家族会議のススメ。|住宅収納スペシャリスト川島マリ
住宅収納スペシャリストの川島マリです。
ここ2~3年、インスタやSNSを見て収納や片付けについて質問をいただくことが増えましたが、ネット上にはさまざまな情報があふれているため、情報迷子になっている方が増えているようです。あまりたくさんの情報を見てしまうと、どこから手を付けたらいいのかわからなかったり、何をしたいのかもわからなくなってしまいがちですよね。
収納を考えるうえで大切にしてほしいことは、その家で暮らす人全員のモノの置き場所を決めることです。
小さいアクセサリーでも、置き場所が決まっていないと適当にその辺に置かれたままになってしまうので、使ったら必ずここへしまうといった明確な置き場所が必要です。
また、収納や片付けは奥様任せにされがちですが、それぞれのモノの置き場所は各自が把握している必要があるため、一人で決める前に家族でモノについて話し合う場を持つこと、すなわち「家族会議」をおすすめします。
「家族会議」と聞くと、堅苦しさや重々しいと感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。我が家では、何か決めたいことがある時は「ねぇちょっと〇〇について話そう」と家族で話す時間を持つようにしてきました。テレビを見ながらなんとなく話すといったおしゃべりではなく、「〇〇について話しましょう」とテーマを伝えて食事の後や休日に時間をつくるのです。
「会議」となれば思いつきで話すのと違い、テーマや目的を決めて着地点まで話せますし、意見が違うなら折り合いのつくところを冷静に探せます。結論を出したいことを話し合うこと=会議という意味で、ここではあえて「家族会議」と呼ばせていただきます。
テーマはいろいろと変わりますが、好み、価値観、考え方の違いなど相手の考えを聞いているので、大きなズレはありません。それでも長いこと一緒に暮らしていると思い込みから小さな勘違いがよくありますので、頻繁に話すことは重要です。
そこで、今回はなぜ家族会議をするのか、会議で話し合う時に使う項目や、私の結婚30年の暮らしの変化で経験したことを書いてみます。
片付けや収納に家族を巻き込む
個人のお宅のコンサルティングをしていると、私からの質問に答えているご主人の横で聞いていた奥様が「そんなことを考えていたの?」と驚かれることがよくあります。一緒に暮らしていると同じ考え方気持ちでいると思い込みがちですが、話をしてみると全然違うことを考えていたということはよくあります。
例えば“本が片付いていると思う状態”について聞いてみましょう。
・まとめて積まれていれば片付いていると思う人
・本棚へ戻すまでと考える人
・本棚の中で高さやジャンル別に整理整頓されている状況までを考える人
など、人それぞれに片付けの基準が違います。
マンガや小説などの続きものは、1巻から順に並べたい人と、同じ本がまとまっていればそれでいいという人もいます。
このように人の基準は自分と違うのですから、まずは互いに考えていることをよく聞く、自分の考えを共有することから始めてみましょう。これはあらゆる場面で必要ですが、大事なのは共有することであって、考え方を押しつけることではないということです。
どんな項目で話せばいいの?
『進学』『引っ越し』といった大きなイベントごとではなく、話し合わなくてもやり過ごせてしまいそうな小さなテーマでも、会議はおすすめです。
特に片付けや収納など奥様がひとりで抱えてしまいがちなことは、家族で会議をすることでみんなの問題になります。
どんな内容でもまずはテーマ(議題)と目的、4大項目を決め、この項目に沿って話し合うといいでしょう。
4大項目
・気になっていること
・気持ち
・改善したいこと
・夢や希望
次に、この4大項目を使った家族会議の例を紹介します。
家族と一緒に成長する家
子どもの頃から片付けや収納が大好きで模様替えやDIYをしていましたので、35歳で注文住宅を建てた際には、間取りから収納プランまで自分で考え片付けやすい住まいを完成させました。スッキリ片付いて気持ちのいい毎日でした。
ところが、下の子が小学3年生になり、プリントや習い事の道具、玩具、洋服とモノが急激に増えていきました。ちょうどその時期に私も仕事を始めたため、ゆっくり片づけをする時間も作れず溢れたモノをひと部屋に押し込んでいるうちに、モノで埋め尽くされた部屋ができてしまいました。
他の部屋はスッキリしていたのですが、常に「あの部屋を片付けなくては」と憂鬱な思いが頭をよぎり、それをストレスと感じ始めていました。
それから6年、仕事を辞めて久しぶりに部屋を片付けると、清々しい気持ちになり、そこから片付けにハマりました。
この会議の最大のテーマは「モノ」です。あやふやになっている状態のモノをどうするのか話し合いました。
モノの会議は、①②③④のモノや場所を見ながら家族全員で話します。
①いつも片付かなくて置きっぱなしになっているモノ
②収納はされているが、使っているかわからないモノ
③リビング・洗面所(パブリックゾーン)に置いておきたいモノ
④自分たちの個室(プライベートゾーン)へ移動してもいいモノ
家族全員で話すことによって、「これ誰の?」というモノが一瞬でどうしたらいいのか決まります。
「気持ち」について話し合ったことは、諦めるきっかけになりました。というのも、私はスッキリと片付いたモノが置かれていない状態が好きなので、最初はその暮らしに家族を合わせようとしていましたが、子どもたちはモノが置かれたままの状態でも全く気にならないとわかり、好きな暮らし方の違いを知りました。基準の違いを認識したのです。
また、思春期の子どもたちは学校や友人、自分が楽しんでいるものへの関心が強く、家には関心も興味がもないことがよくわかりましたので、必要以上に期待することをやめました。すると、自分が楽になりました。
持ち主が分からないまま置所が決まらないモノ達が一斉に片付いたことは大きな成果でした。これの経験を踏まえ、お客様にも家族会議を開くことをおすすめしています。
夫が片付けに協力的になったのは、この会議がきっかけのように思います。夫はキレイに暮らしたいとは思っているけれど、忙しいので片付けまでするのはしんどい。でも使ったら戻す協力はできると言いました。
それからは、用・不要の判断をしてもらいたいモノをまとめて確認してもらい、私が収納場所を決めることにしました。
現在は、母の介護のために私と子どもは実家のある東京へ移り、横浜の自宅では主人が一人で暮らしています。週末に自宅に帰ると、私が住んでいた頃より綺麗に暮らしているので驚いています(写真)。
引っ越し前の家族会議で、年齢的にも今後のことを考え生活を小さくしていく必要があること、どちらの家にもなるべく新しいモノは増やさないことを決めたので、モノが増えていないことが大きいのだと思いますし、それまで積み重ねた家族会議の成果だと思っています。
荷物と家具は、私と子どもたちの引っ越しと共に減りました。
二部屋空いた子ども部屋は、今はお客様用として主人の友達が泊まっています。
家は家族の生活にあわせて成長・変化していくと、しみじみ思います。
その過程で、毎回必ず考えることはモノと収納の関係です。
家づくりの家族会議では「理想の暮らし方や、家での過ごし方」といった大きな議題(テーマ)から決めてください。そのテーマや思いを大切に、各部屋の使い方、持っていたいモノ、収納先を家族で話しあうと、モノが中心の家ではなく、家族の思いが込められた家が完成します。
著書『はれやか「収納マップ®」』第1章では、家づくりの時にあまり考えずにとりあえず収納場所だけつくったケースと、家族で話し合って「収納マップ®」づくりに取り組んだケースで、その後の人生がどう変わったかを紹介しています。