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高性能住宅の暮らしの快適さと心地よさを、ただたくさんの人に伝えたい施主「さぬきペンギン」さん|「だん」家づくりラジオ

6月に放送した「だん家づくりYouTubeラジオ」から抜粋・編集しています
※聞き手:だん編集委員(石川、沢井、三浦)

だん編集委員(以下だん):新建新聞社が発行する「だん」という雑誌は高性能住宅に特化した専門誌として、家づくりを考える皆様へ高性能住宅のメリットや住まい手の声をお届けしています。 このラジオでは我々「だん」編集委員が様々なゲストをお迎えし、これから家づくりを考えている皆様に、高性能住宅にまつわる話をゆるく、深く、面白くお送りします。本日はいわゆる「プロ施主」と私たちが呼ばせていただいているさぬきペンギンさんをゲストにお迎えしてお話をうかがいます。

さぬきペンギンさん:高性能住宅の暮らしの快適さを、電気代や温湿度などの実測値を交えてブログやTwitterで発信している施主(高性能住宅マニア)
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さぬきペンギン@高性能住宅マニア

さぬきペンギンさんのご自宅。高性能住宅の暮らしを実測値を交えてブログで発信している
(写真提供:さぬきペンギンさん)

さぬきペンギン(以下さぬペン):「なにがでっきょんな?」さぬきペンギンです。

だん:まず最初に「プロ施主」について簡単に解説すると、造語なんですが、いい意味でも悪い意味でも誤解されて広まっている感じがしてて。「プロを超える施主」という意味ではなくて、「プロ並みの意欲を持って家づくりをする」ということと、「プロシューマー/prosumer」という言葉があって(コンシューマー/消費者からの発展形)、自分たちで積極的に生産をする人たちのことを指すんですが、情報を生産する=自分たちの家づくりの経験をどんどん発信するような人たちがプロシューマーで、その情報を次の施主が参考にしていい家づくりが広まってほしいという。そんなポジティブな意味で「プロ施主」という言葉を造語してみたんですけど、いま結構誤解を受けているようで。今日はそのあたりも含めてお話しできればと思います。

だん:家づくりの情報をブログやTwitterで発信しているきっかけは?

さぬペン:家づくりをするにあたって「情報」をどこから集めたらいいのかな?というところから始まって。僕が家を建てたのが4年ほど前なので、今のように家づくり系YouTubeがほぼなかった時代。当時ブログで勉強したので、自分の家をつくる時には同じようにブログで発信できればと。しかも「工務店の家づくり」ということで、ハウスメーカー(以下HM)の家づくりとは違った新しい切り口で発信できるんじゃないかなというのがきっかけです。

だん:家を建てられた時の家族構成は?

さぬペン:妻と子ども3人です。

だん:家を建てる過程で「高性能」にたどりついたんですか?経緯を教えてください。

さぬペン:まずは住宅展示場に行って「どれにしようかな?」みたいな。もともとは妻の実家の家づくりをするにあたって展示場に行ったんですけど、最初に入った展示場がハズレでして。その時の対応があんまりだったということと、大手HMさんだと結構なお値段もするし…というので、こんなもんなんだな、と知ったという感じでした。

だん:どの辺がイマイチだった?

さぬペン:私も営業の仕事をしているので、営業マンの仕事ぶりってわかるんですよね。どういうことを考えて相手をしているのか、何を思いながら対応されているか、というのを肌で感じて。いい対応ではなかったので、絶対HMでなんかで家を建てるか!という感じになって(笑)。

だん:総合住宅展示場っていうと、全国展開をしているような大手HMが8割くらい、2割くらい地域の工務店さんが入っていますよね。そういう大手HMに行って、違うと思ったと。

さぬペン:「違和感があった」というのが正直なところで。そこから、いざ自分が家づくりを始めようという時に何からやったかというと、新聞の折り込みチラシやネットで見学会の案内を見て、参加しようと思ったところからです。家づくりに関しては無知な状態で臨んでいたので、見るものといったらデザインや設備とかくらい。「あ、すてき♥」を見つけに行っていたという感じでした。

