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2021年6月~ウソと再構築~

夫のカバンにとんでもないものを見つけてしまってから10日余り。
私は精神の限界を迎えた。夫にどういうことなのか、聞いてみることにした。聞いてしまった。我慢できなかった。

金曜の夜、いつものように酔っぱらって帰ってきて、リビングで寝ていた夫を、深夜に起した。

問い詰め

「ちょっといい?」
「何?」
「いいから、ちょっと起きてくれる?話したいことがあって。」
中々起きなかったが、いつもと違う私の雰囲気を感じたのか、夫は起き上がってリビングの床に座り直した。
「・・・何だよ?」

私は深呼吸をしてから、ずっと飲み込んでいた言葉をその場に吐き出した。

「・・・・・。この頃ずっとぎくしゃくした感じで、どうしてなのか理由がどうしてもわからなくて、カバンの中、見ちゃった。ごめんなさい。これは何ですか?

「は? ああ。。。。。」

夫は少し黙って
「飲み屋で知り合った女の子と仲良くなって、何回か飲みに行ったけど、何かあった時のために持っていた」と言った。

目が泳いでいたし、ウソだよね?と言う気が失せるくらい、ウソだった。
そんな下手なウソがよくつけるなぁと、内心、感心してしまった。

仮説

実は私はこの10日の間、悲しみと混乱の中にいたが、一つの仮説を持っていた。

温泉旅館の領収書の日付。

これに見覚えがあった。
それは主人の15年以上前に離婚した元妻の誕生日だった。
(夫は若くして結婚して理由ははっきりと知らなかったが元妻の希望で、離婚していた。娘が一人。親権は元妻で成人して独立している。)

以前、義理の父から「誕生日おめでとう!!」と元妻の誕生日の日付で
メールが来たことがあった。後で猛烈に謝られたので、誕生日を知っていた。私と付き合い始めてからも、子供を理由に何度か会っていたようだった。離婚は元妻からの申し出で、夫は当時離婚したくなかったのだという事は何となくわかっていた。新婚の頃はそのことでよく大げんかをしていたけど、自分の娘が生まれてからは、あえて詮索しないことにしていた。

領収書の日付を見てピンときていた。相手は元妻なのではないかと。
最近、ゴルフの練習に頻繁に行くことも怪しいと思っていた。
元妻はゴルフが趣味だったと聞いていたからだ。
全ての点が、つながってくるのだ。
バツイチで再婚したのに元妻と不倫?
それは絶対に許せない。問いただしたい気持ちを後押しした。

私 「相手って、元奥さんじゃないの?」
思わず聞いてしまった。すると
夫 「そうだったら、お前はどうなの?」
私 「は?そうなの?」
夫 「前の奥さんの方が良かったって言ったらどうなの?」

どうなの?って言われたって、答えようがない。意味わからない。
今考えれば、「そんな言葉を発するあなたと結婚したのが間違いだった」と答えるのが正解なのだけど。

バツイチだったあなたが、しつこいくらいに結婚しようって言ってきたんじゃないの?私も好きだったことは確かだけど、この発言は本当にありえない。

「じゃあ、元奥さんに電話して確かめるから番号教えて。」と言うと、
夫はおもむろに自分のスマホを取り出し、自ら電話をかけた。
画面には確かに、元妻の名前が表示されている。
深夜だったせいか、何回かコールをしたものの出なかった。

私は取り乱し、「元奥さんてどういうこと?ありえない。お父さんお母さんにもこのこと話すから!!」と叫んだ。

その様子を見て、両親が出てくるのはまずいと思ったのか、
しばらく黙った後

「ごめん、元妻じゃないんだ。お前が娘にばかり夢中になっているから寂しくて、ギャル飲みで知り合った女性と仲良くなって、お金を払って旅行にも行ってもらった。でも、何もやってない。」と言い出した。

は???それはそれでありえない。
話が二転三転してさらに信用度が下がっているこの状況で何言ってんだ?

「じゃあ、その女に電話するから、電話番号教えて。」と言った。
もう何でもあり。

夫は「その女性は、それを仕事にしているプロの女性なので、仲介役がいる。仲介役を通してしか連絡ができないから、ちょっと待ってほしい。」
と言って寝室に引きこもった。

はぁ???? 

という文字が頭にいっぱいになったまま、一睡もできず、ベッドの中で固まって朝まで過ごした。

ありえない茶番

次の日の夕方、その仲介者の男K氏からのメッセージのスクショが送られてきた。
相手女性Yちゃんの電話番号を教えることはできないけど、非通知で奥様に電話をYちゃんからすることは可能です。とのこと。

仲介者からのメッセージが来るってことは本当なのか?
私は時間を指定して女Yからの非通知電話がかかってくるのを待った。
指定した時間ぴったりにスマホに非通知の着信があった。

Yはか細い声で、
「・・・・申し訳ございません。」の一点張り。
「でも肉体関係はございません。」
と判で押したようなことしか答えない。これは誰かに頼んだ、「Yちゃん役」の第三者なのだと直感した。もしくは本物の浮気相手がYちゃん役をやっているのかもしれない。
  
 とにかく、このクソ下手な演技をしているこの女と話しても意味がないと思い、私は二度と主人とは会わないでほしいとだけ伝えて、早々に電話を切った。

ウソなのか?ホントなのか?

仲介役Kからのメールをスクショじゃなく、本物を見せろと言っても「捨てた」と言って見せない。夫のスマホはロックされていて、顔認証なので見ることはできない。

ウソなんだろうな。と思っていた。
ギャル飲み?
プロだったらしょうがないじゃん?男ってそんなもんだよ。
ていうオチをつけたかったのかもしれない。
いろんな推測が浮かんでは消え、起きている時間のすべて頭の中を占領していた。

再構築?

一つ言えるのは、何にも解決していないということ。
相手は誰なのか?
元妻なのかもしれないし、
本当にギャル飲みのYちゃんなのかもしれない。
またはもっと別の女なのかもしれない。

もはや真実なんてどうでもよくなっていた。
私は追求するのをやめて、いったん信じることにした。
何も解決してないのに?
なぜなのか?自分でもよくわからないが
 これ以上追求してもまた違うことを言ってきて、ウソの上乗りをするだけだろう。
これ以上の茶番を見るのは、真実を知るのと同じくらいキツい。
信じてきた、大好きだった夫の本性を知るのも、真実を知るのもどっちもキツイから。

 何より、ずっと目指していた希望の中学に入れてキラキラしている娘の生活を変えることはしたくない。とにかく娘の笑顔だけは守りたかった。それだけ、娘は大切な存在だった。
 
 夫にも寂しい思いをさせていたのだろうという自覚はあったので、私が反省すべきは反省し、夫婦関係を時間をかけて立て直していこうという気持ちを込めて、私は今まで至らなかった点を謝罪し、お互い思いやってもう一度やり直したいという心からのメールを送った。

 この時点では、私は本当に家族を守りたい一心で、自分の気持ちにはフタをしていた。楽しかった家族の思い出が頭の中でぐるぐるしていて、今起こっている状況を信じたくなかった。
 家族が元に戻るなら、この出来事にフタをして、鍵をかけておきたかった。
 
 しかし、この話し合いから1ヶ月もしないうちに、私は本気で夫と戦う決意をすることになる。

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