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1/7 ニュースなスペイン語 Baltasar:バルタザール

バルタザール(スペイン語読みでは「バルタサール」)は「東方の三博士(Reyes Magos(de Oriente))」のひとり。

東方の三博士については、小欄でも何回か取り上げているが(2023年1月3日など)、簡潔に言うと、イエス・キリストが誕生した時、贈り物を手に、生誕の地ベツレヘムに向かった3人の占星学者(astrólogo)のこと。

カトリックでは、バルタサール、メルキオール(スペイン語表記では「Merchor」:スペイン語読みでは「メルチョール」)、カスパール(同「Gaspar」:同「ガスパール」)の3人を指す。

3人はキリストに「金(oro)」、「乳香(incienso)」、「没薬(mirra)」を贈り届け、バルタサールはその内、没薬を贈ったとされている。

スペインではサンタクロースの代わりに、三博士が子供たちにプレゼントを持って来るとされ、1月6日の前後、各地で三博士のパレード(Cabalgata de Reyes Magos)が催される(写真)。

さて、今年は、三博士をめぐり「嘆かわしい間違い(un lamentable error)」があったとし、マドリード市のチャマルティン(Chamartín)地区から抗議の声が上がった。

コトの発端は、チャマルティン地区がジェイジェバ社(Yeiyeba)に発注した、クリスマス用の動画での演出。

まずは問題となったビデオを見てみよう。

https://youtu.be/d0RxgZYvNtU?feature=shared

アフリカ王であるバルタサールに扮しているのが、顔を黒塗り(pintado de negro;black face)にした人物(多分、元々の肌は「白い」人)。

そして、この人物は、アフリカ出身の人に特有の話し方(un acento peculiar)で、決して上手いとは言えないスペイン語(un mal castellano)を話している。

こうしたステレオタイプな演出に対して、マドリード市の副市長(vicealcaldesa)が不快感を示したのである。

副市長は

現在、我々はこのビデオを作成した業者と話し合い、なぜこのような演出になったのかの経緯と説明を求めている(Estamos hablando con ellos para saber qué ha pasado y pedirles explicaciones)

と述べ、ジェイジェバ社に連絡を入れたと明らかにした。

同社は、即日、一連の演出に対して、全責任を負い(asumimos toda la responsabilidad)、謝罪する(pedimos disculpas)と声明を出した。

そして、

これ程までの問題を引き起こすとは考えないで企画を決めてしまった。計画的な意図は一切なかった(Esta decisión se tomó sin pensar que causaría ningún problema, puesto que no había ninguna intención premeditada)

と弁明し、演出に悪意はなかったとした。

例年契約している役者が確保できなかった(no tenían disponibilidad)などの事情があったみたいで、人種差別(racismo)や誰かをバカにする意図はなかった(No se ha querido ridiculizar)という。

日本では、さすがに、今は、顔を黒塗りにするような演出はない(昔はたくさんあったけどね…)。

でも、ある国の出身者が特有の話し方で日本語を話す様をねつ造することは、まだ、ある(例えば、「〜アルヨ」とか「ワータシノクニデワー」的な話し方とカタカナ表記(まぁ、これも古いネタだけどね…))。

人種差別は良くないし、スペイン語が話せない人たちを小ばかにすることはやめるに越したことはない。

だから、マドリード副市長の抗議は当然だし、こんな動画を作成した会社の謝罪も当たり前。

だけど、この種の悪ふざけに、本気で目くじらを立てるのは窮屈だなぁ、とも思う(のが老害だという自覚は、もちろん、あります)。

写真はコルドバのパレード。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20240105/ayuntamiento-madrid-video-baltasar-error/2470528.shtml