ある時「構造見学会」というものを開催している工務店があると知って。そこに行ったときに初めて「家の秘密になる見えない部分」が見られる→中身(隠されてしまう部分)が見られるということは自信があるということだと。

だん:「構造見学会」というのは「建て方」と言われる柱を組んだ段階や、その先の断熱材を張った状態だとか、建築中の建物を見せるという見学会なので、自信がある工務店は躯体(柱や断熱のあり様など)を見てもらうっていうもの。そこで、それがいかに大切なのかを説明するという見学会です。

さぬペン:それまではデザインとか設備とかだけを見て夫婦で話し合っても答えが出なかったんですが、構造見学会でクリアになったというか。妻に「結局どんな家がいい?」と聞いたら「暖かい家。寒くない家がいい」と返ってきた。その時に扉が開いたというか、「じゃぁ寒くない家ってどんなんだろう?」というところからブログを読み漁るようになりました。

だん:施主ブログ?

さぬペン:施主ブログではなく、「高気密」「高断熱」というキーワードで検索して見つけたブログです。当時施主ブログで高気密・高断熱というのはほぼなかったので、プロ(施工者)向けのブログです。そこでたどり着いたのが、オーガニックスタジオ新潟の相模さんのブログで、それを7~10年分くらい必死で読みました。そこから秋田の西方さん(西方設計)や兵庫の松尾さん(松尾設計室)につながっていって。「床下エアコン」とか刺さるキーワードを見つけては勉強していったという感じです。高性能住宅の家づくり関連本も色々読みました。

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だん:その情報をベースに高断熱の家をつくる工務店を探しに行ったという感じですか?

さぬペン:結局、構造見学会をやっていた工務店さんにお世話になりました。その工務店さんも従来の家づくりから新しいチャレンジをしたいから、よく勉強されているさぬペンさん一緒にそういう家(高性能住宅)を建てませんか?という話になって。

だん家のスペックをお聞かせください。

さぬペン:「香川県で北海道基準の家を建てる」ということで、UA値が0.25W/㎡K、気密(C値)は0.5c㎡/㎡以下を目指すという。窓はYKK APのトリプル樹脂サッシAPW430です。断熱材はロックウールで、壁が200mm、天井が300mm、基礎は50mmを内外両側に。リビングのメインの窓はAPW431(大開口スライディング)です!

リビングの大開口スライディング窓
(写真提供:さぬきペンギンさん)

だん:ガラスの種類についてもブログに書かれていましたよね。

さぬペン:当時すごく悩んでて。日射取得型と遮蔽型の選択を迫られていた時、ほとんどのブログでは日射取得型を推されていたんです。オーバーヒートするというような情報も当時色々見た中で悩んだ結果、遮蔽型にした、という話ですね。設計士さんと、どっちにするか悩みました。窓の外に日射遮蔽装置(アウターシェードや電動ブラインドなど)をつける予定もなかったので。

だん:勉強されたとはいえ、ガラスの種類をどっちにするとか相談をされて、自分で選択したかったのか、断熱材や性能値だとか、どの辺までご自身で関与されたんですか?

さぬペン:断熱材の構成については工務店さんから提案していただいたのを使ったんですけど、窓の種類や位置なんかは間取りも含めて自分たちで考えていました。どちらかと言えば自分たちで決めたいという思いの方が強かったです。

だん:間取りって難しくないですか?

