見出し画像

千年古道   「仙北道」前編

歴史の道百選 八十二番

ず~っと気になっていた道があった。
岩手から秋田へ抜ける、仙北道だ。
夏に、ラジオで、仙北道と胆沢の歴史、みたいな内容だった。
放送を機会に調べてみたら、面白そうな山歩きができそうだ。
山で会う、胆沢の先輩に詳しく聞くと、大胡桃山の前半、大胡桃山から小出川までの後半と、小出川を渡った秋田県側に分けることができそうだ。
胆沢町の観光案内所のお姉さんのおかげで、資料や地図も入手できた。
つぶ沼を右にみながらダム湖の西側を走る。
橋を渡ると広場になっており、対岸には、猿岩の岩壁が聳えている。

危うくダムの材料になるところ

若い頃、KGカンテをはじめ、各ルートを夢中になって登った。
広場を過ぎると、右側に草地になったスペースがある。よく見ると、奥に、墓石みたいな街道入り口の黒い石碑がある。

ここは聞いて行かないとわからない
このあと草刈りをしていた


ここに車を停めて、歩く準備だ。
草刈りをしていないから、入り口がわからない。石碑の前まで行けば、西へ伸びる道に気付く。倒木や草ぼうぼうはこの部分だけで、杉林に入ると、鬱蒼とした杉林の中に続く、はっきりとした道を歩く。
時折車の音がするので、車道からは離れていないようだ。

これは古い物かな?


杉林を抜けると「野がしら」と彫られた自然石がある。道は北を向く。
橅と雑木林の中を歩く。高低差はほとんど感じない。
ところどころにブナの木が伸びているが、聞いた話ではこんなもんじゃないらしい。いきなり林が切れて、広大な伐採跡地に出てびっくりする。

見事な皆伐です
大雨降れば一気に崩れそうです


このことは聞いてないよ。ここで迷った。上、横、下、どちらが道なんだ。
一度上まで登る。ひと山伐採したことがわかる。これで1200年の古道は消えた。無神経と無知のなせる仕業だ。何が歴史の道百選だ。
凄まじい皆伐さに、先に進む意欲が萎えるが、この先も心配だ。
とりあえず伐採地の際を稜線沿いに歩く。下のほうにピンテを見つけ降りてゆくと、「御清水場」の石碑だ。本当にここにあったのだろうか。

探しました
本当に御清水場なの?


業者が、邪魔になるから適当に放り投げたのかもしれない。
伐採する人達は、儲けにならない道なんか、興味もないし、関係ないので、当然だが保存するわけがない。
ガックリしながら、小胡桃山に向けて歩く。足取りが重いなあ。
なんとか下を向いたまま歩き始めると、気付いたら、白い山毛欅の森に入っていた。すごい、こんな白くて大きな橅の大群は、見たことがない。
小雨のなか、まるで進撃の巨人に囲まれているようだ。

実際にのスケール感を写せない
この森は残るのだろうか


しかし、ここは特別保全地域に入っているのだろうか。地図上では地域外にみえるので、ここもいつかはなくなるのかもしれない。千古不抜は死語か。
橅の巨木群を進むと、雑木や笹が密生する森になり、道が一部不明瞭になる。ピンテもないし、不安になるが、ゆるやかに登りが続き、樹林帯を登ると、小胡桃山の頂上だ。本当に頂上かなという場所だ。
広い台地に標識。眺望ないし小雨振ってるし、ここで全体の3割くらいなので、先を急ぐ。

唐突にあらわれた山頂標識
なだらかな尾根の一角です


西に向かっていたなだらかな尾根が勾配を増してくるが、ここがアドレ坂らしい。さらに886m峰に向けて進むと、方向を西から南に変えて山らしい尾根歩きになる。しばらく歩くと、大寒沢からの道と出会う分岐に着く。
ここまで、一部不明瞭はあるが、迷うようなところもないし、極端な登りもない、やっぱり街道なのだと再確認する。
大胡桃山は、眺望絶景の坊主頭だ。
いやあ、広いし、焼石は遠いし、知らない山が連なっていて、ワクワクし、ドキドキもする。この道で唯一の展望に、夢中でカメラのシャッターをきる。ゆっくりしたいところだが、まだ道半ばだし難関はここかららしいので、小出川に向けて歩き出す。

あの黒い雲が危ないのです
焼石岳方面の見たことのない角度です

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?