う。
「カメラの前で裸になるのはさすがに恥ずかしかったです。ただまあ結果的には上手くできちゃいましたけど」
演劇学校で培われた技能と度胸がさっそく役に立った。初めてのビデオ制作の現場を以下のように回顧する。
「舞台と違ってビデオの世界は時系列に芝居が進まないので、後でこのシーンがどうつながるのかがとても興味深かったですね」

その後も通常の舞台とAV男優を掛け持ちしながら仕事を続けていたが、ある日転機が訪れる。
「一緒にやっていた監督が事故に遭っちゃいまして、代役で監督をやることになったんです」
そんなに急に代役が務まるのかと筆者も疑念がわいたが、
「AD(アシスタントディレクター)もやっていたので大体の動きを見ていたし、当時は台本さえ書ければ後は周りのスタッフに任せておけば何とかなったんです」
と、こともなげに話す。
そこからAV監督としての高橋の実績が積み上げられていくのであるが、その間、舞台との接点も決して失うことなく今日に至っている。

現在では冒頭で触れた高校生へのシェークスピア劇の啓蒙活動だけでなく、自身の劇団「練馬大根一味」を立上げ定期公演を行う。また東京都の区が公募する児童向け演劇にも一般参加し、観衆の前でスポットライトを浴びている。しかも舞台の衣装やセットは大道具役として自ら製作しているというのだ。

高校生 た ち の 前 で シェーク スピア 劇 の 役 に な り き る 高橋

高橋のツイッターのタイムラインを見ると、役作りのためにしっかりとメイクされた真剣な表情の写真があると思えば、その後に人妻の裸体をいとおしそうに抱きしめている同一人物の書き込みが交互に入り乱れている。

AVと舞台のこの2拠点生活こそが現在の高橋の創作活動の基軸となっている。(つづく)


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