さぬペン:間取りって、考えれば考えるほど楽しくなって。途中で一回、妻と大喧嘩するくらい悩んだ時はありましたけど。最初、性能のいい家を建てるなら総2階という縛りの中で考えていて、そこに合うように間取りを考えていたんですが、そうなると配置などが難しい。喧嘩になった理由は、妻が求めていたウォークインクローゼットを「これ、(本当に)いるんか!?」と言った時に口をきいてくれなくなるという(笑)。

当時、1階にウォークインクローゼットをまとめて家族全員が脱ぎ着したものはそこに、というイメージでいたので、1階で全部完結しようとするとリビングや風呂、洗面脱衣など要素が多すぎて入りきらなくて。ただ、間取りは一人で考えるものではなくて夫婦で考えるものなので、これから家づくりをされる方にはそのあたりを気を付けてほしいなと思います(笑)。

だん:高性能住宅で数値を追求された時の、奥様との(数値による考え方の)キャップなどはありましたか?

さぬペン:それは家づくりを始める前に終わっていたんです。工務店の宿泊体験モデルハウスに泊まったのが12月ごろだったんですが、その時に初めての感覚といいますか「高性能な家ってこんなに暖かいんだ!これだったら間違いないな」というのを家族で実感していたので、性能は僕に任せられて、妻は仕様とかを決めようと。なので数値などのギャップというのはなくて、最終目標を「暖かい家にする」という中でいろいろと決めていきました。

だん:宿泊体験ってすごくいいですよね。やっぱり一晩過ごしてみると一通りの生活を疑似体験できるので。数時間よりは一晩、朝昼くらいまで体感できると、どんなふうに日がさしてきてどれくらいの温度になるのかもわかるので、建てる前にはぜひ宿泊体験を!

誌面でも宿泊体感リポートというコーナーがありますが、コメントで「お子さんがぐっすり眠れた」とよく聞きます。

さぬペン:うちの子も一番下の子が当時まだ1歳くらいだったんですが、(宿泊体験では)夜中全然寝ない子が朝までぐっすり眠って、暖房もつけてないのに朝起きても部屋が全然寒くないということが衝撃的でした。その時に子どもから「この家がいい!」って言われて。

同じようなスペックの高性能住宅を建てたいという目標のもとでそんな体験をして、アパートに帰った次の日に家族全員風邪をひいたというね(笑)。やっぱり違うんだなと改めて思いました。

だん:最高のエピソードをありがとうございます(笑)。宿泊体験をやっている工務店は少なくなってきてはいますが、建てる前に近くの工務店(宿泊体験をやっているところ)を探してぜひ一度体験していただきたいですね。

さぬペン:車でも試乗ってありますけど、家でも試住(しじゅう)ができるといいですよね。やっぱり見るだけと泊まるのとでは時間軸が全然違うので、体験できるものが違うなと思いました。

だん:高い買い物の割には住宅って試せないというところありますからね。

さぬペン:空調をきっちり調整された空間(モデルハウス)に入って「快適でしょう」と言われることは多いですけどね。泊まってみて、朝起きてどうか、というところまでわかったほうが確実だと思うので。

だん:冷暖房費はどのくらいなんでしょう?

さぬペン:オール電化のプランで夏が1万8000円*、冬が1万2000円くらいですね。それで家じゅうを(年中)20℃以上25℃以内を平均で保っているような感じで暮らしています。
*夏はエアコンを連続運転した料金

だん:全国の住まい手が憧れる生活ですね(笑)。

さぬペン:平均温度を伝えたのは、これを言わないと「快適」って人によって違うので。僕が(ブログなどの情報発信で)心掛けているのは実測値をしっかり載せることで、こういうふうになってますよ、というのをちゃんと伝えたいというのがあるので。

だん:すごく大事ですよね。これまで住宅業界で決定的に足りなかったのは、住んだ後の情報です。本当は工務店さんがお施主さんのお家にお邪魔して実測値や色々な情報をいただいたりするのがいいんでしょうけれど、アフターメンテナンスがなかなか行き届かなかったりするような場合、足が遠のいてしまったり。本当は一番大切な「住んだ後どうだったか」という情報で工務店さんは改善ができるはずですが、それがあまり進んでこなかったんですよね。だからこそ、さぬペンさんのような「プロ施主」が住み心地を実測値でどんどん発信するってすごく有意義だと思います。次の施主の学びになるだけじゃなく、住宅業界の学びにもなりますから。

