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2/10 ニュースなスペイン語 Nebulossa:ネブロサ
小澤征爾が8日、亡くなった。享年88歳。
各国から訃報に際して、追悼コメントが出ているが、スペイン国営放送(RTVE)は、小欄執筆時点では、まだ、特段の記事は組んでいない。
それはさておき…。
まぁ、音楽つながりというにはあまりにも異質だけど、今、マスメディアはこの「ネブロサ(写真)」というふたり組グループ(dúo)への注目が高まっている。
ネブロサは、マリア・バス(María Bas)がボーカル(cantante)、マーク・ダスオサ(Mark Dasuosa)がプロデューサー(productor)兼キーボード(teclista)を担当するドュオ。
ふたりは20年以上連れ添う夫婦(matrimonio)で、23歳と11歳の子供がいる。
ふたりともバレンシア州のアリカンテにあるオンダラ(Ondara)という、人口6600人(2011年調べ)あまりの村の出身。
マリアは56歳、夫のマークは49歳。
ふたりは幼なじみで、「妻は僕のことを小さい頃から面倒見てくれてね。言ってみれば、僕はママさんカンガルーに恋したってとこかな(Ella me cuidaba de pequeño. Vamos, que me lié con mi canguro)」と、マークはマリアが自らのベビーシッター(niñera)であったことを明かしている。
何かの比喩なのか、それとも、小生が何か重大な読み間違いをしてるのか分からないが、まぁ、7歳差なら、あり得ないことでもないか…。
ちなみに、40代後半から50代中盤の歌手といえば、日本なら、坂本冬美、斉藤由貴、草彅剛、華原朋美あたりなので、まぁ、多くの人が知るベテラン組だが、ドュオの結成自体は2018年、20年に初シングルを発表しているので、音楽業界では、まだ、新人。
ネブロサは「Zorra(「メスのキツネ」の意)」という楽曲で、歌謡曲の祭典である「Benidorm Fest 2024」で最優秀アーティストに選ばれ、今年度のユーロビジョン(Eurovisión)のスペイン代表の座を射止めた。
「Zorra」については、7日の小欄でも紹介したように、首相のペドロ・サンチェス(Pedro Sánchez)もお気に入り。
日本で例えるなら、紅白歌合戦でトリをつとめた歌手に対して、岸田文雄総理大臣が、公の場で、「え〜、私は◯◯さんの☓☓が好きでありまして…」とか、談話を出すようなものか――。
しかも、サンチェスの文脈は政治がらみだったので、日本では、まず、考えられない。
zorro・zorraは「キツネ」の意だが、「とても聡明で、腹黒い人物(Persona muy taimada, astuta y solapada)」も意味する。これは、男にも女にも使う。
私はよく「キツネ」って呼ばれてきました。そして、多くの女性は自分がそうだと感じているかもしれません。私はこのことばを何か素敵なものに変えたかったのです。どうして、「zorro(オスのキツネ)」は良くて、「zorra(メスのキツネ)」が悪くなきゃいけないんでしょう。女性がキツネになるってことは女性自身が望んでいることを知ること(Me han llamado muchas veces ‘zorra’, muchas mujeres se han sentido así. Es una manera de transformar esa palabra en algo bonito. ¿Por qué tiene que ser el zorro algo bueno y la zorra algo malo. Ser una zorra es saber lo que uno quiere)。
ボーカルのマリアの弁。
当たり前だけど、少なくとも、辞書の上では、「zorro=善;zorra =悪」とはならないのだが、日本語でも「女狐」は「ミステリアスな雰囲気を醸し出し、挑発的かつ淫らで、魅惑的な女性(wiki)」を指すように、zorraにはzorroにはない別の評価を、ネイティブ(の女性)は感じるのだろう。
写真はネブロッサのマリア(左)とマーク。
ちなみに「Nebulossa」は「星雲(nebulosas)」のもじり。
夫婦でスペインを旅行した時、とある天文台(observatorio astronómico)で頻繁に耳にした単語らしい。
「s」を2つ重ねるのは、ふたりの母語でもあるバレンシア語への目配せ(guiño)だという。
しかし、実は、バレンシア語でも、スペイン語同様「s」はひとつで綴るというから、ん〜、非ネイティブには分かりにくい目配せだが、まぁ、スペイン語とは違うナニモノという意識か。
※読者の川上さんの指摘を受け、一部、加筆訂正しました(2/14)。