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短い言葉で表現する意味

感動を覚え、印象に残る言葉は全て短い言葉です。

当たり前のことですが忘れがちです。

伝えよう、印象に残したいと思ったら、短い言葉で伝えることが必須だということを改めて考えています。


印象の残る和歌

プレバトという番組が人気のようです。

俳句の添削コーナーがあり、芸能人が毎週俳句を持ち寄り、評価を受けるというものです。

先生の解説を聞いていると、俳句の奥深さを感じます。

言わなくてもわかることや、重複するような表現を避け、順番に気を使い、無駄を削ぎ落とし、その上で面白い物の捉え方が必要になります。

そうして練られた表現だからこそ、たった17字ですが、ストレートに人の心に響くのかもしれません。

俳句のみならず、和歌、中国の故事などもそうでしょう。

優れた作品は自然と印象に残るから不思議です。

特に、考え方や感性が同じではなくても、それでも心に響くからまた不思議です。

初めて聞いた時からずっと頭に残っている和歌があります。

明治の軍人乃木希典大将の辞世の和歌です。

うつし世を 神去りましゝ 大君の みあと志たひて 我はゆくなり

「明治天皇が崩御されたから、私もそれに続いて死ぬとしよう」という意味になります。

もちろん現代人の私は、このような行動には賛同できません。

普通に文章として、決心した経緯や心境を長々と書かれていたら、印象に残ることもなく忘れていたことでしょう。

それでも、この歌を見たときに、感ずるものがあり、ずっと頭に残っているのは短い言葉の力でしょう。


名スピーチも、短いから心に響く

プレゼンや、スピーチなどでは、短い方がわかりやすいとはわかっていても、なかなかそれができません。

なぜなら、心配だからです。

誤解があったら大変だ、内容や思考が浅いと思われたくないという思いがあります。

だから保険のように、色々な言葉を盛り込んでしまいます。

強い覚悟で、優先順位をつけて、極力無駄を削ぎ落とし、短い言葉で示すことを意識する必要があります。

外国でも、名演説と言われるスピーチは、どれも短いものばかりです。

リンカーン大統領も、キング牧師も、スティーブ・ジョブズもそうです。

日本で短い上手な演説といえば、田中角栄元総理でしょう。

大蔵大臣に就任した際、小卒の田中角栄がエリート集団である官僚の前で話した就任演説は有名です。

私が田中角栄だ、小学校高等科卒業である。

諸君は日本中の秀才代表であり、財政金融の専門家ぞろいだ。

私は素人だが、トゲの多い門松をたくさんくぐってきて、いささか仕事のコツを知っている。

一緒に仕事をするには、互いによく知り合うことが大切だ。
われと思わん者は誰でも遠慮なく大臣室にきて欲しい。
なんでも言ってくれ。
上司の許可を取る必要はない。

できることはやる、できないことはやらない。
しかし、全ての責任はこの田中角栄が背負う。以上!

就任演説などは、ともすれば延々と聞かされそうなイメージですが、実に短い言葉で区切られた名スピーチと言えます。

エリート集団を前に、やる気や、今までの実績など、少しでも自分のことを話して保険をかけておきたいと思うのが人情だと思いますが、

長い説明をすることなく「トゲの多い門松をくぐってきた」という表現でまとめています。

そして要望もまた、短い言葉でまとめられて明確です。

自信と力強さ、そして意志の強さを感じます。

このスピーチで、田中角栄はエリート官僚からも一目を置かれたというのも納得です。


あれもこれも詰め込んで、一つの文章が長ければ、相手の記憶にも印象にも残りません。

自分が聞く側の立場になった時のことを思い出せばよくわかります。

相手に伝えたいことは、無駄なことを一切言わずに、短く簡潔に。

簡単ではありませんが、心がけておきたいことの一つです。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

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