私の彼氏(夫)は「あなた」?「あんた」?「〇〇さん」? 韓国語の呼称とその字幕 1
こんにちは!韓日映像翻訳者のコアラです。
韓国ドラマを見ていると、夫婦間または恋人間の呼称ってバラエティに富んでいますよね。
まずは、妻(彼女)が夫(彼氏)を直接呼ぶ時(二人称)を見てみましょう。
오빠(オッパ), 자기(チャギ), 당신(タンシン), 여보(ヨボ), 〇〇아빠(何々アッパ), 〇〇씨(何々シ)
「오빠(オッパ)」は直訳すると「お兄さん」です。
韓国では血縁でなくても親しい間柄の年上の男性に対してよく「〇〇오빠」と呼ぶのですが、恋人や夫婦でもこう呼ぶことがあります。
若い夫婦がよく使いますね。中年になるとさすがに「오빠」とは呼ばないような気がします。
面白いのは「자기(チャギ)」ですよね。実際には「자기야(チャギヤ)」と「야」を付けることが多い気がします。
直訳すると「自分」ですけど、相手を呼ぶ時にも使うんです。自分と一心同体ってことなんでしょうか。こちらも比較的若い夫婦が使うような気がします。
「당신(タンシン)」は直訳すると「あなた」です。
この言葉は両極端で、ケンカ相手か夫婦(恋人)にしか使いません。会話においてはニュートラルな「you」ではないんです(詩や広告文などではニュートラルな「あなた」という意味で使ったりもしますが)。
「여보(ヨボ)」も面白い言葉ですね。これは恋人の間では使いません。夫婦間のみです。
一説には「여보세요(ヨボセヨ:すみません)」という呼びかけの言葉が語源とされているとか。昔はお見合い結婚が普通で、恥ずかしくて名前で呼べずに「여보세요」と声を掛け合っているうちに「여보」となったという説があります。
「〇〇아빠(アッパ)」は「〇〇のパパ」ですね。これは子供が生まれるとこのような呼び方になるようです。日本でも夫婦で「パパ」「ママ」と呼びあったりしますよね。
「〇〇씨(シ)」は「〇〇さん」です。互いに敬意を示し、平等を尊重する夫婦は、お互いを「〇〇さん」と呼んだりもします。
では字幕ではどう訳出するの?
오빠 :夫の場合は「あなた」と出すことが多いかもしれませんが、恋人の場合は「〇〇さん」と訳出することが多いです。例えば、「준수 오빠」なら「ジュンスさん」という形です。どうしても年上ということを出さないといけないようなシーンやセリフがある場合は「ジュンス兄さん」などとも出します。ただ血縁なのか非血縁なのか混乱を避けるために「ジュンスにいさん」とひらがなで出すよう指示される場合もありますが、これはクライアントによります。
자기, 당신, 여보:この3つは大体は「あなた」と訳出することが多いです。まれにガラの悪い妻というキャラクターを色濃く出したい場合は「あんた」などとすることもあります
〇〇아빠 :二人称であれば、ほぼ「あなた」と訳出するかなと思います。「〇〇のパパ(or お父さん)」って長いですしね。何より字数を食うのは翻訳者は嫌います。子供の名前が「スホ」とかならまだ許せますけど「ヒョンジュン」とかだった日には…涙。それにそもそも日本語では、自分の夫に「ヒョンジュンのお父さん」なんて呼びかけないですしね。
〇〇씨 :平等を目指すインテリ夫婦ということなら「〇〇さん」、普通の夫婦なら「あなた」と訳出するかもしれません。
こうして整理してみると日本語で付けられる字幕はほぼ「あなた」です。
韓国語だと呼称だけを聞いて、新婚なのか、子供がいるのか、などの背景や情報まで分かることがあるのですが、日本語字幕だとそうした含みまでは訳せないのです。
でも言葉って本当に面白いですね!
それでは、また!