だん:これまでの家づくりブログって、家を建てるまでのストーリーが多かったと思うんですけど、建てた後の話ってなかなか聞けなかったので、その発信というのは新しいですよね。

さぬペン:僕もそう感じていて。以前の家ブログというと、「HMで建てました。こういう理由でこういう仕様を選びました。こういう設備を入れてこういう家ができました。いくら値引きできました」っていうようなブログばかりだったので。

僕自身も香川で北海道基準の家を建てて、正直どうなるのかわからなかったという部分もありました。宿泊体験はしましたけど、実際に暮らしてみてどうなるかなんてわからなかったので、それ(暮らし)がどうなるのか見てください!というつもりで始めたブログでした。だから、住んでからの暮らしを発信しなかったら意味がないなと思っています。

だん:売り手側(業界)はどうしてもポジショントークだったり、最終的に自分の会社で家を建ててもらうために誘導すると思うんですけど、住まい手がリアリティーを持って自分の体験から「こういう家づくりがいいんじゃない?」って発信することって、利他な気持ちですよね。利己的なモノよりよっぽど信頼できる。実際に住まわれているから言葉に重みがありますよね。

さぬペン:重みというよりは、それしかないんですよね。自分が建てている(施工している)わけではないので。自分が暮らしてどう感じたかを発信して、本当にそれが快適でいいものなので、だったら「こういう家、よかったらどうですか?」というような。ごはん屋さんに行って「これ本当においしいから食べてみて!」っていうような、そんな気持ちで。

エンドユーザーである施主からの情報が、今後の家づくりをより良くしていく上では必要かなと思っているところはあって。建てる側(住宅会社)の理論でこれまで家づくりがされてきた部分があって…性能に関しても「そこまで必要ないだろう」と住宅会社が言うことに対して、施主が「いや、必要です」と声を上げることで、(住宅会社側も)それまで使っていたもの(や性能を)をより良いものに変えていくということが起これば、改革が進むのかなという思いがあります。

だん:「だん」もそういう思いで発行しているので、エンドユーザーにもっと知っていただきたいですね。

さぬペン:そうですね。エンドユーザーのTwitterだけじゃなくブログもですし、HMだけでなく工務店さんや設計事務所さんも発信をしてくれる人が増えてきているので。

だん:今後こんな情報を発信していきたいという展望・野望はありますか?

さぬペンTwitterで「#高性能住宅の暮らし」という発信を日々やっていて、そこで感じたことを発信していく…もう4年になるんですけど、ちょっとしたことを変えるだけで1日の(室内)温度が変わったり湿度が変わったりというのがすごくわかるんですよ。そういうもの(住まい方の工夫)を発信していきたいなと思っています。

だん:最後に家づくりを考えている方にアドバイスを。

さぬペン:家づくりって要素が多岐にわたりすぎて、選ぶのも大変ですし正解もないとは思うんですけど、僕が推せるのはやっぱり「断熱」「樹脂サッシ」。これを選べば結露もなく過ごせるということが自分でわかったので、「快適に過ごすために簡単にできる方法」というところでこの2つ。

「性能のことしか発信してない」とよく言われるんですが、家づくりの他のこと(意匠や設備)ってすでに発信は終わっていると思っていて。

だん:意匠や設備は好みですからね。

さぬペン:「性能だけじゃなくて意匠も大事」というのももちろんそうなんですけど、意匠は万人に受け入れられるものではないですよね。でも性能は確保すればみんなが「暖かくて快適な場所」が享受できるから、そっちの方が僕は大事だなと思っているというところから発信をしていますので、おわかりいただけるとうれしいです。

だん:貴重なお話ありがとうございました!

「だん家づくりYouTubeラジオ」は不定期でお届けしています。第1回目のゲストは近畿大学建築学部教授の岩前篤さん。家づくりを検討中の方はこちらもおすすめです。

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