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創業104年、29歳のアトツギがはじめた地獄の新しい届け方

海地獄にアトツギとしてUターンして早くも7年ほどが経過しました。今振り返ると、当初はアトツギとしての自分の立ち位置を必死に模索していたように思います。

100年以上続く施設なので成熟している部分があるし、長期間従事して頂いている職員も多くいる。そのような中でぽっと出の若造が信頼を得るのってとても難しいなと考えていました。アトツギの方によくある最初の障壁ではないでしょうか。

僕が目論んだのは、施設として未だかつてやったことないことを実行すること、そして内外に評価してもらうような結果を残すこと。なんやかんやで行動と結果が全てだろうなと思い、覚悟もありました。この時に試行錯誤したことが、今になって活かされていると思っています。せっかくの機会なのでいくつかの取り組みを本記事で紹介していきます。

海地獄史上初の夜間営業

2014年11月、Uターンして取り組んだ最初の企画が海地獄の夜間イベントでした。海地獄は、地獄組合の決まりで17時までしか営業できません。そこで、夜にお客様にお越しいただけるような企画を考えました。

「鉄輪エリアに夜のアクティビティを」と意気込んでのぞんだ企画ですが、目玉は海地獄の湯けむりに映像を投影してみたことです。LEDによるライトアップやマッピングは様々なイベントで見られても、湯けむりプロジェクション的なものは恐らく日本初だっただろうなと思っています。というか、映像を投影できるほどの大きな湯けむりを設えたスペースがあまり無いですよね(笑)。まさに海地獄の特徴を活かした試みでした。

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環境がうまくはまると天然の3D体験を提供することができて、海地獄でしか見ることができない景色という点で地域の独自性をアピールすることができました。

地獄が舞台のアニメとコラボ

2015年2月には『鬼灯の冷徹』という地獄の住人たちが登場人物の漫画とコラボをする機会を頂きました。漫画における地獄の舞台が計8か所、そして当時の地獄めぐりも計8か所ということで、地獄めぐり全体を活かした企画ができないかと模索した結果、回遊を促す施策としてはベタですがスタンプラリーを実施することにしたのです。

鬼灯台紙


とはいえ、ただスタンプを集めるだけでは味気ないなと考え、地獄めぐり8か所のそれぞれに、その場所に適したオリジナルなセリフを発する1コマを作成頂いてスタンプとし、最終的に全て集めるとオリジナルなイラストスタンプが入手できるという企画にしました。そのような仕掛けができたのも、僕達が運営している施設も地獄であったがゆえに、同じく地獄を舞台にしたキャラクター達が施設への感想をコメントしても違和感がなかったのです。コンテンツとのコラボとしては、親和性があってお客様にも楽しんで頂けました。

別府地獄の歴史・トリビア展示

海地獄内にあるお土産などを販売するショップを備える建物が、当時築60年以上でかなり老朽化しており、2016年の熊本・大分地震を契機にフルリニューアルの計画が立ち上がりました。基本的にはショップを時代に合わせて進化させることを目的としましたが、僕は兼ねてから海地獄ひいては地獄文化の歴史についてしっかりと発信する場所を施設内に備えるべきという考えをもっていたので、新しい建物内にその機能を実装して欲しいと社内で相談したのです。結果として2階建ての建築となり、別府の地獄文化の歴史やトリビアを整理し分かりやすく展示した“ギャラリー青”を2017年9月に開設することができました。

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千壽家は僕を含めてずぼらな性格な人が多かったのか、残念なことに海地獄の歴史に関する一次資料がほぼ残されておらず、地元の大学である別府大学の教授や院生の皆さんに多大なるご支援を頂きました。調査期間としては約1年を要したかと。(過去資料は1度失ったら2度と再現できない貴重なものなので是非アーカイブしていきたいです。。。)お陰様で、様々な所から貴重な資料が発掘でき、中身の濃い研究成果になったと思っています。それをデザイナーさんに分かりやすく編集して頂き、ギャラリー青に展示することができました。地域の歴史・文化好きな人達にとってはとても好評なコーナーとなっています。だがしかし、課題としては全く興味のない人には素通りされてしまうこと。そのような時にどうやったら興味をもって頂けるか、更なる編集をしなければいけませんね。

“夜の海地獄”がバージョンアップ

2014年に初の夜間営業を実施して以降、少し内容を変えつつ毎年秋ごろを目安に”夜の海地獄”を展開しておりました。当初は湯けむりへのプロジェクションと入場ゲートである長屋門へのマッピングの2本立てとなるショー的な設えをしていたのですが、段々とノウハウがたまってきたこともあり、2018年に満を辞して園内全体を演出しようと、前年よりかなりバージョンアップした“夜の海地獄2018 -湯気の向こうに鬼遊ぶ森-”を企画したのです。

夜海2018全体


“湯気の向こうに鬼遊ぶ森”というサブタイトルを付けたように、ただライトアップをするだけではなく、ウォークスルー的に楽しめるように物語を設定しました。

“夜の海地獄”には湯気の向こう側からのっそりと鬼どもが滑り込んで来れる。鬼に襲われるのか、鬼に浄められて幸せになれるのか。それは、鬼のそばに近寄って闇の中の地獄巡りをする、あなたの心次第なのです。

このような世界観の中で、物語にあった仕掛けや演出をいくつかのスポットで展開しました。

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地獄というユニークな世界観を活かし、ただの映えを狙っただけでなく、鬼という親和性のあるコンテンツを組み込んで非日常に没入できる演出ができたと思っています。結果的にとても大盛況で、口コミも拡散し最終日には大行列ができたほどでした。

アーティストのLIVEを海地獄で

同じく2018年には、アーティストの大森靖子さんを招待して、海地獄のギャラリー青を会場に“超・地獄”というLIVEを実施することができました。

大森ライブ


大森さんは自らを“超歌手”と称するように、世の中にない歌を届けたいと、他のアーティストとは一線を画する創作活動をされています。その世界観が、地獄の非日常さにマッチすると快くLIVEの実施を引き受けてくださいました。200名ほどの定員がすぐ売切になる程の人気は凄いなと驚きつつ、当日も皆さんにかなり楽しんで頂けたのは嬉しかったです。“LIVEができる地獄”というのも別府ならではで、キャッチーですよね。

これからも地獄文化を編集していきたい

振り返ってみると、何かしらの取り組みをする際は“海地獄でやる意義”や“地獄らしさ”といった要素を必ず意識をしておりました。即ち今の僕の視点からすれば“地獄文化を編集する”という作業を無意識的に実施していたのかなと思っています。直近としては2020年10月に海地獄で“The Hell”というナイトパーティーを企画しました。

人々が居住するエリアに地獄が発生したからこそ共存の文化が育まれた、という別府鉄輪の歴史を、“パーティーもできちゃう地獄”という形で編集できたのですね。

これからも、こういった編集作業を継続的に展開していきたいなと思っています。別府、特に鉄輪エリアが普遍的に有する文化が“地獄”であることは間違いない訳で、この文化をいかに多くの方が興味をもてるような形に編集して共感をもって頂けるかがポイントとなるのです。この作業を的確に実施し続ければ、別府の地獄文化は世界中から興味を持って頂けるでしょうし、“BEPPU JIGOKU”が共通言語になることも夢ではないのですよね(笑)。ここまでお読みいただき、有難うございました。モチベーションを上げながらしっかりと頑張っていきたいと思います。

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