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工事現場を見ながら、川と海と精子と卵子へ思いを馳せる。

 

男達が働いている。ヘルメットを被り、腰にたくさんの道具をぶら下げている。重たそうな鉄骨や大きな木の板をいくつも抱えて運んでいる。なぜそれをそこからあそこへ運ぶ理由があるのか、私には皆目見当がつかない。

アルバイト先から見えるビルの外壁工事の作業風景だ。大きな建物にぐるっと足場を組んでいる様子を観察しているが、スケールがでか過ぎて私には彼らのひとつひとつの作業が全く理解できない。
個人的な感覚として、すごく男性的な部分を使う仕事だよなぁと思っている。
大きな物事を成し遂げるために作業を分解してコツコツと進めていく。見据えているのは全体の大きな完成。
足場の板を数メートル先に移動させるだけでは意味があるように思えないが、その次の工程や完成に向けての確実な一手であるはずだ。(たぶん)

現場を仕切っているように見えるおっちゃんは、昼休憩の間はふざけてニヤニヤしながら冗談を言っている。
けど彼の頭の中では全体の流れや作業員達の安全対策、人材の配置などなど全てが把握されているのだろう。単純にすごいなと尊敬の念が湧く。
他の作業員達も、私には到底想像のつかないあれやこれやの道具を華麗に使いこなしている。作業を円滑に進める為に開発されたであろう細やかな道具達を見ると、唸らずにはいられない。人間の不便を解決したがる力や知恵は最高だ。「現場の道具展」という展示会が開かれたら絶対行きたい。作業服を着たお兄さんが道具の解説をしてくれたら最高の極みだ。誰か開いてくれないかな。


男性性パワーを感じる光景は見ていて惚れ惚れする。大きな流れを作ってくれるように感じる。山を流れてくる滝や川のようだ。勢いよく真っ直ぐだ。行くぞーーー!!という気概を感じる。少しぐらいはみ出ようと飛沫がはねようと、そんな事はお構いなしで達成に向かって一直線だ。

そう考えると女性性はやっぱり海なんだろう。どーーーんと存在している。ただ、在る。そして受け入れる。凪もあれば嵐もあって表情豊かだ。可愛らしさと底の見えない恐ろしさを兼ね備えている。何もかもを内包して清濁混ざり合って渦巻いている。川の流れも海の水が蒸発して雲になり山に降り注いで生じているのだし、全ての源だ。


川と海の関係性は、精子と卵子のそれとも似ているのだなと気付く。
川があんなに(?)一生懸命、ただただ真っ直ぐに流れ流れてひたすらに目指すのは海だ。
たくさんの川が海を目指して今も走っている。何だか川が傷だらけのランナーのように思えて労いの言葉をかけたくなってくる…。

傷だらけの川は海に到達したら、ひとつになり自分なのか海なのか境界もなくなって、穏やかな気持ちになるのだろうか。
命の限り走り切った川が海に抱かれて混ざり合って、安らかで温かい存在に還るようなイメージが浮かぶ。


命が尽きる時はこんな感じなのかもしれないな〜なんて思う。
空気中に漂う分子になって、自分と何かの境界がなくなってひとつに戻る。
そしてまた海から雲が生まれて川が流れ出すように、次の人生が始まるのかもしれない。



明日もアルバイトだ。寒空の下、彼らが黙々と働く様子をまた観察するだろう。作業の流れを理解しようとは思わない。
私には理解できない事をしてるけど、すごいな〜カッコいいな〜とただ惚れ惚れしたいなと思う。何も考えずに、いいねいいね!とうっとり出来るってなかなか良いものだから。

(補足:一応ちゃんと仕事してます!)


読んでくれてありがとう♡ 燃え尽きて死ぬまでの燃費代にします🙏