見出し画像

光熱費増やストレス、居心地の悪さ――ステイホームで感じた不満は高断熱化で解決できます

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い昨年急速に広まったテレワーク。一時は半強制的に家族がみな家で過ごし外出も最低限に控えるという、それまでなかった「ステイホーム」は、私たちの生活を一変しただけでなく、「住まいとは、快適さとは」を考えるきっかけになりました。家族が程よい距離感を保て、ストレスが少なく、光熱費を気にせず、健康で快適に過ごせる家とは?その答えは高断熱住宅にありました。

ステイホームで見えた課題①光熱費が高くなった
高断熱住宅専門紙「だん」を発行している新建新聞社では、昨年6月上旬に家づくりを検討中の人と家づくりを進めている最中の人にアンケート調査を行い、新型コロナウイルスとステイホームの影響を聞きました。

画像1


その結果、もっとも回答率が高く約4割が回答していたのは「ステイホーム中は光熱費が高くなった」でした[図1参照]。家族全員が家にいる時間が増えたのですから当然ですが、今後も強制的にステイホームを強いられることがあるでしょうし、ステイホームを経験したことをきっかけに家で過ごす時間を積極的に増やす家庭もあるでしょう。今回のステイホームは春の気候のいい時期でしたが、夏や冬にステイホームすると、光熱費はさらに高くなります。

光熱費を抑える基本は住宅の高断熱・高気密化です。断熱材を厚くして、樹脂窓など性能の高い窓を使う=高断熱化し、家の隙間を小さくする=高気密化すると、夏は屋外の暑さ(熱)が屋内入りにくくなり、冬は屋内の暖かさ(熱)が屋外に逃げにくくなるので、高断熱・高気密化すると冷暖房が最小で済み、光熱費が安くなります。

雑誌「だん」が推奨するレベルの高断熱住宅(「HEAT20」という物差しの「G2」と呼ぶレベル)にすると、現在の国が掲げている省エネ基準の住宅と比べても50年間で光熱費を約450万円削減でき、高断熱化に200万円余分にかけても築20年で元がとれます。これはステイホームを想定していないシミュレーションなので、ステイホームを考えると、高断熱化による光熱費削減効果はもっと大きくなるでしょう。家計防衛の観点から、高断熱・高気密化をおすすめします。


ステイホームで見えた課題②ストレスを感じた
先のアンケート調査では「家の間取りや性能が原因でステイホーム中にストレスを感じた」との回答も約3割ありました。なぜ間取りや性能が原因でストレスを感じるのでしょうか。

家で過ごす時間の多くは洗面、トイレ、片づけ、掃除、料理、食事、入浴、着替え、睡眠などのルーティンが占めます。間取り、特に「動線」と呼ばれる家族の通り道・動くスペースの設計が悪いと、これらのルーティンをスムーズに効率よく行うことができず、ストレスが溜まります。

また、家族との距離が遠すぎても近すぎてもストレスを感じやすい。極端な例ですが、在宅勤務中の夫が個室に閉じこもり食事と入浴時しか出てこず家事や育児を手伝わないので妻は殺意を感じた、などという話も聞きました。一方で在宅勤務をリビングでやっていると子どもが気になって集中できないことも。間取りや動線は、家にいる時間が長くなるほどストレスに影響します。

性能については、断熱・気密性能がストレスに大きくかかわります。断熱・気密性能が低いと熱が入りやすく逃げやすいので、暑くて寒い家になります。人間も動物ですから、暑くて寒い環境にいると身体的なストレスを感じ、高断熱化等で常春のような居心地のよい環境に近づくほどそれは軽減されます。

さらには寒いと血流が悪くなって冷えや肩こりなど体調不良の原因となり、ストレスを招きます。特にキッチンや洗面など、ルーティンを行う場所が寒いとルーティン自体が苦痛になります(もちろん暑くても苦痛です)。

脱ストレスの観点からも高断熱・高気密化をおすすめします。


高断熱化で「家事楽」に 洗濯物も減り収納も楽に
[図2]は雑誌「だん」が高断熱住宅に住むママさん100人に聞いた別のアンケート調査の結果です。「暮らしてみて変わったと感じること」を聞いたところ、トップは「光熱費が下がった」でした。そしてほぼ同数の2位は「家事が楽になった」で、3位には「ストレスが減った」が入りました。ここまで述べてきたことと重なる結果です。

画像2

「家事楽」については、先ほど肩こりや冷えの観点から家事(ルーティン)と高断熱化の関係に触れましたが、それだけではありません。高断熱化するほど常春的になっていくので、冬に室内でフリースを着たり、厚い布団をかぶって寝たり、こたつに入って暖を採ったりといったことが不要になります。そうするとフリースを洗って干したり、厚い布団やこたつを出し入れしたりする必要がなくなるうえ、そもそもこれらを断捨離できて収納スペースも節約できます。これは小さなようで実は大きな「家事楽」につながります。

