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夏はどうして不快なのか? 住宅の夏の暑さ対策

家の中で熱中症にかかる高齢者が増えているというニュースが年々増えていますが、エアコンをつけていたのに…というケースも今年はよく耳にします。そもそも家の中で夏に感じる不快は解消できるのでしょうか。東京大学の前真之准教授に夏の暑さ対策についてお話を聞きました。

基本は高断熱化。特に屋根/天井断熱

基本は熱の影響を受けにくくする=高断熱化することです。冷房が効きや
すくなるのもメリットです。とくに有効なのが、屋根の断熱を強化すること。冬の寒さ対策にも有効ですが、夏にはもっと効きます。夏は太陽が真上から照りつけるので、天井がかなり熱くなりますが、屋根断熱することでこの不快感を大きく軽減できるからです。

夏の不快の原因

環境工学の視点で見た快適な温熱環境の条件は、①体全体から適度な「放熱」(=熱を逃がすこと)ができること、②局所の不快がないこと(上下温度差や室内表面温度ムラなどがないこと)の大きく2つを挙げることができます。ざっくり要約すると、家の中では、体からの放熱量が足りない場合、天井が熱い場合に、暑さによる不快を感じるということです。

①体の熱バランスを確保
運動したり食事をしたりすると、体の内部に「代謝熱」が発生します。これを体の表面から「放熱」することで、人間は熱のバランスをとっています[図]。代謝熱の量より放熱する量が少ないときに、人は暑さを感じます。夏は外気の温度が高いので自然に放熱することが難しくなり、暑さを感じるのです。

一番簡単な暑さ対策は体をあまり動かさないこと。熱帯で暮らしている人がゆったりと動いて生活しているのは、体の内部の代謝熱を増やさないため。ゆったりするのが夏にあった過ごし方です。また、着衣量を減らしたり、自然風や扇風機を利用して放熱しやすくする、といった対策で放熱量を増やすことも有効です。

②局所不快を解消する
局所の不快をもたらす要因には、①気流感、②空気の上下温度差、③床の表面温度、④室内表面温度(放射環境)の不均質の4つがあります。

夏に限って言うと、熱い天井は不快の最大要因です。熱くなった天井から遠赤外線で頭が加熱されるからです。これを解消しようと、断熱性能が低いままで無理やり冷房で冷やすと、足元だけは涼しくなりますが、頭は熱いまま。上下温度差と室内表面温度の不均質がダブルで不快な状態になるので、非常に不快な状態になります。屋根の断熱を強化することで天井が熱くなることを防ぐのが、根本的な対策です。

※雑誌「だん01」から抜粋掲載(Kindle版発売中)