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3/13 ニュースなスペイン語 Se tambalea la moción:揺らぐ不信任決議案

ここ数日、スペインを揺るがし続けている政治的な激震(el terremoto político)についての続報である。

12日の新聞各紙(web版)には、タイトルのような見出しが並んだ。早くも、ネットには「ムルシアでの失策(el fracaso en Murcia)」という文字も出始めた。

というのも、ムルシア州(Murcia)での不信任決議(la moción de censura)を画策した市民党の党首イネス・アリマーダス(Inés Arrimadas)にとって、予想を超えた事態が頻発してしまったからだ。

ひとつは、ムルシア州での動乱がマドリード州(Madrid)やカスティージャ・イ・レオン州(Catilla y León)といった、国民党(PP)との連立を組んでいる他の自治州に飛び火してしまったこと。中でもマドリードは痛手だったようで、アリマーダスは記者会見で次のように語った:「もし我々がマドリードで不信任決議案を提出する予定だったなら、ムルシアと同時に出していた。しかし、それをやらなかったのは、我々がそれを望んでいなかったからで、党倫理の観点から、良いことだとは思わなかったから(Si hubiésemos querido hacer una moción de censura en Madrid, la hubiéramos hecho y a la vez que en Murcia, pero no la hemos hecho porque no hemos querido, por ética y porque no es bueno hacerlo)」

次の想定外は、マドリード州知事イサベル・ディアス・アジューソ(Isabel Díaz Ayuso)が総選挙を宣言したこと。市民党の連立のパートナーとして唯一、不信感を抱いていた相手がアジューソだけあって、手厳しい。アリマーダ、曰く:「アジューソはいつもきっかけを狙っていて、州知事就任当初から、選挙をやりたくてしょうがなかった(Necesitaba una excusa, llevaba queriendo adelantar las elecciones desde el principio de la legislatura)」

最後の、しかも、恐らく最大の想定外が、ムルシア州で市民党から造反者(disidente)が3名も出てしまったこと。このことで、来週投票が行われる不信任決議案が否決される公算も出てきてしまった。

新州知事に最も近い(とつい数日前まで考えられていた)同党のアナ・マルティネス・ビダル(Ana Martínez Vidal)は現在、ムルシア州の地方調整指揮官(cooridinadora regional)という、同州市民党の事実上のトップを務めているわけだが、そのビダルが、造反者3名の離党処分(expulsión)を発表した。記者会見でビダルは彼らが「自分たちの意思をオークションにかけたことを私たちも有権者も恥ずかしく思う(Nuestros afiliados y votantes sienten vergüenza ante esta subasta de voluntades)」と述べた。しかし、捨てる神あれば拾う神あり。現州知事のフェルナンド・ロペス・ミラス(Fernando López Miras)は3名の造反者を国民党員として迎え入れると12日発表した。

そもそも、市民党はなぜ、ムルシア州で不信任決議案を提出することになったのか。実は、同州にはワクチン接種をめぐり「バクナゲート(vacunagate)」という疑惑が渦巻いている。バクナゲートについては、稿を改めるが、もはや市民党はこの疑惑に目をつぶり、「共犯者(cómplice)」にはなれない、というのが不信任決議案提出の大儀だ。だから、他の自治州に動乱が及ぶことは何より、心外だったはずだ。

しかし、もはや、党のほころびはつくろいきれない。アンダルシア州副知事フアン・マリン(Juan Marín )やカスティージャ・イ・レオン州副知事フランシスコ・イヘア(Francisco Igea)などの市民党の議員たちの立ち位置がだんだんと微妙になっていて、特に、イヘアとアリマーダスとの対立が「公然かつ明らか(públicas y notorias)」になっているという。

当分、混乱は収まらない。

写真はVozpopuli紙(3.11)より。政治混乱の真っ只中のイネス・アリマーダ。