日本人が家にいない理由は家の居心地が悪いから?
[図2]の調査の4位は「家で過ごす時間が長くなった」、5位は「家に人を招く機会が増えた」でした。高断熱化で家が居心地よくなると、家で過ごす時間が長くなり、人を招きたくなったということでしょう。

コロナで私たちは「半強制的」にステイホームを迫られましたが、高断熱化+間取り・動線などの工夫によって「積極的」にステイホームを楽しむことができるようになるはずです。

そもそもステイホームという言葉は、よく考えるとちょっと変です。家で過ごすのは当たり前のこと。逆に言えば、日本人は家にいるのがあまり好きではなく、これまでは家にあまりいなかったので、半強制的なステイホームを呼びかける必要があったのかもしれません。

「ハレとケ」という言い方がありますが、ケ=日常・平日は残業で家にいない。働き方改革で早く家に帰れるようになっても、寄り道してしまう。ハレ=非日常・休日はお出かけすることが善で、レジャーに行ったりショッピングモールに行ったりして家にいない。デフォルメしていますが、当たらずとも遠からずではないでしょうか。

家にいないのは、使い勝手が悪い・暑い・寒いなどストレス要因があり居心地が悪いので「家にいたくない」ということかもしれません。そうなると休日でもお出かけしてしまう。家が居心地よく楽しめる場なら、積極的にステイホームして家で楽しめばいい。無駄にお金もかかりません。

積極的ステイホームの観点からも高断熱化をおすすめします。


広く多目的になるリビング 高断熱化で居心地よく
積極的にステイホームする際のポイントなるのがリビングです。

半強制的ステイホームで、外で行っていたことを家で行う機会が増えました。その典型がテレワーク(在宅勤務)です。外=会社に行けないので家で仕事をする。他にも、外食できないので、家で食事をつくってみんなで食べる。ジムやヨガ教室に行けないので、家&オンラインで筋トレやヨガをする。学校に行けないので授業も、体育も、ダンスなどのクラブ活動も家で。

これらを家のどこでやっていたのかといえば、リビングが多い。今後積極的にステイホームするなら、リビングは広くとり、多目的に使える工夫をしておく必要性も見えてきました。

特に今後も自宅で仕事をするなら、リビングのどこかにワークスペースを設けるのもいいでしょう。完全な個室もいいですが、個室が取れない、もしくは仕事中も家族とも程よい距離感でいたいのなら、リビングが選択肢になります[図3参照]。子どもの勉強スペースをリビングに設け、親と一緒に学ぶ・仕事をするスタイルは以前から見られましたが、今後は一層普及しそうです。

このようにリビングを広く多目的化するなら、やはり〝暑い・寒い・光熱費がかさむ〟リビングはNG。また、リビングの窓は大きく取りたいので、上記3つを防ぐためには樹脂窓など断熱性能が高い窓が不可欠ですし、夏はブラインドやオーニングなどで日差しを遮る工夫、冬は逆に日差しを取り込んで熱を蓄える工夫も大事です。

高断熱化だけでなく、こうした工夫ができる工務店・設計事務所・住宅会社を選べば、リビングはもちろん家じゅうが居心地よくなり、積極的にステイホームを楽しむことができるはずです。


高断熱化が家づくりのニューノーマル(新常識)に
コロナ対策として換気への関心が高まっています(この後のページで解説します)。また、[写真]のように玄関に手洗いを設置したり、玄関わきに宅配ロッカーを兼ねたストックスペースを設けてステイホームや災害に備えるケースも増えるでしょう。これからはこうした工夫も「ニューノーマル」=新しい当たり前・新常識になっていくかもしれません。

画像3

ですが、もっと重視してほしいのは住まいの居心地で、そのベースになるのは高断熱化です。

皆さんも「ヒートショック」という言葉とそれを防止するには室内の温度差を少なくすることが必要だということはご存じだと思います。高断熱・高気密化し冷暖房設備を適切に導入することで温度差は小さくでき、ヒートショックのリスクを下げることができます。また前にも触れましたが「冷え」は不調の原因で万病のもと、言い換えれば「寒い家は万病のもと」で、室温を適温(18℃以上が目安と言われています)に保つことは、健康長寿にもつながります。そして、最初にも述べたように、積極的にステイホームしても光熱費を抑えることができます。

高断熱化は家づくりのニューノーマル、そう言えるのではないでしょうか。

画像4

※本記事は雑誌「だん07」に掲載されています

★高断熱住宅専門誌「だん」についてはこちらをご覧ください