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4/10 ニュースなスペイン語 Valla virtual:バーチャルフェンス

初めて目にした単語だが、どうやら、ある種の業種では、かなり浸透しているみたい。

ある業種とは?

それは放牧業(pastoreo)である。

日本では2008年に発信された記事の中に「仮想の柵(virtual fencing)」という表現がすでに出てきていて、以降、海外の取り組みとして、いろいろな媒体で紹介されているみたい。

放牧業は、昼夜問わず(sin horarios)、容赦なく迫り来る時間に追われ(expuestos a las inclemencias del tiempo) 、自由な時間も、休みもない(sin días libres o festivos)。

そのため、ここ10年間でスペインの牧畜家の数は半減し(En los últimos diez años el número de pastores se ha reducido a la mitad)、今や、その数はわずか8万人程度と推計されていて(Ya solo quedan unos 80.000 aproximadamente)、減少の一途をたどっている(el número sigue bajando)。

そんな絶滅寸前の職種(un oficio en peligro de extinción)に人工知能(IA)を取り入れて、果敢に革命を起こす女性のストーリーが今日の記事の主旨。

女性はクララ・ベニート(Clara Benito(写真))という。

マドリード生まれのマドリード育ちのベニートは州北部の山岳地帯(Sierra de Madrid)に移り住んで、AI牧畜を目指すことになった。

ベニートは欧州委員会(Comisión Europea)から昨年、EU圏内で最もエコな取り組みをした優秀な畜産家(la mejor granjera ecológica de la Unión Europea)として表彰(premió)された実力の持ち主(正確には「農業家(agricultora)」というカテゴリーみたいだけど)。

持続可能で、大規模かつオーガニックな畜産(carácter sostenible de su proyecto de ganadería extensiva orgánica)をヤギの放牧(pastoreo salvaje de cabras)で実践したというのが受賞理由。

ベニートが主宰するサークル「オオカミに囲まれて(Entrelobas)」がオオカミとの共存(convivencia con lobos)を掲げているところに、何か、彼女の覚悟のようなものを感じる。

それはさておき。

ベニートは放牧大国ノルウェー(Noruega)が開発した「ノーフェンス(Nofence)」という装置をいち早く(pionera)スペインに導入した。

この装置は、家畜の首から下げる(dispositivo que se cuelga al cuello)ことで、まず、人工知能などを駆使し、動物たちの位置情報を把握する(tenerlas localizadas)。

しかも、バーチャルフェンスという目には見えない柵をあらかじめ設定しておくことで、家畜がそこに近づくたびに、音刺激を与え、そこから遠ざける(Cada vez que una cabra se acerca al límite que ella ha dibujado, el animal recibe un estímulo sonoro que la hace retroceder)機能もついている優れもの。

スペインでは、ベニートの試みとは別に、人工知能によって、家畜の行動パタンを予測し、いつエサを食べているか(cuando está comiendo)はもちろん、いつ出産するか(cuando van a parir)とか、繁殖期が来たかどうか(si hay celos)、健康上の問題がないかどうか(incluso problemas de salud)などの、これまで予測ができなかった複雑な行動(conducta más complejos)を管理する。

これは100%スペイン資本(una empresa 100% española )の「ディヒータ・アニマル(Digita Animal)」という企業が提供するサービスで、世界80ヶ国以上で導入されているらしい。

これからの放牧家は、従って、朝起きたら、牧場に行く必要はなくなる。

その代わりに、まず、スマホかタブレットを開いて、コーヒーをすすりながら、家畜たちの動きをチェックーー。

そして、今日の記事のタイトルのように、「あなたの自宅のソファーから家畜の群れをコントロールする(Controlando al rebaño desde el sofá de tu casa)」ことが実現する。

これまでの形態とはずいぶん様変わりしそうだ。

いやはや、それにしても、ネットのトラブルがあったら、恐ろしい程のカオスが待ち受けている。

写真はクララ・ベニート。

ちなみに、ベニート(Benito)は男子の洗礼名(nombre de pila)としても用いられる。

3月17日で紹介したように、スペイン語圏には「父称(patronímico)」というシステムがあり、男子の名前に何らかの細工をして苗字を作り出すことがある(「-zを付ける」:Gonzalo→González)。

Benitoは、その点、何の細工もせず、そのまま、男子名にも苗字にも使える。

出典
https://www.rtve.es/television/20240405/inteligencia-artificial-pastores/16044478.shtml