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日本の美意識「侘び・寂び」が感じられる茶室の基本①

茶室の屋根

茶室の屋根の形は切妻・入母屋・寄棟・方形に、出庇(土庇)をつけた庇造りが茶室構えの条件とされます。客の出入口である躙口を屋根の妻側に設ける「妻入」と、棟側に設ける「平入」があり、これによって屋根の形が決まります。出庇は室内の掛込天井の化粧屋根裏がそのまま屋外まで伸びたもので、室内と露地の自然を融合。軒裏材料は赤松の皮付や香節や雑木の小丸太を垂木に使うなど、自由に選びます。

屋根材は昔は茅葺き・柿葺き・板葺きなどが中心でしたが、現在は法律の制限などから瓦葺き・銅板葺き・その他の金属葺きが普及しています。

また、茶室は屋根の形と向きには特に注意が必要です。樋は3寸くらいの孟宗竹を2つに割り、節を抜いた竹樋が使われ、毎年秋の口切の茶事の際に取り替える習慣になっています。

外壁は藤蔓を巻いた小舞下地に荒壁を下塗りし、中塗り・上塗りを重ねた土壁とします。土壁は京都産の聚楽土が最高とされますが、最近では繊維壁を使った土壁の模倣仕上げも用いられています。

平面・間取り

平面計画・間取りで大切なことは、亭主が座る点前畳に対して客畳をどう配置するか。懐石(食事)・喫茶・点茶のための準備や後始末のための水屋の位置を最初に決め、茶事の動線を検討して亭主の出入りする茶道口(勝手口・給仕口)を決めます。

次に点前畳にどう進むかを考えます。基本的には踏込畳に一歩進んでから左または右に曲がって、点前畳に座ります。また、踏込畳からまっすぐ2~3歩入って点前畳に入る方法もあります。点前畳の右に客畳(客が亭主の右に座る)がくる場合を本勝手、左側にくる場合を逆勝手と呼びます。

炉切り

茶室における炉の切り方(位置)は、宗派・流派によって多少異なります。一般的な点前座(点前畳・道具畳)に炉を切る入炉と、点前畳以外の畳や板に炉を切る出炉があります。入炉には点前畳の客と面する側に炉を切る向切と、亭主の後に炉を切る隅切があり、出炉には台目切(台目畳に沿って切る)と、四畳半切(半畳の中に炉を切る)があります。

つまり、入炉2種類・出炉2種類、さらにそれぞれに本勝手・逆勝手があるので計8種類の炉切りがあります。これを「八炉の法」と呼びます。点前畳と客畳の間や点前畳の正面に幅の狭い板を挟み込むことがありますが、これをそれぞれ中板・向板と呼び、ここに炉を切る場合もあります。四畳半までの小間では本勝手の台目切や向切が多く、四畳半以上の広間では本勝手の四畳半切が使いやすいといわれています。

炉は寒い季節には土炉・石炉や金属製の炉をヒノキ材で囲って使い、暖かい季節には金属製や土製の風炉が用いられます。夏(5~11月初旬頃)の風炉、冬の炉と使い分けるのが一般的です。また、切腹畳にならない位置に炉を切ります。畳の敷き方と炉の位置を考慮して、亭主・客の動線も考慮することが必要です。

中央部の板戸部分が躙口。

上記の記事は、伝統建築を改めて見つめ直す本「和風住宅24」に掲載しています。特集は「内と外」。建築家の住宅事例から、地域の設計事務所や工務店の事例まで、見どころ満載です。

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