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文化的な「地獄」の歴史は価値になるのか?(後編)

とっても久しぶりな投稿となりました。外部環境は依然改善の兆しを見せず観光分野は厳しい状況が続いておりますが、何とか施設運営は踏ん張りつつ、未来へ向けた仕込みもコツコツと進めていっております。いずれにせよ、健康であることが一番大切ですね!蔓延している情報に惑わされることなく、ウィルスの脅威に気を付けて、身近な人たちの安全を確保していきましょうね。

さて記事タイトルに(後編)とありますが、久しぶり過ぎて(前編)って何やねん、と思われる方もいらっしゃるでしょうからリンクを貼っておきます。

要約すると、歴史から紐解かれる地域の独自性ある文脈や文化的背景はとても価値がありますよ、というお話でした。そこで重要なポイントは、どのように共感して頂くかという所です。どんなに価値あるものでも、他者に共感して頂かなければ日の目を見ずに終わってしまうのです。僕らのようなローカルな人間が地域の本質的な価値を的確に見出し、世界中の方に共感頂くべく様々な形で発信していかなければなりません。では、どのようにしたら共感してもらいやすくなるのか、僕なりの見解をまとめてみました。

観光業の役割とは?

東京で働いてる時に「あなたはどんな仕事をしているの?」と問われたら、迷わず「印刷業です」と答えてました。「具体的には何をしているの?」と突っ込まれても、「お客さんの売上向上の為にプロモーションのお手伝いをしてます」と結構滑らかに答えてたような気がします。一方で、大分にUターンしてから同じ質問をされた時は「観光業です」と、とりあえずは答えてましたが、具体的にと突っ込まれると「海地獄という施設なのですけど、青い温泉が出ているのを見て楽しんで頂くというか…」といったように、答えに窮していたことを覚えています。自分が生業としていることを明快に答えられないなんてマズいですよね。観光業が提供している価値って何なのだろうとモヤモヤ考えておりました。

目線を変えて、皆さんはどういった目的で旅行にでかけますか?様々な回答があるでしょうが、一番の目的って、自分達が普段住んでいる地域には無い空気感に触れに行きたいということではないでしょうか。その地域が紡いできた歴史や文化の延長線上にある今のユニークな空気感に触れて非日常を味わい、気持ちを新たに日常へと戻っていく。それが旅行の醍醐味なのだろうと考えてます。そのように考えると、観光業を担う僕達が提供すべき価値は何なのかが見えてきました。すなわち、“地域の独自性”を訪れる方々が吸収して共感しやすくなるように、“編集”することなのだと僕は思っています。アウトプットの形は商品開発であったりイベント企画であったり宿泊施設であったり体験施設であったり様々ですが、その根底にあるのは編集作業なのだろうなと。そこで抑えるべきポイントは、地域の独自性を的確に見出せているかという点と、ターゲットに合わせて興味をもってもらえるように編集できているかという点です。特に後者が難しいのですが、僕達ローカル民が「自分達の住んでる所のこんな点が凄いのですよ!」と訴えた所で、外部の方はあまり興味をもってもらえないことが往々にしてありますよね。地獄文化みたいな分かりにくいものは尚更です。そもそも旅行は生活する上で必ずしも必要なものではないので、地域の価値を自分ゴト化してもらえるハードルは少し高い。だからこそ、その人達が“興味を持てる何か”に置き換えて伝えてあげることが大切で、それが編集作業だと思っています。

 以前、研修として佐賀県嬉野市を訪ねたことがあり、そこでユニークな地域の価値を的確に編集されている2人の方に会いました。和多屋別荘 代表の小原嘉元さんと旅館大村屋 代表の北川健太さんです。お二人のご活躍については、北川さんのnote記事でとても分かりやすく整理されております。

共通して仰っていたことは、地域には“普遍的な価値”があるということです。普遍的とは上手く表現したもので、その地域が100年、1000年と長い年月をかけて築いていたものは、もはやアイデンティティと言える程に昇華されている訳です。もうその価値とは一蓮托生だと。嬉野の場合は、お茶・陶器・お宿の3つで、これらを掛け算する中で新しい価値を提供しているのですね。

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しかもこのお二人、コアな部分は共有しつつ、アウトプットの方向性における趣向がそれぞれ異なり、ユニークでとても素敵です。これだけスピード感もって仕掛けられると、短いスパンでリピートしたくなりますね。

そして、別府での“普遍的な価値”の1つは地獄文化だと思っておりますので、それをどのように編集してアウトプットしていくかが僕の勝負になります。

極楽浄土的「地獄」のパーティー

以前、海地獄を貸し切ってパーティーイベントを実施したことがありました。ホテルニューツルタの鶴田さんとthe HELL Record & Sourの深川さんにプロデュース頂き、実現することができました。別府の美味しいフードとドリンク、お洒落なミュージックをお供に、ライトアップした海地獄という非日常空間で、新しい社交場を演出しました。

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海地獄で音楽イベントをすること自体が非日常だし、結構愉快な人達も参加してくれたので、主催者側である僕も仕事を忘れてとっても楽しめました(笑)。新しい社交の形ができたねと喜んだものですが、僕はこのイベントを評価する点が2つあると思っています。

1点目はこのイベントが、“地獄でパーティーができたこと“すなわち”パーティーのできる地獄“という発信となったことです。“美しい庭園に地獄がある”というコアな価値を、“パーティーのできる地獄”という音楽やお酒が好きな人達に刺さる形で編集したのですね。地獄で踊ってきたよ、なんてコメント付きの画像がインスタに投稿されたらきっと拡散されますよね(笑)。

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2点目は地獄の噴気の周りに人が集いコミュニティとなる、という鉄輪の伝統的な文化を表現できたことです。メインステージを湯けむりが上がる海地獄の湯だまり付近としたことで、俯瞰でみると噴気の周りに人が集っているように映るのですよね。しかも非日常空間では初見の人でも気軽に乾杯できてしまうので、僕も結構色々な方と知り合いになれました(笑)。まさしく、鉄輪の地獄蒸し釜に旅人や地元民が分け隔てなく食事を蒸しに集い、結果としてコミュニティが形成されていくという古き良き鉄輪の文化を、現代版に編集できたのではないかなと思っています。

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このイベントは本当に楽しかったので結果として“楽しい”だけの感想でも十分なのですが、一人でも多くの方が「地獄でパーティーって凄くない」とか「湯けむりってずっと眺めていられるよね」といった地域のユニークな価値に気付き、それを誰かに共有したいと思ってくれたら、仕掛けた側としてはこの上ない嬉しさがある訳です。今回はイベントという形でアウトプットをしましたが、海地獄という施設自体もコアな価値を共感しやすくなるように、様々な編集を今後も続けていきたいと計画しております。

長文をお読み頂き、有難うございました。

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