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地底人 その4 “人間の存在意義”

「あなたはいったい何者なのですか?」

私の問いに「私は地底人で、地下に潜った草食恐竜の末裔ですよ」と言ったその方の言葉を聞いて、私は思わず「恐竜なんですか」とつぶやいてしまったのです。

そのつぶやきを聞いたその方は「恐竜が進化しているのが不思議ですか?」と聞き返してきたので、「正直、イメージ出来ないのです」と返すと、その方は「あなたの意識の中では恐竜と怪獣が一緒になっていますが、怪獣と恐竜は違うのですよ。それに良く考えて下さい。あなた方が進化したとは言っても、アフリカで人類が誕生し、現在に至るまでのたった5万年ですよ。我々の進化がいくら遅いと言ったところで、その期間は6,500万年です。5万年と6,500万年を比較すれば、我々が人類の進化を凌駕していたとしても、何の不思議ではないでしょう?」と言ってきたのです。

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私は「そういうことを言っているんじゃなくて、なぜ今まで一度としてあなた方に会ったという記録が残されていないのか?ということです」というと、その方は「我々はそんなにドジではありませんよ。人間の存在意義は、自然が保たれるよう管理する番人なのに、人間はそれを忘れて自分たちを霊長類の頂点にいると勘違いしている。その人類の中にあって、特に白人と呼ばれる方々は最高の存在だと自負しています。もしその方々が我々の存在を知ったら危機感を感じ、戦いを挑んでくることが容易に想像できます。我々は平和主義者なので、あえて戦いが起こるようなまねはしません。だから、我々が存在していることを知られないようにしているんです」というのです。

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そこで私が「人間に存在を知られてはいけないあなたが、なぜ私の前に現われたのですか?」と質問すると、その方は「あなたに興味を持ったからです。それに今のあなたなら、我々の存在を知ったとしても、誰かにそのことを話すとも思えないし、たとえ誰かに我々のことを話したとしても、幻覚でも見たんだろうと言われるだけですよ。それから、私があなたの前に現われたのはただの偶然巡り合わせみたいなものだと思ってもらっていいのですが、あなたに時間をとらせてこんな話をしているのは、あなたを観察するためでもあるんです。我々がホログラムを使って見える姿を変えているのに、それが分かることが不思議だったから。もしかしたら、何かあるのかな?と思っただけですよ」と言った後、

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「我々は時々こんなふうに地上に来て人間社会の中で人間を観察しています。外から人間を観察していたのでは、テレビを見ているのと同じで大まかなことしか分かりませんからね。そうして人間は助けるべき存在なのか?それとも終わらせてしまうべき存在なのか?を確定しようとしています。今のところ結論は出ていませんけどね。それに、その結論は我々だけで出すことは出来ないのです。結論を決定するのには、宇宙からお出での方々も交えないと決まらないのですよ。いずれにしても、人類は監視されています。そのことを忘れないでくださいね。それでは、そろそろ私は行くことにします。ごきげんよう。また会いましょう」というと、その方は空気に溶け込むようにゆっくりと、まるで幻が消え去るように消えていきました。

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私は地底人であると名乗ったその方を、ただ呆然と見送っただけで、その後、「いったい何が起こっていたんだろう?」という疑問から、あれやこれや考えていたのですが、ふと気付いたのです。九段下のお客さまと打ち合わせをする約束をしていたことを!心の中で「まずい!約束の時間を2時間以上も過ぎてる」と叫びながら、炎天下にいたために、ただでさえ汗ビッショリ!の状態なのに、更に色々な意味での汗をかきながら、九段下のお客さんのもとに走って向かいました。



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